01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hunt, S. D. (2010). Marketing Theory: Foundations, Controversy, Strategy, and Resource-advantage Theory. Routledge.
章の要約
本書は4部15章からなり、序文、参考文献、人名索引と事項索引が付く。出版社によれば、同じ著者の以前の著作を徹底的に改訂・更新したものである。マーケティング科学における理論、法則的一般化、説明を発展させ分析するための科学哲学の「道具箱」を提供し、資源優位(resource-advantage、R-A)理論が、マーケティングの一般理論と、企業戦略およびマーケティング戦略の理論的基礎になると論じる。分野内の「哲学論争」を扱う4つの章は、著者の『Controversy in Marketing Theory』から改編・更新されたものである。
第1部、第1–2章:序論/マーケティング学問について
最初の部では、マーケティングと科学の性質、そしてマーケティングという学問分野の意味を示す。出版社は、著者がこの分野の複数のステークホルダーに注目していると述べている。
第2部、第3–8章:マーケティング理論の基礎
「形態論(morphology)」の章と「論点と側面」の章を一組とする3組の章。説明(第3・4章:説明の形態論/説明:論点と側面)、科学法則(第5・6章:科学法則の形態論/科学法則:論点と側面)、理論(第7・8章:理論の形態論/理論:論点と側面)である。マーケティングで何が説明、法則、理論と言えるのかを判断するための道具箱にあたる。
第3部、第9–12章:マーケティング理論をめぐる論争
『Controversy in Marketing Theory』から改編された4つの章で、それぞれがマーケティング研究との関連で一つの論争を取り上げる。科学的実在論(第9章:科学的実在論とマーケティング研究について)、科学/非科学と質的方法(第10章:科学/非科学、質的方法、マーケティング研究について)、真理(第11章:真理とマーケティング研究について)、客観性(第12章:客観性とマーケティング研究について)である。
第4部、第13–15章:マーケティングの一般理論に向けて
建設的な部分。第13章「R-A 理論の研究プログラム」は、資源優位理論を研究プログラムとして提示する。第14章「競争理論、Alderson の市場過程理論、R-A 理論」は、R-A 理論を競争理論および Wroe Alderson の市場過程理論と比較する。第15章「戦略と R-A 理論」は、この理論を企業戦略とマーケティング戦略に関連づける。
主要概念
第1–2部:基礎
- 学問分野としてのマーケティング:複数のステークホルダーをもつ。
- 説明、科学法則、理論:本書がその構造(「形態」)と論点を順に分析する3つの範疇。
第3部:論争
- 科学的実在論:本書がマーケティング研究との関連で検討する哲学的立場。
- 科学と非科学、質的方法。
- 真理と客観性:マーケティング研究にとっての問い。
第4部:一般理論
- 資源優位理論:著者がマーケティングと戦略の基礎として提案する競争理論。
- 競争理論と Alderson の市場過程理論:R-A 理論と対比されるほかの理論。
批判的分析
長所
- 道具から理論へという意図的な順序。 第1〜3部が道具と議論を整え、第4部がそれらを用いて理論を提示する。読者は、R-A 理論が前の部で良い理論の基準として示されたものにどう応えようとしているかを見ることができる。
- 説明、法則、理論の体系的な扱い。 それぞれに2章が充てられ、一方が構造、他方が論点を扱う。
- 哲学論争への取り組み。 出版社は科学的実在論、質的方法、真理、客観性の各章を強調しており、結論だけでなくマーケティング内部の方法論的な論証を知りたい読者に向く。
- 戦略とのつながり。 最終章が抽象的な理論を企業戦略とマーケティング戦略に結びつける。
短所
- 実務の教科書ではない。 目次にはセグメンテーション、価格、ブランド、マーケティング・プランの章がない。マーケティング・マネジメントの道具を求める読者は別の本が必要である。
- 一人の著者のプログラムへの依存。 第4部は著者自身の資源優位理論を展開し、第3部は長く続く論争における彼の立場を示す。読者はこれらを文献中の他の立場と比べるべきである。
- 哲学的な要求水準。 論考の語り口であり、科学哲学の語彙(実在論、真理、客観性)は、持続的な議論を追う意欲のある読者を想定している。
コースにおける位置づけ
Hunt の本は、マーケティングの書目における理論の本であり、実践寄りの本のあとに置くのがよい。Kotler と Armstrong の『Principles of Marketing』、OpenStax の教科書、Jobber と Ellis-Chadwick の『Principles and Practice of Marketing』が主題を紹介し、Kotler と Keller の『Marketing Management』と Ferrell、Hartline、Hochstein の『Marketing Strategy』が枠組みとプランを発展させる。Hunt が問うのは、そうした枠組みがどのような種類の知識を表しているのか、マーケティングの理論はどう評価されるべきかである。
マーケティング・マネジメントや戦略の科目を終え、学位論文を書く前や学術文献を読む前などに、学問の基礎を理解したくなった読者に最も役立つ。第15章は、競争理論が戦略とどう関わるかを見るために、戦略の教科書と並べて読める。
本書の使い方
マーケティングや戦略を専攻する博士課程・修士課程上級の学生と研究者に向く。
- 中核: 道具箱である第2部、そして理論そのものである第13–15章。
- 論争: 第9–12章はひとまとまりとして、あるいは特定の問いが関わるとき個別に読める(質的方法を用いる人は第10章など)。
- 順序: まず第1–2章を読む。そのあと順に進んでもよいし、第2部から第4部へ飛び、あとで第3部に戻ってもよい。
- 併用: マーケティング戦略の教科書と組み合わせ、参考文献をたどって学術誌上の論争を追う。
