01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Veronesi, P. (2010). Fixed Income Securities: Valuation, Risk, and Risk Management. John Wiley & Sons.
章の要約
本書は22章(参考文献を除き約790ページ)で、三部からなる。基礎(第1~8章)、期間構造モデル:ツリー(第9~13章)、期間構造モデル:連続時間(第14~22章)である。多くの章末には要約と演習問題があり、実際の出来事に基づくケーススタディが付く章も多い。2009年に執筆した著者は、本書を商品の目録ではなく方法論と位置づけ、無裁定と一物一価の法則を軸に構成している。
第1~2章:固定利付証券市場への導入、固定利付証券の基礎
第1章は国債、短期金融、レポ、モーゲージ担保証券、デリバティブの各市場を概観し、無裁定と一物一価の法則を導入する。第2章は基本的な構成要素を与える。割引係数、金利と複利、期間構造、利付債と変動利付債、利付債価格から割引係数を取り出す方法(ブートストラップ、回帰、スプライン)である。章末のケーススタディはオレンジ郡が保有した逆フローターを分解する。
第3~4章:金利リスク管理の基礎、金利リスク管理の基本的な精緻化
第3章はデュレーション、バリュー・アット・リスクと期待ショートフォール、免疫化、資産負債管理を扱い、1994年のオレンジ郡の破綻を振り返る。第4章はコンベクシティ、傾きと曲率、ファクター・モデルとファクター中立のヘッジを加え、付録で主成分分析を述べ、再びオレンジ郡のポートフォリオに戻る。
第5~6章:金利デリバティブ:フォワードとスワップ、金利デリバティブ:先物とオプション
第5章はフォワード・レート、金利先渡契約、先渡契約、スワップを評価し、スワップ・スプレッド取引のケーススタディを置く。第6章は先物(証拠金、収束、先物と先渡の違い)とオプションを扱い、オプションを保険契約として提示し、戦略とプット・コール・パリティを述べる。
第7~8章:インフレ、金融政策、フェデラル・ファンド金利、住宅ローン担保証券の基礎
第7章は連邦準備制度とその手段、フェデラル・ファンド金利の予測(先物からのものを含む)、期間構造が平均的に右上がりである理由と期待仮説、物価連動国債を扱い、2007~2008年の金融政策のケースで終わる。第8章は証券化、期限前償還、パススルー証券とTBA市場、仕組みローン担保証券(CMO)とストリップを扱い、ヘッジのケーススタディが付く。
第9~10章:1ステップ二項ツリー、多ステップ二項ツリー
第II部は1ステップのツリーから始まり、複製、リスク・プレミアム、リスク中立価格付けを扱う。第10章は分析を多ステップのツリーに広げ、動的複製、期間構造への適合、スポット・レート・デュレーションを扱う。
第11~13章:リスク中立ツリーとデリバティブの価格付け、アメリカン・オプション、ツリー上のモンテカルロ・シミュレーション
第11章はHo–LeeツリーとBlack–Derman–Toyの簡易ツリーを構築し、キャップ、フロア、スワップ、スワプションを価格付けし、インプライド・ボラティリティと先物のツリーを導入する。第12章はコーラブル債、アメリカン・スワプション、モーゲージ担保証券を価格付けし、負のコンベクシティを示す。第13章は経路依存型商品のためにツリー上でモンテカルロを用い、Banc Oneの事例と期限前償還モデルを含む。
第14~16章:連続時間の金利モデル、無裁定と金利証券の価格付け、動的ヘッジと相対価値取引
第III部はブラウン運動、微分方程式、伊藤の補題から始まり、ツリーで培った直観を使って導入される。第15章は基本価格付け方程式を導き、VasicekモデルとCox–Ingersoll–Rossモデルに適用し、パラメータ推定とオプションの価格付けを含む。第16章はリバランス、相対価値取引、セータ=ガンマ関係を扱う。
第17~18章:リスク中立価格付けとモンテカルロ・シミュレーション、金利証券のリスクとリターン
第17章はファインマン=カッツの定理とモンテカルロによる価格付け・ヘッジを示し、Procter & GambleとBankers Trustのレバレッジド・スワップをケースとする。第18章はリスクの市場価格、リスク中立と実世界のシミュレーション、期間構造のマクロ経済モデルを扱う。
第19~22章:無裁定モデルと標準的デリバティブ、市場モデルとオプションのボラティリティ動学、フォワード・リスク中立価格付けとLIBOR市場モデル、多ファクター・モデル
第19章はHo–LeeとHull–Whiteのモデル、および「正規」「対数正規」モデルでのキャップ、フロア、スワプションを扱う。第20章はキャップ、フロア、スワプションのブラック公式と、フラット・ボラティリティとフォワード・ボラティリティを扱う。序文によれば、この章は第11章の後に独立して読める。第21章はニュメレール変更、LIBOR市場モデル、HJMの枠組みを導入する。第22章はモデルを複数ファクターに拡張し、アフィンおよび二次の期間構造モデルを含む。
主要概念
第I部:基礎(第1~8章)
- 無裁定と一物一価の法則:各市場を結びつける原理。
- 割引係数と期間構造:基本的な価格付けの対象。
- デュレーション、コンベクシティ、ファクター中立:リスク指標とヘッジ。
- バリュー・アット・リスクと期待ショートフォール:第3章のリスク指標。
- 期限前償還と負のコンベクシティ:モーゲージ担保証券の特徴。
第II部:ツリー(第9~13章)
- リスク中立価格付けと動的複製。
- Ho–LeeおよびBlack–Derman–Toyのツリー、インプライド・ボラティリティ。
- アメリカン・オプションとコーラブル債、ツリー上のモンテカルロ。
第III部:連続時間(第14~22章)
- 伊藤の補題と基本価格付け方程式。
- VasicekとCIRのモデル、Hull–White、アフィン・モデル。
- リスクの市場価格、フォワード・リスク中立価格付け、LIBOR市場モデルとHJM。
批判的分析
長所
- データに基づく教授法。 序文によれば、例、ケーススタディ、ほとんどの演習が実データを使い、スプレッドシート(第I・II部)とコード(第III部)が提供される。
- 有名な出来事に基づくケーススタディ:オレンジ郡、スワップ・スプレッド取引、Banc One AIRS、Procter & GambleとBankers Trust、2007~2008年の金融政策。
- モデルへの率直な姿勢。 パラメータは推定しなければならず、モデルは「ただのモデル」であり、モデルが違えば同じデリバティブでも価値が異なりうると著者は述べる。
- 段階的な数学。 第I・II部は基礎的な微積分だけで読め、一学期分に相当する。著者は、第III部がより解析的な素養を要し、数学の水準が上がると述べている。
- マクロ金融との結びつき。 連邦準備制度、インフレ、リスク・プレミアムの時間変動の証拠を扱う章が、価格付けと金融政策をつなぐ。
短所
- 分量。 約800ページと長く、第III部だけで一つの独立した講義に相当する。
- 米国中心。 例、制度、市場データは主に米国(国債、連邦準備制度、エージェンシーMBS)のものである。
- 2009年の執筆。 序文は金融危機の最中に書かれており、その後の展開(基準金利や取引相手評価など)は扱っていない。
- 解答は教員専用。 解答集は教員にのみ提供されるため、独習者には模範解答がない。
コースにおける位置づけ
Veronesiは固定利付証券の教科書のなかで最も長い。Tuckman&Serratはより簡潔で道具志向、Sundaresanは制度、入札、市場組織により多くの紙幅を割く。Veronesiの特徴は二項ツリーから連続時間モデルへの進行で、最初の固定利付証券の講義から、Hunt&KennedyのFinancial Derivatives in Theory and PracticeやBingham&KieselのRisk-Neutral Valuationに代表されるデリバティブの数学への橋渡しとなる。Bodie、Kane、MarcusのInvestmentsは債券をより広い概観の一部として扱い、Duffie&SingletonのCredit Riskはデフォルトのモデル化へと続くが、Veronesiにはそれを扱う独立の章はない。
本書の使い方
序文は二つの講義を想定している。入門講義は第I・II部で、基礎的な微積分を知るMBAや学部生向け、上級講義はそこに第III部を加える。
- 中核: 価格付けとリスクのために第2~5章、ツリーのために第9~11章。
- 選択: 金融政策と期間構造のために第7章、モーゲージ担保証券のために第8章と第12章、モンテカルロのために第13章。
- 上級: 連続時間モデルのために第14~15章と第19~21章。第20章は第11章の直後に読める。
- 実践: スプレッドシートを使ってデータ演習を行い、各ケーススタディを一つの作業課題として扱う。
