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Medical Anthropology: A Biocultural Approach(医療人類学:生物文化的アプローチ) cover

人類学

人類学

Medical Anthropology: A Biocultural Approach(医療人類学:生物文化的アプローチ)

Andrea S. Wiley; John S. Allen

英語原題: Medical Anthropology: A Biocultural Approach

健康と病気に対する生物学的視点と文化的視点を組み合わせた医療人類学の教科書です。各テーマについてまず関連する生物学を示し、次にその状態がどのように生じ理解されるかを進化的・歴史的・比較文化的な次元から検討します。これにより読者は、病いが身体と社会的世界の両方によって形づくられることを理解できます。

前提知識: 人類学か生物学の入門知識があると役立ちますが、専門的な医学知識は前提としません。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
medical anthropologybioculturalhealth and diseaseevolutionary medicinenutrition教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Wiley, A. S., & Allen, J. S. (2020). Medical Anthropology: A Biocultural Approach (4th ed.). Oxford University Press.

章の要約

第4版は全11章で、前に序文(「本書の特色」「今回の版で新しくなった点」「本書の概要」の各節)、後ろにエピローグがあり、巻末に用語集と参考文献が付く。出版社は、大半の章を貫く構成を次のように説明している。各健康問題について、著者はまず基本的な生物学的情報を示し、次に分析を進化、歴史、異文化の観点へと広げて、その問題がどのように生じ、どのように理解されているかを論じる。

第1章:Introduction: A Biocultural Approach to Medical Anthropology(序論:医療人類学への生物文化的アプローチ)

この分野を定義する。人類学とは何か、医療人類学の発展、文化概念と生物文化的視点が節として並び、最後に本書の残りの部分を展望する。

第2章:Anthropological Perspectives on Health and Disease(健康と病気をめぐる人類学的視点)

概念を扱う章。健康、疾患(disease)、病い(illness)、病気という社会的状態(sickness)を区別し、倫理と文化相対主義を取り上げたうえで、いくつかのアプローチを順に論じる。生物学的な正常性、進化的視点と適応性、文化的アプローチ(健康の政治経済学、民族医療体系、病いと苦しみへの解釈的アプローチを含む)、応用医療人類学、疫学である。

第3章:Healers and Healing(治療者と治療)

文化と治療体系、治療者がどのように選ばれるかを扱い、続いて代替医療・補完医療(鍼、カイロプラクティック、ナバホの医療)、生物医学そのものが代替医療になる場面、生物文化的概念としての死、プラセボとノセボを論じる。後の節ではプラセボの力の活用、有効性、ワクチン接種とワクチン反対運動が取り上げられる。

第4章:Diet and Nutrition in Health and Disease(健康と病気における食事と栄養)

人間の栄養と消化から始まり、栄養転換へと進む。狩猟採集民と「パレオ」食、農耕への移行、農耕以後の食への適応(ラクターゼ活性持続、セリアック病)、バリー・ポプキンの栄養転換が扱われる。そのあと肥満、糖尿病、持続可能性の問題が続く。

第5–7章:Child Growth and Health(子どもの成長と健康);Reproductive Health in Biocultural Context(生物文化的文脈における生殖の健康);Aging(加齢)

ライフコースの順に並んだ3章。第5章は生活史理論を用いて、妊娠から乳児期、小児期、思春期までの成長をたどり、性とジェンダー、環境毒素、米国における10代の妊娠についての節がある。第6章は生殖に関する健康の医療化、月経、妊孕力と不妊、女性器切除、妊娠、出産、母親業、添い寝と乳幼児突然死、閉経、乳がんのリスクを扱う。第7章は加齢の生理学的理論と進化理論、老化する脳とアルツハイマー病、カロリー制限、加齢の文化的構築を論じる。

第8–9章:Infectious Diseases: Pathogens, Hosts, and Evolutionary Interplay(感染症:病原体、宿主、進化的相互作用);Globalization, Poverty, and Infectious Disease(グローバリゼーション、貧困、感染症)

第8章はコッホの原則と病原体の分類から始まり、感染経路、人間の防御と免疫応答、宿主と病原体の共進化(マラリアが一例)、抗生物質耐性、アレルギーと喘息へと進む。第9章は感染症を歴史と政治のなかに位置づける。新興・再興感染症、植民地主義、天然痘、気候変動、コレラ、ダム、エボラ、結核、HIV/エイズである。

第10–11章:Stress, Social Inequality, and Race and Ethnicity(ストレス、社会的不平等、人種とエスニシティ);Mental Health and Illness(心の健康と病い)

第10章はストレス反応の生物学と、心血管疾患、免疫機能、子どもの成長との関連を説明し、続いて不平等(相対的地位、社会的結束、社会的支援)と、米国における人種、人種主義、健康に目を向ける。第11章は生物文化的文脈における医学モデルから始まり、文化結合症候群、摂食障害、ADHD、気分障害、物質使用の進化、統合失調症、睡眠を扱う。

エピローグ:The Relevance of Medical Anthropology(医療人類学の意義)

次に何ができるかを示す実践的な結びの節。人類学や公衆衛生の大学院プログラム、医学部や臨床の保健医療職、政府・非政府機関、遺伝カウンセリングが挙げられている。

主要概念

第1–3章

  • 生物文化的視点:健康と病いを、生物と文化がともに形づくるものとして読むこと。書名が示す枠組みである。
  • 疾患、病い、病気という社会的状態:第2章が区別する用語で、生物学的な状態、生きられた経験、社会的役割にそれぞれ対応する。
  • 生物学的な正常性と適応性:第2章の見出しで、何が健康とされるか、人間がどう適応するかを問う。
  • プラセボとノセボ:期待が生み出す治療効果と害で、第3章で論じられる。

第4–7章

  • 栄養転換:採集から農耕を経て超加工食品へという食の変化(第4章)。
  • 生活史理論:第5章で成長と発達を論じる枠組み。
  • 医療化:第6章で生殖の健康について論じられる過程で、通常の生活上の出来事が医学的問題として扱われるようになること。
  • 加齢の進化理論:身体がなぜ老いるのかを説明するもので、生理学的理論と並べて論じられる(第7章)。

第8–11章

  • 宿主と病原体の共進化:人間と微生物の進化的な相互作用(第8章)。
  • 新興・再興感染症:第9章で植民地主義、グローバリゼーション、貧困と結びつけられる感染症。
  • ストレスと不平等:ストレスの生物学と、社会的地位や人種との関係(第10章)。
  • 文化結合症候群:第11章の見出しで、特定の文化のなかで定義される状態を指す。

批判的分析

長所

  • 一貫した方法。 出版社の説明する、まず生物学、次に進化・歴史・異文化という型は、目次にも見て取れる。各章はまず生理、分類、ストレス反応から入り、そのあとで文化と歴史に向かう。読者は話題が変わっても同じ考え方に出会う。
  • 幅広い題材。 11章はライフコース(成長、生殖、加齢)、栄養、感染症と精神疾患、健康格差をカバーしており、1冊で授業全体を支えられる。
  • 新しい内容。 目次には、ワクチン接種とワクチン反対運動、気候変動、エボラ、ADHD、睡眠、持続可能性の問題が含まれ、栄養転換の記述は超加工食品にまで及ぶ。
  • 応用への志向。 出版社は、生物文化的アプローチが予防や治療にどう役立ちうるかを強調しており、エピローグは読者に今後の学びや職業への道筋を示す。
  • 教員による推薦の言葉。 本書の販促資料に再録された推薦文は、Melissa Melby(デラウェア大学)、Roberta Fiske Rusciano(ライダー大学)、Lianne Tripp(北ブリティッシュコロンビア大学)らの教員によるもので、統合的であること、文化人類学と生物人類学のバランスがとれていること、全体的な視点をもち、世界各地の具体的な事例を示していることが挙げられている。各コメントがどの版を指すのかは示されていない。

短所

  • 経験を中心とする著作に比べて解釈的な面は弱い。 病いと苦しみへの解釈的アプローチは第2章の一節を占めるにすぎない。意味、語り、病いの生きられた経験に関心のある読者は、もう1冊必要になる。
  • 生物学に抵抗がないことが求められる。 加齢の生理学的理論、病原体の分類、免疫応答を扱う章は、生物学の用語がかなり多い。生物学の背景がない読者は、これらの章をゆっくり読む必要があるだろう。
  • 米国中心の面がある。 複数の話題が米国を枠組みにしており(10代の妊娠、人種とエスニシティと健康)、他の地域の授業では地元の資料の補足が要る。
  • 長い。 約480ページなので、1学期の授業では章を選ぶことになる。

コースにおける位置づけ

医療人類学の書目のなかで、WileyとAllenは最も生物学色の強い教科書である。Donald JoralemonとMary SundalのExploring Medical Anthropologyは簡潔な入門書で、主要な理論的視点を公平に紹介しており、より短い入口を求める学生が先に読むのに向く。Peter BrownとSvea ClosserのUnderstanding and Applying Medical Anthropologyは多くの著者の研究を収めた論集で、応用に比重があり、WileyとAllenの各章と組み合わせてゼミの教材にできる。

病いの経験と解釈については、Arthur KleinmanのThe Illness Narratives(患者の物語を通して疾患と病いを区別する)が第2章の自然な併読書になる。Byron GoodのMedicine, Rationality and ExperienceとMargaret LockおよびVinh-Kim NguyenのAn Anthropology of Biomedicineは、それぞれ医学的知識、医療技術が身体と社会をどう形づくるかを論じた、より手ごたえのある本で、このような授業のあとに読むとよい。

本書の使い方

医療人類学、グローバルヘルス、プレヘルス課程の学部生や、生物学や公衆衛生からこの分野に入る大学院生に向く。人類学か生物学の入門的な知識があると役立つが、医学の知識は前提とされない。

実際的な進め方は次のとおり。

  • 中心: まず第1章と第2章。ほかのすべての章で使われる語彙と枠組みが示される。
  • テーマ別の章: 授業に合わせた順で読める。第8章は第9章の前に、第10章は第11章と同時かその前に読む。第4–7章はライフコースの流れをなす。
  • ほかの声と組み合わせる: 病いの経験にはKleinmanを、ゼミでの事例の議論にはBrownとClosserのような論集を使う。
  • 学期末レポートのために: テーマ別の章を1つ選び、その参考文献をたどって疫学や民族誌の文献へ進む。序文の概要とエピローグは、その後の学習の計画に役立つ。