01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Guest, K. J. (2023). Cultural Anthropology: A Toolkit for a Global Age (4th ed.). W. W. Norton & Company.
章の要約
第4版は824ページ、17章を3部に配した大部の入門教科書である。出版社は本書の姿勢を、人類学は「大学で受ける最も重要な授業かもしれない」という冒頭の主張に要約し、「ツールキット」という発想を、新しい集団に入ってその暗黙の規範や力関係を読み解くという日常的な技能を、学問としての分析の習慣へと磨き上げるものだと説明している。出版社によれば、本書は144を超えるエスノグラフィー研究(うち21はこの版で新たに加わったもの)を用いて概念を説明し、新たに6本の「Anthropologists Engage the World」インタビューと、各章の新しい学習目標を加えている。本書はNortonのオンライン教材(Check Your Understanding問題付きのインタラクティブな電子書籍、適応型クイズのInQuizitive、フィールドノート・研究倫理・エスノグラフィーの書き方・エスノグラフィーの読み方・民族誌映画の分析を扱う「Practicing Ethnography」アクティビティ)とセットで販売されている。
第1部 Anthropology for the 21st Century(21世紀の人類学)— 第1–4章:Anthropology in a Global Age(グローバル時代の人類学);Culture(文化);Fieldwork and Ethnography(フィールドワークとエスノグラフィー);Language(言語)
冒頭の部は、学問としての人類学とその主要な道具を定義する。人類学とは何か、なぜグローバル化がその枠組みとなるのかから始まり、文化の概念、フィールドワークとエスノグラフィーという方法へと進み、さらに言語を扱う。以前の版ではこの部に人類の起源の章もあったが、第4版の目次には見当たらず、本書は現在、文化人類学に焦点を絞っている。
第2部 Unmasking the Structures of Power(権力構造の仮面をはぐ)— 第5–10章:Race and Racism(人種と人種主義);Ethnicity and Nationalism(エスニシティとナショナリズム);Gender(ジェンダー);Sexuality(セクシュアリティ);Kinship, Family, and Marriage(親族、家族、婚姻);Class and Inequality(階級と不平等)
第2部は権力と差異のシステムを軸に構成されている。各章は社会的分類の一つの軸を取り上げ、人種とエスニシティからジェンダー、セクシュアリティ、親族を経て階級に至る。部の題名は、こうした分類がどのように生み出され、不平等な生をどう形づくるかを示そうとする本書の狙いを表している。出版社は、人種的正義や、セクシュアリティ・ジェンダー・権力をめぐる考え方の変化を、新版が取り上げる課題に挙げている。
第3部 Change in the Modern World(現代世界における変化)— 第11–17章:The Global Economy(グローバル経済);The Environment and Sustainability(環境と持続可能性);Migration(移民);Politics and Power(政治と権力);Religion(宗教);Health and Illness(健康と病い);Arts and Media(芸術とメディア)
最後の部は、ツールキットを制度と変化の過程に適用する。グローバル経済、環境と持続可能性、移民、政治、宗教、健康、芸術である。環境の章は後から加わったもので、初版と第2版の図書館目録ではこの部に環境の章はない。出版社は、環境変動、気候変動、Covid-19パンデミックの不均等な影響を第4版が取り上げる課題として挙げており、これらは環境と健康の章に属する。
主要概念
第1部:21世紀の人類学
- グローバル時代の人類学:グローバル化とそれが日常生活に及ぼす影響を通して学問を捉える、本書の枠組み。
- 文化:この分野の中心概念で、方法論と言語の章に先立って独立した章が与えられている。
- フィールドワークとエスノグラフィー:出版社が本書の核心に据える、対象に深く入り込む調査方法。
- 言語:文化の一部としての言語。学問の基本的な道具の一つとして扱われる。
第2部:権力構造の仮面をはぐ
- 人種と人種主義、エスニシティとナショナリズム:現実の帰結を伴う社会的構築物として検討される差異のカテゴリー。
- ジェンダーとセクシュアリティ:身体、アイデンティティ、欲望が文化的にどう秩序づけられるかを扱う2つの章。
- 親族、家族、婚姻:つながりをめぐる人類学の古典的テーマ。
- 階級と不平等:権力の構造としての階層化。
第3部:現代世界における変化
- グローバル経済:経済システムと、世界規模でのそのつながり。
- 環境と持続可能性:人間社会と環境変動の関係。
- 移民:人の移動と、それが共同体に及ぼす影響。
- 政治、宗教、健康、芸術とメディア:グローバルな変化に照らして検討される諸制度。
批判的分析
長所
- エスノグラフィーが中心にある。 出版社によれば、概念は144を超えるエスノグラフィー研究を通して説明され、第1部ではフィールドワークとエスノグラフィーに独立した章が割かれている。学生は定義だけでなく、人類学者が実際に明らかにしてきたことを通して人類学に出会う。
- 権力と現代的課題を軸にした構成。 人種、エスニシティ、ジェンダー、セクシュアリティ、親族、階級を扱う第2部の6章は、不平等についての明確な主張を本書に与えており、新版は人種的正義、気候変動、パンデミックを明示的に取り上げている。授業を現在の議論に結びつけやすい。
- 充実した教育装置。 学習目標、現役の人類学者へのインタビュー、そしてオンラインのCheck Your Understanding問題、InQuizitiveクイズ、「Practicing Ethnography」アクティビティが、フィールドノートの書き方や倫理的な調査の進め方といった技能を段階的に練習する機会を与える。本書は定期的に改訂されており、これまでに2014年、2017年、2020年に版を重ねている。
短所
- 非常に長い。 824ページ、17章という分量は、多くの1学期の授業で扱える量を超えている。Nortonは同じ副題をもつ短い Essentials of Cultural Anthropology も出しているが、これは別の本なので、授業でどちらを使うか確認する必要がある。
- 文化人類学に限られる。 以前の版にあった人類の起源の章は削除されており、考古学や生物人類学は扱われない。四分野型の入門として教えられる授業では、別の教材が必要になる。
- 商業的なデジタル教材を前提とした設計。 実践的な機能のいくつか(適応型クイズ、民族誌映画のアクティビティ、Check Your Understanding問題)は印刷された本文ではなくオンライン・プラットフォームにあるため、紙の本だけを使う読者は学習設計の一部を利用できない。
コースにおける位置づけ
文化人類学入門のコースにおいて、Guestは包括的な教科書であり、学問の道具と標準的なテーマを、構造化された学習支援とともに一冊で扱う。Thomas Hylland Eriksenの Small Places, Large Issues は、学問の歴史と方法から古典的なテーマを経てグローバルな課題へと進む、よりコンパクトで論述的な社会・文化人類学入門である。一貫した議論で組み立てられた短めの本を好む学生に向いており、同じテーマについてのもう一つの視点としても使える。
残りの本は、Guestの代わりではなく、並行して、あるいは後に読むのがよい。Margaret Meadの Coming of Age in Samoa は古典的なエスノグラフィーで、第2章の文化をめぐる議論が一つの研究の中でどのように展開されるかを示しており、フィールドワークの章のよい副読本になる。Alan Barnardの History and Theory in Anthropology は人類学理論の展開をたどり、主要な学派を相互の関係の中で説明する。テーマ別の教科書では簡単にしか触れられない歴史的・理論的背景を補ってくれる。Eric Wolfの Europe and the People without History は、1400年以降、世界中の人々が交易、征服、資本主義にどのように巻き込まれていったかを論じた歴史人類学の主著であり、とりわけグローバル経済、移民、政治の章について、Guestのグローバルな枠組みを深めてくれる。
本書の使い方
本書は人類学の最初の授業のために書かれており、この分野の予備知識を前提としない。1年生、社会科学の必修として履修する非専攻の学生、そして専攻を考えている学生に向いている。
- 中核: 第1–3章(グローバル時代の人類学、文化、フィールドワークとエスノグラフィー)が、以降のすべてで使われるツールキットを示す。最初に順番どおり読む。授業に言語人類学の独立した単元がない場合は、言語を扱う第4章もここに含める。
- 権力と差異: 授業に合わせて第2部から選ぶ。第5–6章(人種、エスニシティとナショナリズム)と第7–8章(ジェンダー、セクシュアリティ)は自然に組になる。第9章の親族は人類学の古典的テーマであり、第10章の階級は第2部を第3部へとつなぐ。
- グローバルな変化: 第11章のグローバル経済が第3部の要である。授業のテーマに応じて、環境、移民、政治、宗教、健康、芸術の章を加える。
- 本文と並行して: 各章の前に学習目標をチェックリストとして使い、エスノグラフィーの事例は議論を担っているので、読み飛ばさずに丁寧に読む。オンライン教材が使える場合、フィールドノート、倫理、民族誌映画を扱う「Practicing Ethnography」アクティビティは、小規模なフィールドワーク課題への最も直接的な準備になる。
教科書を、コースのリストにあるMeadの研究のような長編のエスノグラフィー1冊と組み合わせると、教科書の概念が一つの場所と一つの議論の中でどのように展開されるかが見えてくる。
