01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hastie, R., & Dawes, R. M. (2010). Rational Choice in an Uncertain World: The Psychology of Judgment and Decision Making (2nd ed.). SAGE Publications.
章の要約
判断と意思決定についての14章(約374ページ)の教科書。SAGE は、合理性の基本原理と実際の行動を比較し、理論と研究成果を専門的になりすぎない形で、逸話を教育手段として提示する本で、上級の学部生と大学院生を対象にしていると説明している。第2版では、章の導入、結論、相互参照が加わり、金融、医学、法、工学の例が増え、規範的な期待効用的アプローチと並んで記述的な心理学モデルが重視された。以下の記述は、公表されている目次の節見出しに従う。
第1~2章:考えることと決めること;意思決定とは何か(Thinking and Deciding; What Is Decision Making?)
第1章は、意思決定が一つの技能であると論じ、自動的思考と統制的思考、心の計算モデル、精神分析理論と行動主義から認知への流れをたどり、選択の質(合理性)と近代的な決定理論の誕生で終わる。第2章は決定を定義し、決定を図示する方法を示し、不完全な思考の法的な例と、過剰包括的な思考としての埋没費用を用いたうえで、将来だけを考慮することの合理性を論じ、本書の残りを概観する。
第3章:判断の一般的枠組み(A General Framework for Judgment)
レンズモデルを通して判断と予測の概念的枠組みを紹介し、それを用いた研究を述べる。節は、判断の統計モデルによる把握、統計モデルがなぜ人間の判断に勝つか、線形モデルの驚くべき成功の実践的含意、反論と再反論を扱う。
第4~6章:係留と調整;ヒューリスティックによる判断;説明に基づく判断(Anchoring and Adjustment; Judging Heuristically; Explanation-Based Judgments)
第4章は係留と(不十分な)調整を扱い、自分自身への係留や過去を現在に係留することを含む。第5章は頻度と確率を推定するヒューリスティックを扱い、利用可能性(記憶と想像)、類似性による判断、代表性、比率規則を取り上げる。第6章は物語や説明に基づく判断に移り、連言錯誤、法的シナリオ、後知恵、自分自身や考えられないことについてのシナリオを論じる。
第7~8章:偶然と原因;不確実性について合理的に考える(Chance and Cause; Thinking Rationally About Uncertainty)
第7章は偶然についての誤解、コントロールの錯覚、ないところに因果構造を見ること、平均への回帰を扱う。第8章は誤りから対処へと向かう。確率で考えること、逆確率、劣加法性と連言の誤りの回避、選言、ベイズの定理、統計的決定理論である。
第9~10章:結果の評価:基本的選好;選好から選択へ(Evaluating Consequences: Fundamental Preferences; From Preferences to Choices)
第9章は幸福にどれだけの価値があるかを問い、評価における感情、お金の価値、決定効用、価値の構成を扱う。第10章は複雑な選択肢の中での熟慮的な選択、すなわち選択肢の順序づけ、グループ化、選択、そして良い選択の仕方を扱う。
第11~12章:合理的決定理論;記述的決定理論(A Rational Decision Theory; A Descriptive Decision Theory)
第11章は合理性を形式的に定義し、公理的方法と期待効用理論を説明し、公理への伝統的な反論と決定分析への批判を論じる。第12章は非期待効用理論、利得・損失のフレーミング効果、損失回避を示す。
第13~14章:次は何か?判断と意思決定研究の新しい方向;不確実性を讃えて(What's Next? New Directions in Research on Judgment and Decision Making; In Praise of Uncertainty)
第13章は意思決定の神経科学、意思決定における感情、動的な意思決定を研究する実験法の台頭を概観する。第14章は、不確実性が否定的なだけのものではないと論じ、それを否定する代償を述べ、不確実性とともに生きる方法を示して終わる。
主要概念
第1~8章
- レンズモデル:判断と利用可能な手がかりの関係を分析する枠組み。
- 線形モデルと人間の判断:統計モデルが助けなしの判断者をしばしば上回る。
- 係留と調整、利用可能性、代表性:判断のヒューリスティックとそのバイアス。
- 平均への回帰とコントロールの錯覚:偶然の読み違い。
- ベイズの定理:証拠に照らして考えを改める規則。
第9~14章
- 決定効用と構成される価値:選好がどう評価され形成されるか。
- 期待効用理論:合理的選択の公理的説明。
- 損失回避とフレーミング:記述的理論の中心的要素。
- 意思決定における神経科学と感情:第13章の新しい方向。
批判的分析
長所
- 合理的見方と記述的見方のバランス。 SAGE は、認知心理学的なヒューリスティック分析、記述的な判断モデル、合理的モデルのバランスを取った本と説明しており、目次も誤り(第4~7章)、対処(第8章)、合理的・記述的理論(第11~12章)に紙幅を割いている。
- 学生に優しい設計。 第2版は章の導入、結論、相互参照を加え、金融、医学、法、工学の例を用いる。
- 詳細な構成。 公表された目次はすべての章の節を挙げており、平均への回帰、後知恵、ベイズの定理といった話題を直接探せる。
- 評価の高い著者。 SAGE が引く評者(Robert Goldstone、William Goldstein)は、体系的な学識、広さ、文章の質を称賛している。
短所
- 入門としては長い。 14章で約374ページあり、短い入門書ではなく本格的な授業用テキストである。
- 後半に形式的な理論がある。 第8章と第11章は確率、ベイズの定理、公理的方法を扱い、SAGE は専門的でないと述べるものの、技術的な議論を追う意欲が要る。
- 版の時点に制約される。 2010年版なので、新しい方向の章はそれまでの研究を反映しており、神経科学や感情の話題はその後さらに発展している。
コースにおける位置づけ
判断と意思決定の本の中で、最も体系的な最初の教科書であり、短い入門書と専門書の中間に位置する。Evans の Thinking and Reasoning: A Very Short Introduction はコンパクトな概観で、予備的な読み物として適する。Kahneman の Thinking, Fast and Slow と Thaler・Sunstein の Nudge は、ヒューリスティック、バイアス、選択の設計を一般読者向けに扱う一般書である。Bazerman と Moore の Judgment in Managerial Decision Making は、ヒューリスティックとバイアスの伝統を組織内の意思決定に適用した短い教科書である。
Baron の Thinking and Deciding は規範的・記述的・処方的モデルに基づく包括的な教科書で、Hastie と Dawes のあと、または並行して読む自然な次の一歩となる。Gigerenzer、Todd、ABC Research Group の Simple Heuristics That Make Us Smart は単純なヒューリスティックの正確さを論じる研究書で、本書の誤りに重点を置いた章への対案になる。
本書の使い方
SAGE は上級の学部生と大学院生を対象としている。第8章に「確率で考えることから始める」節があることから、確率は前提とされず本文で導入されると考えられる。
実践的な進め方としては、第1~2章で枠組みをつかみ、誤りとヒューリスティックの中核として第3~7章を読む。第8章は確率の例を実際に解きながらゆっくり読み、そのあと選好と形式的・記述的決定理論を扱う第9~12章に進む。第13章と14章は展望として最後に読める。短い授業なら第10~11章の一部は省ける。章末の結論と相互参照を使って考えを見直し、ヒューリスティックの説明を Kahneman のような一次的なテキストと比べるとよい。
