01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hunt, P. J., & Kennedy, J. E. (2004). Financial Derivatives in Theory and Practice (Revised ed.). John Wiley & Sons.
章の要約
改訂版は二部構成の20章と、三つの短い付録、索引からなる(約440ページ)。第I部「理論」は裁定価格付けの数学を扱い、第II部「実践」は著者がロンドン市場で接した金利デリバティブのモデル化を扱う。著者によれば、記法の相互参照を除き、二つの部は独立に読める。第II部には、そこで価格付けする奇異な商品群を紹介する短い「オリエンテーション」が二箇所ある。改訂版が2000年の初版と異なるのは、解答付き演習問題の最終章が加わったことと、誤りが訂正されたことだけである。
第1章:1期間のオプション価格付け
時間ステップが一つで状態が有限の経済で、複製と裁定を導入する。価格付け、無裁定条件、完備性、価格付けカーネルとニュメレールを含む確率論的定式化、2期間の例を扱う。序文は、この章と第7章が金融理論の主な展開部だと述べている。
第2~6章:ブラウン運動、マルチンゲール、確率積分、ギルサノフ定理とマルチンゲール表現、確率微分方程式
確率解析の背景部分で、独立した入門として読めるようにまとめられている。第2章はブラウン運動を定義し、強マルコフ性と反射原理を扱う。第3章はマルチンゲール、停止時刻、二次変分、局所マルチンゲールと半マルチンゲール、ドゥーブ=メイヤー分解を扱う。第4章は確率積分(L2理論と局所化による拡張)と伊藤の公式を構成する。第5章は同値測度、ギルサノフ定理、マルチンゲール表現定理を扱う。第6章は確率微分方程式を扱い、弱解と強解、リプシッツ係数での存在と一意性、強マルコフ性を論じる。
第7章:連続時間でのオプション価格付け
完全な連続時間理論である。資産価格過程と自己充足的戦略の後、ヨーロピアン・オプションを偏微分方程式の解として、また同値マルチンゲール測度を通じて価格付けし、続いてニュメレール、裁定と許容戦略、完備性と価格付けカーネル、一般的な支払スケジュールや無限期間などの拡張を展開する。序文によれば、ニュメレールの重視や、資産が生成するフィルトレーションの採用はやや標準的でない。
第8章:動的期間構造モデル
第I部の最終章は金利に特化している。割引債だけの経済から出発し、期間構造モデルを定める複数の方法(価格付けカーネルとニュメレールのアプローチ、短期金利モデル、ヒース=ジャロー=モートン・モデル、フレサカー=ヒューストン・モデル)と、それらの数学的関係を示す。
第9~12章:実践でのモデル化、基本的な商品と用語、標準的な市場デリバティブの価格付け、先物契約
第II部は、モデル選択で実務家が直面する問題から始まる。現実世界はマルチンゲール測度ではないこと、商品ベースのモデル化、局所的校正と大域的校正である。第10章と第11章は預金、金利先渡契約、スワップ、ゼロクーポン債を紹介し、キャップ、フロア、バニラおよびデジタル・オプション、スワプションを価格付けする。第12章は先物契約を定義し、離散および連続の再決済の下での先物価格過程を特徴づけ、先物と先渡の関係を述べる。
第13~16章:終端スワップレート・モデル、コンベクシティ補正、インプライド金利価格付けモデル、多通貨終端スワップレート・モデル
ヨーロピアン型商品のまとまりで、前にオリエンテーションが置かれる。著者らは終端時点のスワップレートに基づくモデル化の方法を示し、指数型、幾何型、線形の例と無裁定性を論じる。第14章はこれを定額満期スワップやLIBOR後払いスワップなどコンベクシティに関わる商品に適用する。第15章は市場価格からモデルを導き、不規則なスワプションを扱う。第16章は枠組みを複数通貨に拡張し、スプレッド・オプションと通貨間スワプションを扱う。
第17~19章:短期金利モデル、市場モデル、マルコフ関数モデル
経路依存型とバミューダ型商品のまとまりで、こちらにもオリエンテーションが前置される。第17章は短期金利モデルを紹介し、ヴァシチェク=ハル=ホワイトを中心に、パラメータ推定とバミューダ・スワプションのためのツリー・アルゴリズムを示す。第18章はLIBORおよびスワップ市場モデルを述べる。第19章は著者ら自身の研究であるマルコフ関数モデルを紹介する。これは市場モデルと同様に流動的なオプション価格に適合し、しかも効率的に実装できる。
第20章:演習と解答
約44ページの、解答付き演習問題で、改訂版で追加された。多くはウォーリック大学の数理ファイナンス修士課程で出された問題の変形で、金利計算の基本的な訓練になる。付録は通常条件、L2空間、ガウス型計算を扱う。
主要概念
第I部:理論(第1~8章)
- 複製と裁定:デリバティブの価格を、その支払いを再現するポートフォリオのコストとして定める。裁定が存在しないときにのみ成り立つ。
- 価格付けカーネル、ニュメレール、同値マルチンゲール測度:価格と期待値を結ぶ道具。
- 完備性:すべての請求権が複製できるかどうか。
- 確率積分と伊藤の公式:連続時間の価格付けが依拠する解析。
- ギルサノフ定理とマルチンゲール表現:測度変換とマルチンゲールの表現。
- 期間構造の定め方:短期金利、HJM、フレサカー=ヒューストンの各モデル。
第II部:実践(第9~20章)
- 校正:モデルを市場価格に局所的・大域的に合わせること。
- スワプション、キャップ、フロア:標準的な金利オプション。
- 終端スワップレート・モデルとコンベクシティ補正:ヨーロピアン型およびコンベクシティ関連商品の価格付け。
- ヴァシチェク=ハル=ホワイトと市場モデル:バミューダ型・経路依存型商品のための短期金利およびLIBOR/スワップ・モデル。
- マルコフ関数モデル:流動的な価格に適合し、効率的に実装できるモデル。
批判的分析
長所
- 二つの部を別々に使える。 序文は、記法を除き各部を独立に読めると述べ、確率解析にしっかりした素養のある読者なら第1章と第7章だけで価格付け理論の大部分を学べるとしている。
- 自己完結した確率解析。 第2~6章は金融に関係する結果だけを集めており、独立した読みやすい入門として読まれることを意図している。
- 実務家の視点。 著者らは第II部がロンドンの金利デリバティブ市場での商品開発の経験を反映していると述べ、基本的な商品からバミューダ型商品へと複雑さを増しながら進む。
- 解答付きの演習。 追加された第20章により、本書は講義の教科書として使える。多くの演習はウォーリック大学修士課程の学生に出された問題の変形である。
短所
- 金利への集中。 第II部は金利デリバティブに限られ、第I部は連続的な資産価格過程のみを扱う。著者自身が省いたものとして、ジャンプ、均衡理論、最適制御(アメリカン・オプション価格付けの背後にある理論)を挙げている。
- モデル化の内容が古い。 改訂版の序文は、初版以降に市場モデルとマルコフ関数モデルがさらに発展したこと、改訂版がそれらを扱っていないことを認め、Rebonato(2002)とBennett&Kennedy(2004)を参照するよう述べている。
- 数学的要求が高い。 第3~6章は技術的で(L2マルチンゲール、局所化、存在と一意性の証明)、数学的訓練を受けた読者向けに書かれている。
コースにおける位置づけ
数学としてのデリバティブ価格付けと金利モデル化の視点を一冊で得たい読者向けの大学院レベルの教科書である。Bodie、Kane、MarcusのInvestmentsやMishkin&EakinsのFinancial Markets and Institutionsは、この数学なしに制度的・概念的な背景を与える。Bingham&KieselのRisk-Neutral Valuationが最も近い書で、リスク中立価格付けの数学的な扱いであるのに対し、Hunt&Kennedyは金利と実際の校正に集中している。
固定利付証券の教科書(Tuckman&Serrat、Veronesi、Sundaresan)は第II部の自然な相棒である。商品、慣行、市場制度をより詳しく扱っており、Veronesiの第III部は同じ連続時間モデルの一部をよりやさしく構築している。Duffie&SingletonのCredit Riskは、同じ価格付けの道具をデフォルトに適用する。
本書の使い方
数理ファイナンスを学ぶ大学院生や、確率と微積分に慣れた定量系の実務家に向く。著者が想定する読者は、数学的素養のある実務家と、金融デリバティブに関心のある学術系の数学者の双方である。
- 理論への近道: 第1章、次に第7章。必要に応じて第2~6章を参照する。
- 理論の通し読み: 第1~8章を順に。第8章は金利モデル。
- 実践のコース: 第9~12章で商品と標準的な価格付けを学び、次に第13~16章(ヨーロピアン型)、第17~19章(バミューダ型・経路依存型)。二つのオリエンテーションが章のまとまりを説明している。
- 演習: 第20章を対応する章と並行して解き、解答で基本的な計算を確認する。
