01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Collins, P. H. (2022). Black Feminist Thought: Knowledge, Consciousness, and the Politics of Empowerment (30th anniversary ed.; first published 1990, 2nd ed. 2000). Routledge.
章の要約
30周年記念版(468ページ)は、第2版(2000年)の3部12章をそのまま保ち、この版のために書かれた新しい序文と、新しい結び「The Power of Ideas」を加えている。初版と第2版の序文も残され、用語集、参考文献、索引が続く。出版社はこれを、長い年月を経た本書の最初の大きな更新としている。Collins は黒人女性の思想と行動の歴史と輪郭をたどり、黒人フェミニズム思想とは、逆境のなかで黒人女性が生き延び、持ちこたえ、成功することを促す言説であると論じる。そしてそれらの思想と行動は周縁的な関心事ではなく、民主社会における社会正義の将来の中心にあると述べる。新しい部分は、本書の議論が現代の社会問題とどう関わるかを検討し、黒人フェミニズム思想の今後の方向を示している。
第一部、第1〜2章:黒人フェミニズム思想の政治/黒人フェミニズム思想の際立った特徴
第一部は、黒人フェミニズム思想とは何かを扱う。本書についての二次的な要約によれば、それは黒人女性の視点と経験を中心に据えた知の体系であり、黒人女性は階級、地域、年齢、性的指向によって異なる形で表現される共通の立場(スタンドポイント)を共有しており、黒人女性の知識人にはその立場を明らかにする役割がある、という前提に立っている。アカデミアにおける黒人女性の「アウトサイダー・ウィズイン」の位置はその中心的な考えの一つであり、本書は小説、詩、音楽も社会思想に数える。
第二部、第3〜4章:労働、家族、黒人女性の抑圧/マミー、家長的女性、その他の統制イメージ
第二部「黒人フェミニズム思想の中核的主題」は、黒人女性の生活における労働、家族、抑圧の交差から始まる。第4章は「統制イメージ」、つまり(マミーや家長的女性などの)ステレオタイプを扱い、二次的な要約によれば、それらは黒人女性の従属を自然なものに見せかける。
第二部、第5章:自己定義の力
統制イメージに対する対応物である。自己定義は、自らの現実を名づける力であり、内面化された抑圧から「自由な精神」へと向かう旅として説明され、安全な空間と肯定に支えられる。
第二部、第6〜7章:黒人女性性の性の政治/黒人女性の愛情関係
セクシュアリティと親密な生活についての2章。出版社による第2版の紹介は、権力の体系としての異性愛主義を主題の一つに挙げている。
第二部、第8〜9章:黒人女性と母性/黒人女性の活動主義を考え直す
この2章は母性と活動主義を扱う。本書をめぐる議論で繰り返し現れる用語には、「コミュニティのアザーマザー(community othermothers)」「ケアの倫理(ethic of caring)」「社会正義プロジェクト(social justice projects)」がある。
第三部、第10〜12章:トランスナショナルな文脈における米国黒人フェミニズム/黒人フェミニストの認識論/エンパワーメントの政治に向けて
第三部「黒人フェミニズム、知識、権力」は、米国の黒人フェミニズムとブラック・ディアスポラのフェミニズムとの結びつきから始まる。第11章は、黒人フェミニストの認識論の枠組みを、思考を支配してきた西洋の認識論と対比して示し、黒人女性の生を理解可能にするもう一つの知り方を擁護する。最終章は、書名の副題にあるエンパワーメントの政治を取り上げ、その後に新しい結びが続く。
主要概念
第一部(第1〜2章)
- 黒人女性のスタンドポイント:黒人女性の社会的位置から生まれる、共有されつつ内部では多様な視点。
- アウトサイダー・ウィズイン:ある場に属しながらもそこで周縁的な位置にある人に開かれる社会の見方。
- 黒人女性の知的営為:学術に加えて小説、詩、音楽も含む広い定義。
第二部(第3〜9章)
- 統制イメージ:マミーや家長的女性など、抑圧を自然なものに見せかけるステレオタイプ。
- 自己定義:自らの現実を名づける力。
- 交差する抑圧:人種、ジェンダー、階級、セクシュアリティの相互に絡み合う効果。
第三部と結び(第10〜12章)
- 黒人フェミニストの認識論:知識を妥当とするもう一つの方法。
- エンパワーメント:副題にある政治的な目標。結びの「The Power of Ideas」で改めて論じられる。
- 支配のマトリクス:交差する抑圧がどう組織されているかを示す、本書と深く結び付けられる概念。
批判的分析
長所
- 総合。 Gender & Society誌の1992年の書評シンポジウムで、Robert Newbyは初版を、ジェンダー・人種・階級の不平等との闘いのなかに黒人女性の状況を位置づけるうえで不可欠な知の総合であると評した。
- 幅広い資料。 本書は学術に加えて、小説、詩、音楽、オーラル・ヒストリーを用い、著名な黒人フェミニスト思想家たちに解釈の枠組みを与えている。
- 評価。 初版は、米国社会学会のジェシー・バーナード賞(1993年)と、社会問題研究学会のC・ライト・ミルズ賞(1990年)を受けた。
- 新しい読者への更新。 記念版は序文、結び、用語集を加えており、出版社は、長く社会正義に取り組んできた人々にも、黒人女性の思想と行動に初めて触れる新しい世代にも向けた本だと述べている。
短所
- 証拠に対する注意。 Newbyは、本書の強みの一つである小説家を資料に使うことは、そうした書き手が学者と同じ基準に服さないため、注意も要すると指摘した。
- 米国への焦点。 本書の主題は米国の黒人フェミニズムであり、トランスナショナルな文脈は12章のうちの1章である。
- 学術的な理論書。 参考文献の多い理論書であり、演習を備えた教科書ではない。初めて読む人は、用語についての手引きがほしくなるだろう。
- 版による違い。 章題は2000年版と同じだが、新しい序文と結びが全体の枠組みを変えており、以前の刷のページ参照は468ページのこの版には引き継げない。
コースにおける位置づけ
Black Feminist Thoughtは、本サイトのジェンダー・セクシュアリティの本のなかで、交差性(インターセクショナリティ)の理論を扱う書である。WadeとFerreeのGender: Ideas, Interactions, Institutionsは、交差性に持続的な注意を払うジェンダー社会学の教科書であり、ConnellとBridgesのGender: In World Perspectiveは、ジェンダーを世界規模の社会構造として扱う短い入門書で、どちらも良い最初の一歩になる。WeeksのSexualityは、セクシュアリティの社会的・歴史的研究への短い入門で、第6〜7章と併せて役に立つ。
ButlerのGender TroubleとConnellのMasculinitiesは、ジェンダーについての別の理論を示す。前者は行為遂行性(パフォーマティヴィティ)、後者は実践の布置としての男性性である。Collinsをそれらと並べて読むと、スタンドポイントに基づく人種とジェンダーのアプローチが、言説や男性のジェンダー実践を中心に置く理論とどう異なるかがわかる。
本書の使い方
本書は、社会学かジェンダー研究の入門科目を終えた、上級の学部生と大学院生に向いている。
- 中核: 定義とスタンドポイントの議論のための第1〜2章、続いて、統制イメージと自己定義を扱う第4〜5章。この2章は、多くの授業でそれだけで使われる。
- 枠組み: まず30周年記念版の序文で本書の現在の枠組みをつかみ、結びを最後に読む。
- 理論と方法のために: 黒人フェミニストの認識論を扱う第11章。後半の章を読みながら、支配のマトリクスを探すとよい。
- テーマ別: 労働、セクシュアリティ、愛情、母性、活動主義は第3章と第6〜9章、トランスナショナルな次元は第10章。
- 実践: 見慣れない用語には用語集を使い、「統制イメージ」を現在のメディア表現に当てはめて、それがどのイメージに通じ、何を正当化しているかを書き出す。
