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Health Informatics: Practical Guide(医療情報学実践ガイド) cover

生体医工学

生体医工学

Health Informatics: Practical Guide(医療情報学実践ガイド)

William R. Hersh (editor)

英語原題: Health Informatics: Practical Guide

臨床と技術のどちらの背景をもつ読者にも向けた、生物医学・医療情報学の幅広い入門概説書。新しい編者のもとで全面的に書き改められた第8版では、診療、公衆衛生、研究、個人の健康管理においてデータと情報技術がどのように用いられるかを、各分野の執筆者による章で説明する。

前提知識: 形式的な前提科目はなく、医療かコンピュータのいずれかに一般的になじみがあれば読み始められる。

難易度レベル
初級
学術レベル
大学院
health informaticselectronic health recordsinteroperabilityclinical decision supportdata science教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Hersh, W. (Ed.). (2022). Health Informatics: Practical Guide (8th ed.). Lulu.com.

章の要約

第8版は全23章、約450ページで、ハーシュと、大学医療センター・医療機関・産業界に属する寄稿者たちによって執筆されている。ハーシュの序文によれば、内容はロバート・ホイトが主編者を務めた過去7版からほぼ全面的に作り直されており、ハーシュがオレゴン健康科学大学(OHSU)とAMIAの10x10プログラムで教えてきた入門コースにおおむね沿っている。出版社が公開しているサンプルの2章は、いずれも冒頭に学習目標を掲げ、末尾に結論、注釈付きの追加文献、詳細な参考文献リストを置いている。

第1章:生物医学・健康情報学入門

情報学とその下位分野(臨床情報学、画像情報学、公衆衛生情報学、消費者健康情報学、臨床研究情報学、バイオインフォマティクス)を定義し、生物医学は情報科学であると論じる。章の大きな部分は情報学の人材に充てられ、典型的な職名、健康情報学と臨床情報学サブスペシャルティについて公表されたコンピテンシーの枠組み、専門資格、さらに学ぶための組織や資源を紹介している。

第2章:生物医学・健康情報学の小史

診断推論のモデル化を試みたレドリーとラステッドの1959年の論文から、初期の電子カルテシステム、米国国立医学図書館、ヒトゲノム計画、ウェブ、米国医学研究所(IOM)の報告書を経て、HITECH法に至る簡潔な歴史である。電子カルテへの反発(臨床医の負担、相互運用性の不足)、21世紀治療法(21st Century Cures Act)とSMART on FHIR、COVID-19の影響も扱う。

第3章:生物医学と健康のためのコンピューティング概念

序文はこの章を不可欠なコンピューティングの基礎と位置づけている。情報学の中心は技術そのものではないが、学ぶ者は応用の章に進む前にコンピューティングの概念を実用的に理解しておく必要がある、という考え方である。

第4–5章:電子健康記録;標準と相互運用性

第4章は、序文がおそらく最も中心的な応用と呼ぶ電子健康記録(EHR)とその中の臨床データを扱う。第5章は分野の主要な課題の一つ、すなわちシステム間でデータを交換し利用できるようにするためのデータの標準化に向かう。

第6–8章:データサイエンスと人工知能;臨床意思決定支援;自然言語処理

第6章は、データサイエンスとAIが健康と医療において達成したことと、まだ達成していないことを検討する。第7章は臨床意思決定支援の現状と今後の方向を述べ、第8章は自然言語処理を概観する。臨床情報の多くがテキストとして記録されているためである。

第9章:安全、質、価値

医療の安全・質・価値における情報学の役割を検討する。

第10–13章:健康情報交換(HIE);EHRシステムの選定と導入;遠隔医療と遠隔ヘルスケア;健康情報のプライバシーとセキュリティ

臨床システムを実際に運用するための章群である。組織や事業の境界を越えた情報交換、電子カルテシステムの選定と導入、急速に拡大した遠隔医療・遠隔ヘルスケア、健康情報のプライバシーとセキュリティを扱う。

第14–16章:情報検索(サーチ);臨床研究情報学;トランスレーショナル・バイオインフォマティクス

序文はこれらを直接の患者ケアを越える章と位置づけている。第14章は臨床医・研究者・患者が使う検索システム、第15章は情報学が臨床研究とトランスレーショナル研究をどう支えるか、第16章はゲノミクスなどのオミクスとそれが健康と医療に与える影響を扱う。

第17–21章:看護情報学;消費者健康情報学;公衆衛生情報学;根拠に基づく医療;画像情報学

焦点を絞った5つの分野の章である。看護師と情報学の役割、情報学の利用者としての患者・消費者、公衆衛生における情報学、臨床判断に最良のエビデンスを用いること(序文は、すべての入門書が扱うテーマではないと注記している)、そして画像を扱う。

第22–23章:健康情報学における倫理的問題;ヒューマン・コンピュータ・インタラクション

本書は情報学の倫理と、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションで締めくくられる。

主要概念

第1–3章:基礎

  • 生物医学・健康情報学(BMHI):技術に支えられた情報の活用によって、個人の健康、医療、公衆衛生、生物医学研究を改善することを目指す学問分野。
  • 情報学の下位分野:臨床、画像、公衆衛生、消費者健康、臨床研究、バイオインフォマティクスなど、情報学が適用される場によって定義される分野。
  • 情報学の人材とコンピテンシー:情報学に携わる人々の役割と、公表された必要な知識・技能。臨床情報学サブスペシャルティや専門資格を含む。
  • HITECH法と21世紀治療法:電子カルテの普及を推し進め、のちに情報ブロッキングや相互運用性の弱さといった問題の是正を図った米国の法律。

第4–9章:臨床データとその利用

  • 電子健康記録(EHR):患者ケアの記録とその中の臨床データ。本書の中心となる応用。
  • 相互運用性:システムが共通の意味をもってデータを交換できる能力。標準に依存する。
  • 臨床意思決定支援と自然言語処理:臨床判断のコンピュータによる支援と、臨床テキストの処理。

第10–23章:システム、場、専門分野

  • 健康情報交換:組織間で患者データをやり取りすること。
  • 遠隔ヘルスケア:離れた場所から医療を提供すること。
  • 根拠に基づく医療:臨床判断のための最良のエビデンスを探し、批判的に吟味すること。
  • トランスレーショナル・バイオインフォマティクス:ゲノムなどのオミクスデータを健康と医療に生かすこと。

批判的分析

長所

  • 一冊で分野全体を見渡せる。 23章が、定義と歴史から、電子カルテ、標準、AI、意思決定支援、遠隔医療、プライバシー、研究情報学、公衆衛生、画像、倫理までを扱い、一冊で概論コース全体をまかなえる。
  • 長年のコースに基づく構成。 序文によれば、構成は30年にわたり約5,000人の学生に教えてきた入門コースに基づいている。基礎、臨床システム、研究と専門分野という順序は、授業で使いやすい。
  • 職業への実践的な案内。 サンプルの章は職種、コンピテンシー、資格、専門団体に相当な紙幅を割いており、情報学の道に進むかどうかを考える学生に役立つ。
  • さらに学ぶための道しるべ。 サンプルの各章は注釈付きの追加文献と長い参考文献リストで終わる。序文も、全体像を示しつつ詳しく学ぶための文献を豊富に示すことを意図していると述べている。出版社のサイトには正誤表があり、教員は申請により教員用資料を入手できる。

短所

  • 深さより概観。 1章あたり約20ページのため、標準、自然言語処理、データサイエンスなどは教え込むというより紹介にとどまる。システムを構築する読者には専門書が必要である。
  • 米国中心。 サンプルの章は、AMIA・AHIMA・HIMSSの資格、ACGMEのサブスペシャルティ、HITECH法と21世紀治療法など、米国の制度と政策を通じて分野を描いている。他国の読者は政策に関する部分を自国の制度に置き換えて読む必要がある。
  • 変化の速い分野では古くなる。 序文の日付は2022年7月である。したがってデータサイエンスとAIの章は、同年後半から広がった大規模言語モデル系ツールの登場より前に書かれており、政策の章も当時の状況を反映している。
  • 小さな既知の誤り。 出版社の正誤表には、第4章の図の一部欠落や、第20章の批判的吟味の節で箇条書きが重複している点など、いくつかの制作上の誤りが挙げられている。読者は一覧を確認するとよい。

コースにおける位置づけ

本書はこのコースの書目の中で最初に読む教科書として自然な一冊であり、分野全体を体系的に概観し、主要な応用ごとに章を設けている。ワクターの『The Digital Doctor』は代替ではなく良い伴読書である。米国の医療が電子カルテを導入したときに何が起きたかを取材にもとづいて語る物語的な記録で、本書の第2・4・7・9・23章の内容の人間的な側面を示してくれる。本書と並行して、あるいは直前に読むと、政策と安全の章が具体的になる。

コイエラの『Guide to Health Informatics』は、オーストラリアと国際的な視点から書かれた幅広い教科書で、情報・コミュニケーション・意思決定のモデルを軸にしている。本書の後の二巡目に向き、米国外の学生にとっては本書の代わりにもなる。ベンソンとグリーヴの『Principles of Health Interoperability』は、第5章の主題をメッセージ標準、FHIR、臨床用語体系へとはるかに深く掘り下げる。ハーシュ自身の『Information Retrieval: A Biomedical and Health Perspective』は第14章の主題を一冊かけて扱う。ショートリフらの『Medical Informatics』は、臨床データ、意思決定支援、ヒューマンファクターをより深く学びたい読者向けの、より大部でシステム志向の教科書である。

本書の使い方

本書は、臨床系・技術系どちらの背景の学生にとっても、健康情報学の最初のコースに適している。医学生や看護学生、生体医工学や情報系の学生、医療IT部門の職員などである。特別な前提知識は不要だが、序文は内容を大学院の入門コースと結びつけているので、学部生は専門職向けの文体を想定しておくとよい。

実際的な読書計画:

  • 中核: 第1–5章を順に読む。以後のすべての土台となる用語、歴史、コンピューティングの基礎、電子カルテ、標準を固める。
  • 第二のまとまり: 第6–9章(データサイエンスとAI、意思決定支援、自然言語処理、安全と質)、続いて情報交換・導入・遠隔医療・プライバシーを扱う第10–13章。
  • 関心に応じて選ぶ: 第14–21章はどの順で読んでもよい。臨床家は根拠に基づく医療と情報検索から、工学系の学生は画像情報学とトランスレーショナル・バイオインフォマティクスから、看護・公衆衛生の学生はそれぞれの章から始めるとよい。
  • 最後に: 倫理とヒューマン・コンピュータ・インタラクションの第22–23章は、臨床システムの章の後に読むと理解しやすい。

サンプルの章のように冒頭に学習目標がある場合は、それをチェックリストとして使い、読後に本文を見ずに各項目に数文で答えてみるとよい。章が話題の入口にとどまるときは、追加文献のリストが次の行き先になる。AI、相互運用性の規則、遠隔医療の政策など変化の速い分野では、2022年以降の動向を新しい資料で確認し、該当する図と箇条書きに頼る前に正誤表を参照すること。