01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Buchanan, D. A., & Huczynski, A. A. (2023). Organizational Behaviour (11th ed.). Pearson.
章の要約
第11版は2023年11月にPearsonから刊行され(著作権表示は2024年)、5部22章と用語集からなる。その配列には特徴がある。まず組織の文脈(環境、テクノロジー、文化)から始め、次に個人、集団、仕事と組織の設計へと進み、最後にリーダーシップと、組織が変化し意思決定を行う過程で終わる。Pearsonは本書を、組織が人々の見方や行動にどのような影響を与えるか、組織の中の人々の行動をどう説明できるかについて批判的な理解を養うための本として紹介している。また第11版は、読者に研究結果を予測させ、前提を疑い、別の選択肢を考えさせ、ポッドキャストや動画を活用させるものだという。
第1〜4章:Explaining organizational behaviour(組織行動を説明する);Environment(環境);Technology(テクノロジー);Culture(文化)(第1部:組織の文脈)
最初の章は、組織行動とは何か、それをどのように説明できるかを問う。続く3章は、行動をその環境の中に位置づける。すなわち組織の外部環境、人々が用いるテクノロジー、そして組織文化である。ここから始めることで、本書が行動を個人の特性だけでなく文脈によって形づくられるものとして扱うことが示される。
第5〜9章:Learning(学習);Personality(パーソナリティ);Communication(コミュニケーション);Perception(知覚);Motivation(モチベーション)(第2部:組織の中の個人)
第2部は職場における個人の心理学を扱う。人々がどのように学ぶか、パーソナリティをどう記述し評価するか、人々がどのようにコミュニケーションをとるか、他者や自分の状況をどう知覚するか、そして何が人々を動機づけるかである。
第10〜13章:Group formation(集団の形成);Group structure(集団の構造);Individuals in group(集団の中の個人);Teamworking(チームワーキング)(第3部:組織の中の集団とチーム)
集団に関する4つの章は、集団がどのように形成され構造化されるかから、集団がその個々のメンバーに与える影響へ、さらに仕事を組織する方法としてのチームワーキングへと進む。
第14〜17章:Work design(職務設計);Elements of structure(構造の要素);Organization design(組織設計);Organizational architecture(組織アーキテクチャ)(第4部:マネジメントと組織)
第4部は組織行動の設計の側面に移る。個々の職務の設計、組織構造の基本要素、組織全体の設計、そして4つのうちもっとも広い組織アーキテクチャである。
第18〜22章:Leadership(リーダーシップ);Change(変革);Decision making(意思決定);Conflict(コンフリクト);Power and politics(権力と政治)(第5部:リーダーシップの過程)
最終部は、リーダーシップと、組織生活を貫く4つの過程、すなわち変革、意思決定、コンフリクト、権力と政治を扱う。権力と政治で締めくくることで、組織が実際にどう動いているかについてもっとも論争的な見方が読者に残される。
主要概念
第1部:組織の文脈
- 組織行動:組織の中で人々がどう行動するか、そして組織がその行動にどう影響するかを研究する分野。
- 環境とテクノロジー:行動に影響を与えるものとしての外部条件と仕事の道具。
- 組織文化:ある組織を特徴づける共有された前提や慣行。
第2部:組織の中の個人
- 学習とパーソナリティ:人々が新しい行動をどう身につけるか、安定した個人差をどう記述するか。
- 知覚:人々が他者や状況についての情報をどう選び、解釈するか。
- モチベーション:仕事における努力を方向づけ、持続させる力。
第3部:集団とチーム
- 集団の形成と構造:集団がどのように生まれ、役割や関係を発達させるか。
- チームワーキング:個人ではなくチームを単位として仕事を組織すること。
第4部:マネジメントと組織
- 職務設計:タスクをどのように組み合わせて職務とするか。
- 組織構造と組織設計:組織を形づくる要素(分業や階層など)と、設計の選択肢。
第5部:リーダーシップの過程
- リーダーシップ:目標に向けて他者に影響を与えること。
- 組織変革と意思決定:組織が自らをどう変え、選択肢の中からどう選ぶか。
- コンフリクト、権力、政治:組織内で競合する利害と、人々がそれを追求する手段。
批判的分析
長所
- 文脈から始める。 多くの入門書は個人から始める。環境、テクノロジー、文化を第1部に置くことで、個人の心理や集団の行動が周囲の状況によって形づくられるという枠組みが示される。これは、組織を心理学的にだけでなく社会学的にも捉えようとする授業に合っている。
- 批判的な姿勢。 出版社の説明は批判的理解の養成を中心に据えており、第11版の、研究結果を予測させ前提を疑わせる問いかけは、知見を暗記するのではなく証拠を検討するよう読者を促す。
- 幅広さ。 22章で個人、集団、組織、政治のレベルを扱い、短い教科書ではあまり紙幅が割かれないテクノロジー、組織アーキテクチャ、権力と政治といったトピックも含む。用語集は、語彙に不慣れな読者を助ける。
- マルチメディアと研究への関与。 出版社によれば、この版は内容をポッドキャストや動画と結びつけている。
短所
- 分量。 22章は1学期の科目で深く扱える量を超えており、授業では取捨選択が必要になる。
- 概説としての深さ。 幅広い教科書であるため、各理論は1章の一部を与えられるにとどまる。モチベーションやリーダーシップの理論について、その展開と証拠を詳しく知りたい学生には専門的なレビューが必要になる。
- 版ごとの主張は確認しにくい。 Pearsonが公開している第11版の説明は短く、この版が扱う特定の現代的トピック(たとえばハイブリッドワーク)に関する主張は出版社のページからは確認できなかった。本そのもので確かめるべきである。
コースにおける位置づけ
このコースの一般的な教科書のうち、RobbinsとJudgeの Organizational Behavior はアメリカの標準的な入門書で、パーソナリティや知覚といった個人のトピックから集団、組織システムへと進み、自己診断の仕掛けや研究の平易なまとめを備えている。BuchananとHuczynskiも似たトピックを扱うが、組織の文脈から始め、より問いかける姿勢をとるので、学生に証拠と議論させたい授業に向いている。MullinsとReesの Management and Organisational Behaviour はもっとも近いイギリスの代替書で、組織行動をマネジメントの実践により直接結びつけ、個人のスキルやエンプロイアビリティに関する節を加えている。
Mary Jo Hatchの Organizations: A Very Short Introduction は、研究者が組織をどう研究し、なぜ意見が分かれるのかを短く概観する本で、第1部の前に読むと役立つ。本書の後でより深く学ぶには、Minerの Organizational Behavior 1 がモチベーションとリーダーシップの主要理論を一つずつ評価しており、第9章と第18章の続きとなる。またMarchとSimonの Organizations は、限定合理性のもとでの意思決定に関する1958年の基礎的著作で、第20章の理論的背景を与える。
本書の使い方
本書は、組織行動を初めて学ぶ人も含め、経営学・マネジメントの学部生に適している。心理学や社会学に多少なじみがあると役立つかもしれないが、必須ではない。
- 第1部から始める。 第1章はこの分野の研究方法を示し、第2〜4章は本書の残りの部分が立ち返る文脈を提供する。短い授業では、第1章と文化の章が最低限である。
- 中核となる部分: 個人と集団に焦点を当てる授業では第2部(とくに知覚とモチベーション)と第3部。組織設計と変革の授業では第4部と第5部。
- 選択的に読む: 最初から通読するのではなく、授業の重点に合わせて選ぶ。人材マネジメントの科目なら第1、4、5〜9、13、18章、組織論の科目なら第1〜4、14〜17、19〜22章といった組み合わせが考えられる。
予測の問いかけは意図どおりに使うとよい。研究が何を見いだしたかを読む前に予想される結果を書き留め、それから比べる。部ごとに用語集の用語のリストを作り、ある章が競合する理論を示しているときには、それぞれの背後にある前提を言葉にする練習をする。リーダーシップと権力の章は、ニュースの最新の事例と組み合わせ、枠組みを実在の組織で試してみるとよい。
