01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Connell, R. W. (2005). Masculinities (2nd ed.). Polity. (U.S. edition: University of California Press.)
章の要約
本書は、単一の男性性の概念は存在せず、それぞれ異なる権力の位置と結びついた多様な男性性が存在すると論じる。それはジェンダー秩序の中でのことで、この秩序は男性に女性より多くの特権を与え続けると同時に、男性と少年にとっても難しい問題を生じさせている。約350ページの第2版は、初版に、内容の充実した新しい序論と新しい結論の章である後書き(Afterword)を加えたものである。新しい部分は、初版から10年間の男性性研究の発展を回顧し、グローバルなジェンダー関係、新しい理論、研究の実践的な用途、男性性の政治を論じる。本論は3部10章からなる。
Introduction to the Second Edition
新しい序論は五つの節からなる。Introducing Masculinities;Growth of the Field of Study;Debates and Difficulties;The Global Dimension;In Conclusion である。初版刊行後の研究を総括しており、この分野の案内としても役立つ。
第I部、第1〜3章:Knowledge and its Problems
第1章 The Science of Masculinity は、男性についての競合する知を概観する。臨床的な知(エディプス・コンプレックス、元型とアイデンティティ、ラディカルな精神分析)、男性役割、新しい社会科学(歴史研究、他者のエスノグラフィー、社会的構築とジェンダーのダイナミクス)、さらに政治的な知である。第2章 Men’s Bodies は、真の男性性、機械・風景・妥協としての身体、身体再帰的実践を論じる。第3章 The Social Organization of Masculinity は本書の中心概念を示す。男性性の定義、社会的実践の構造としてのジェンダー、男性性間の関係(ヘゲモニー、従属、共犯、周縁化)、そしてジェンダー秩序の歴史的ダイナミクス、暴力、危機傾向である。
第II部、第4〜7章:Four Studies of the Dynamics of Masculinity
第II部は四つの研究を示し、その内容を知るには節題が最良の手がかりになる。第4章 Live Fast and Die Young は、ある集団とその文脈を、抽象的労働、暴力と国家、男性にとっての強制的異性愛、集合的実践としての男性性、抗議の男性性といった見出しの下で扱う。第5章 A Whole New World は、関与、距離化、分離、異議申し立ての各局面を軸に構成され、環境運動とフェミニズムとの出会いについての節がある。第6章 A Very Straight Gay には、セクシュアリティ、ゲイであること(アイデンティティと関係)、男性性間の関係、変化への直面、プロジェクトかつ歴史としてのゲイの男性性についての節がある。第7章 Men of Reason は、男性性と合理性の構築、キャリアと職場、非合理、理性と変化を扱う。
第III部、第8〜10章:History and Politics
第8章 The History of Masculinity は、近代ジェンダー秩序の形成における男性性の産出、変容、現在の局面を扱う。第9章 Masculinity Politics は、男性の政治と男性性の政治を取り上げ、男性性セラピー、銃ロビー、ゲイ解放、「出口の政治」を検討する。第10章 Practice and Utopia は、歴史意識、行為の目的、脱ジェンダー化と再構成、行為の形態、教育、展望を考える。
後書き:The Contemporary Politics of Masculinity
新しい結論の章は、現代の家父長制における男性の利益、「バックラッシュ」の政治、新自由主義と男性の利益、暴力の問題、世界規模での男性性の政治を論じる。
主要概念
第I部
- 複数形の男性性:異なる権力の位置と結びついた多くの男性性があるという、本書の中心的主張。
- 社会的実践の構造としてのジェンダー:第3章がジェンダーを個人の属性ではなく、組織された実践の集合として扱う方法。
- ヘゲモニー、従属、共犯、周縁化:第3章が挙げる男性性間の四つの関係。
第II〜III部
- 抗議の男性性:第4章の節の主題の一つ。
- 男性性の政治:第9章の主題で、同章は男性の政治も取り上げる。
- 脱ジェンダー化と再構成:第10章で検討される行為の形態。
序論と後書き
- グローバルな次元:新しい序論が注目するグローバルなジェンダー関係。
- 家父長制における男性の利益:「バックラッシュ」の政治と新自由主義を背景にした、後書きによる再評価。
批判的分析
長所
- 理論と事例の緊密な結びつき。 第3章の概念のすぐ後に第II部の四つの研究が続くので、本書が歴史と政治に移る前に、概念が生活や職場に適用されるさまを読者は目にする。
- 広い知識基盤。 第1章は、男性性についての競合する知を、臨床的なものから社会科学的・政治的なものまで並べて示し、著者のアプローチを既存の分野の中に位置づける。
- 二か所の更新。 新しい序論と後書きが、10年後の研究で元の各章を枠づけている。
- 評者による賛辞。 出版社が引用する前の版への書評は、明快で洗練されている(Choice)、魅力的な文章で幅広く調べられ政治的にも有用である(Australian Journal of Political Science)、近代の社会的不平等における男性性についての基礎的研究である(Journal for the Study of British Cultures)と評している。
短所
- 小さな経験的基盤。 第II部は四つの研究に拠るので、概念を例証する事例は多くない。
- 更新は両端にとどまる。 出版社は新しい部分を、内容の充実した新しい序論と結論と説明しており、第II部の四つの研究が新しいとは述べていない。
- 分野の知識があると読みやすい。 第1章は精神分析や社会科学の文献に触れており、初学者は別に調べる必要があるかもしれない。
コースにおける位置づけ
コースの書目の中で、Masculinitiesは男性とジェンダー関係についての主要な社会科学的研究である。ConnellとBridgesのGender: In World PerspectiveとWadeとFerreeのGender: Ideas, Interactions, Institutionsは教科書水準の入門であり、WeeksのSexualityはセクシュアリティの社会的研究への短い入門で、第6章のゲイの男性性の内容に役立つ。CollinsのBlack Feminist Thoughtは人種・ジェンダー・階級についての主要な著作である。
バトラーのGender Troubleは哲学的・精神分析的な議論でジェンダーのカテゴリーに迫るが、Connellは社会構造、事例研究、歴史から出発する。二冊を併せて読むと、固定的なジェンダー観を問い直す、大きく異なる二つの道筋が見える。
本書の使い方
ジェンダーの入門的な授業を受け、フェミニズム理論と質的研究にある程度なじんでいる上級の学部生や大学院生に向く。
実践的な読み方は次のとおり。
- 中核: 時間がなければまず第3章。続いて背景として第1章、歴史的議論として第8章。
- 事例: 第II部(第4〜7章)。四つの独立した研究として読み、自分の関心に近いものを選ぶ。
- 政治と更新: 第9〜10章、第2版の序論、後書き。これらが合わせて議論を現代の男性性の政治まで進める。
- 初読では任意: 身体を扱う第2章。身体再帰的実践が関わってきたときに、第3章と併せて読む。
