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Thinking and Reasoning: A Very Short Introduction(思考と推論:超入門) cover

心理学

心理学

Thinking and Reasoning: A Very Short Introduction(思考と推論:超入門)

Jonathan St B. T. Evans

英語原題: Thinking and Reasoning: A Very Short Introduction

推論と合理性の研究に長年取り組んできた認知心理学者による、思考の心理学のコンパクトな入門書。人がどのように問題を解き、可能性について考え、推論し、意思決定するか、なぜ系統的なバイアスに陥りやすいか、人間の思考を合理的と呼ぶことは何を意味するかを概観し、心の二重過程理論で締めくくる。

前提知識: 特になし。心理学、統計学、論理学の予備知識は前提としない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
decision makingreasoningcognitive biasesrationalitydual-process theoryvery short introduction

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Evans, J. St. B. T. (2017). Thinking and Reasoning: A Very Short Introduction. Oxford University Press.

章の要約

本書はオックスフォード大学出版局の「Very Short Introductions」シリーズの一冊で、7つの章に付録、参考文献、短い推薦文献一覧が付く。目次からは、分野の歴史から出発し、問題解決と仮説的思考を経て、意思決定と推論へ進み、最後に人間は合理的かどうか、心がどのように組織されているのかを問う2つの章で終わる道筋が読み取れる。

第1章:Introduction and history(序論と歴史)

最初の章は思考研究の歴史を扱う。出版社の紹介文によれば、この主題はアリストテレスにさかのぼり、心理学が哲学から分かれた際に最初に研究された主題の一つだった。本書は行動主義者とゲシュタルト心理学者の取り組みを検討したうえで、現代の研究へ進む。

第2章:Problem solving(問題解決)

人が問題をどう解くかを扱う章である。出版社によれば、問題解決能力は想像力、すなわち適切な問いを立てる力と状況を全く新しい視点から見る力に大きく依存するという点が中心にある。

第3章:Thinking hypothetically(仮説的に考える)

可能性についての思考を扱う章である。出版社の紹介文は、仮説的思考と条件文を現代的な探究の主題に挙げており、この章は「もし〜ならば」という文や、可能な状況を考えることを検討する場だと位置づけられる。

第4章:Decision making(意思決定)

意思決定は独立した章として扱われる。出版社の紹介文は、本書が意思決定とあわせて、過去の学習、IQ、認知バイアスの役割も扱うと述べている。

第5章:Reasoning(推論)

紹介文にある演繹に対応する章で、与えられた情報から人がどのように結論を引き出すかを扱う。

第6章:Are we rational?(私たちは合理的か)

ここで本書は個々の課題から離れ、人間の思考を合理的と呼ぶことは何を意味するのかを問う。出版社は、人に推論や問題解決の能力を与えた進化的な思考過程が、同時に偏りや誤りへの弱さも生むことと結びつけている。

第7章:From dual processes to two minds(二重過程から二つの心へ)

最終章は、人間の進化の歴史から生じた二種類の思考様式があるかもしれないという、紹介文で示された考えを展開する。紹介文が現代的な主題の一つに挙げる直観とも結びつく。

付録、参考文献、推薦文献

付録は第7章の後に置かれ、参考文献と推薦文献の節で本書は閉じられる。概観から先へ進みたい読者の出発点になる。

主要概念

第1〜3章:歴史、問題解決、仮説的思考

  • 行動主義とゲシュタルトの立場:本書が思考研究の歴史を語り始める二つの初期の学派。
  • 問題解決と想像力:問題を解くには、適切な問いを立て、新しい視点を取れることが必要である。
  • 仮説的思考と条件文:可能な事態について考え、「もし〜ならば」の文を使って推論すること。

第4〜5章:意思決定と推論

  • 意思決定:人がどう選ぶかということで、過去の学習の役割とあわせて研究される。
  • 演繹:与えられた前提から必然的に導かれる結論を引き出すこと。
  • 認知バイアス:紹介文が進化した思考過程と結びつけている、良い推論からの体系的なずれ。

第6〜7章:合理性と二重過程

  • 合理性:人間の思考を何を基準に合理的と呼べるのかという問い。
  • 直観:紹介文が現代的な主題として挙げている、速く教えられていない判断。
  • 二つの思考様式:人間の思考には二種類の過程が関わるという提案で、最終章で展開される。

批判的分析

長所

  • 短く、順序立っている。 7つの章が約130ページ(索引は131ページから)に収まっているため、数回で読み通せる。順序は歴史、個別の課題、合理性という広い問いへと進む。
  • 専門家による執筆。 著者は認知心理学の名誉教授で、キャリアを通じて思考と推論を研究し、同名の学術誌(Thinking & Reasoning)の創設にも関わった。過去の著書に Hypothetical Thinking や Thinking Twice がある。終章の二つの心をめぐる議論はこの研究の流れに属する。
  • 分量のわりに広い範囲。 目次は問題解決、仮説的思考、意思決定、推論、合理性、二重過程を含み、意思決定のバイアスだけを扱う本よりも広い見取り図を与える。
  • 先への案内。 付録、参考文献、独立した推薦文献の節で終わる。

短所

  • 圧縮。 本文約120ページに7章では、どの主題も深くは展開できない。不確実性下の判断を詳しく学びたい読者には専門の教科書が必要になる。
  • 終盤は単一の立場。 最終章は二重過程の見方を本書の到達点として示す。有力な説明の一つとして扱い、他の資料と照らし合わせるべきである。
  • 演習は確認できない。 目次と紹介文には問題集や学習用の設問が見当たらず、体系的な練習の機会は多くない。

コースにおける位置づけ

判断・意思決定のコースでは、最も短く、最も広い入口である。より長い扱いの前に読む本で、Hastie と Dawes の Rational Choice in an Uncertain World は現実の判断を合理的な基準と比較する判断・意思決定の入門書であり、Baron の Thinking and Deciding は規範的・記述的・処方的モデルを軸に構成された包括的な教科書である。どちらも、ごく短い入門書より深く意思決定研究を扱う。

Kahneman の Thinking, Fast and Slow は二つの思考システムと認知バイアスを論じた著名な書物で、Evans の最終章はその導入として自然である。Bazerman と Moore の Judgment in Managerial Decision Making はヒューリスティクスとバイアスの研究を組織に応用し、Nudge は選択の設計を扱い、Gigerenzer、Todd、ABC Research Group の Simple Heuristics That Make Us Smart は「速く質素な」ヒューリスティクスを論じる研究書である。

本書の使い方

心理学、統計学、論理学の予備知識は前提としない。1年生、哲学や経済学の読者、判断・意思決定の授業の前に全体像をつかみたい人に向く。

実践的な進め方は次のとおり。

  • 通読する。 章は順に積み上がり、数回で読み終えられる長さである。
  • 意思決定の授業の核: 第4、6、7章。論理的推論との関係を見るなら第5章も。
  • 意思決定中心の読者には任意: 問題解決と仮説的思考の第2、3章。全体像は広がるが、意思決定研究の中心からはやや外れる。
  • その後: 推薦文献の節を手がかりにコースの長い本を選び、二重過程の考えを用いる本に取りかかるときは第7章に戻る。