01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Bourdieu, P. (2010). Distinction: A Social Critique of the Judgement of Taste (R. Nice, Trans.). Routledge. (Originally published in French in 1979.)
章の要約
本書はフランスにおける趣味と社会階級についての大規模な研究で、英語版は約640ページである。出版社は、現代フランスの壮大なエスノグラフィーであると同時に、ブルジョワ的精神の解剖でもあると説明している。前提は、心地よいものと、俗悪なもの、単に流行のもの、醜いものとのあいだで行われる日常の美的選択は決して無垢ではなく、それらは他の階級の選択に対立してなされる選択、すなわち「卓越化」(distinctions)だということである。社会世界は、権力関係の体系であると同時に象徴の体系としても機能し、後者では趣味のごくわずかな違いが社会的判断の基礎になる、と本書は論じる。全体は3部8章で、序論と結論が枠をなし、後記と付録が続く。
Preface to the English-Language Edition;Introduction
この二つの冒頭の文章は三つの部の前に置かれている。英語版のために書かれた序文と、序論である。
第1部、第1章:The Aristocracy of Culture
第1部は「A Social Critique of the Judgement of Taste」と題され、これは本書全体の副題でもあり、この1章のみからなる。章題と部の題からは、趣味判断とその社会的批判を扱うことがわかる。
第2部、第2〜4章:The Economy of Practices
第2章 The Social Space and its Transformations は、階級や集団が位置づけられる空間を示す。第3章 The Habitus and the Space of Life-Styles は、ハビトゥスの概念をその空間に見られる様々な生活様式に結びつける。第4章 The Dynamics of Fields は場とそのダイナミクスに移る。この三章は、残りの部分が用いる概念の道具立てを与える。
第3部、第5〜8章:Class Tastes and Life-Styles
第5章 The Sense of Distinction、第6章 Cultural Good Will、第7章 The Choice of the Necessary は、第3部の題が示すとおり、本書の概念を特定の階級的位置にある人々の趣味と生活様式に適用する。第8章 Culture and Politics は、文化を政治に結びつけることでこの部を締めくくる。
Conclusion: Classes and Classifications;Postscript: Towards a “Vulgar” Critique of “Pure” Critiques
結論は、階級の分析と、階級がそれによって判断される分類を一つにまとめる。後記「Towards a ‘Vulgar’ Critique of ‘Pure’ Critiques」は、本書自身の副題、すなわち趣味判断の社会的批判をもじっている。
主要概念
序論と第1部
- 趣味判断:本書が社会的に条件づけられたものとして扱う美的評価。
- 卓越化:他の階級の選択との対立を示す趣味の選択。
第2部:実践の経済
- 社会空間:社会的位置が置かれる構造化された空間(第2章)。
- ハビトゥス:社会的位置を一連の生活様式に結びつける概念(第3章)。
- 場:第4章がそのダイナミクスを検討する構造化された領域。
第3部と結論
- 生活様式と階級の趣味:第5〜8章で研究される嗜好のパターン。
- 階級と分類:結論の題にある対で、社会集団とそれらを序列づけるのに使われるカテゴリーを結びつける。
批判的分析
長所
- 大規模で統合された企画。 Routledgeの紹介文は、本書を一つの社会のエスノグラフィーであると同時に一つの階級の分析として示している。その広がりは3部構成に表れており、理論的な導入のあとに概念の章が続き、さらに様々な階級の趣味の詳細な叙述が来る。
- 概念から組み立てられた理論。 第2部の章題には主要概念の名前(社会空間、ハビトゥス、場)が含まれているので、読者はその定義と展開を見つけやすい。
- 評者による評価。 出版社が引用するObserverの書評は、現代フランスにおける気取りの戦略への豊かで鋭い案内であり、芸術や美への対照的な態度によって階級の諸部分がいかに互いに分かれるかを示すと述べている。
- 意図的に挑発的な命題。 「いかなる趣味判断も無垢ではない」という主張は、本書に述べやすく議論しやすく、異を唱えやすい中心的主張を与えている。
短所
- 分量。 640ページに後記・付録・注が加わる長い本であり、多くの読者は取捨選択が必要になる。
- 特定の社会と時点。 研究対象は、本書が最初に刊行された1979年のフランスであり、今日の読者は、知見が他の社会や時代にどこまで及ぶかを自分で判断しなければならない。
- 概念が中ほどで現れる。 章題を見ると、ハビトゥス、場、社会空間は冒頭の章のあとの第2部で展開されるので、厳密に順に読む読者がこの語彙に出会うのは第1章のあとになる。
コースにおける位置づけ
これは現代社会理論の一次文献であり、二次的な資料の助けを借りて読むのがよい。ElliottのContemporary Social Theory: An IntroductionとRob Stones編のKey Sociological Thinkersは入門的な概観で、ブルデューを読む下地をつくる。Baertとda SilvaのSocial Theory in the Twentieth Century and Beyondは彼をより広い理論史の中に位置づける。Contemporary Sociological Theoryはブルデューの部を含む選集で、より短い最初の出会いになる。
GiddensのThe Constitution of Societyは、行為と構造の分断を克服しようとするもう一つの重要な著作であり、ブルデューのハビトゥスや場と併せて読むのは自然な比較である。Distinction自体は一般的な理論の教科書ではなく、文化と階級についての、実証と理論を兼ねた大部の議論である。
本書の使い方
社会理論の予備知識がある、社会学・文化研究などの上級の学部生や大学院生に向く。ブルデューが初めての読者は、先にハビトゥスと場についての入門的な解説を読むとよいだろう。
実践的な読み方は次のとおり。
- 中核: 序論、第1章、続いて概念のための第2部(第2〜4章)。
- 応用: 第3部(第5〜8章)は、概念が階級の趣味と生活様式に働くさまを示す。時間のない読者は第5〜7章から1章を選んで読み、第8章と結論を読むとよい。
- 初読では任意: 後記と付録。
各章を読み終えるごとに、日常の嗜好(ある種の音楽、食べ物、余暇)を一つ書き留め、本書ならそれを階級的位置とどう結びつけるかを考える。そのうえで、自分の環境でその解釈を支持または否定する証拠はどのようなものかを考えてみよう。
