01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Reidy, J., & Dancey, C. P. (2024). Statistics without Maths for Psychology (9th ed.). Pearson.
章の要約
第9版は2024年11月にPearsonから刊行され、16章・約516ページから成り、本書の演習とSPSS課題の解答、2つの統計表が続く。出版社は本書のアプローチを、心理学の学生が必要とする統計の主要な概念を、学生を怖じ気づかせがちな数式なしで説明し、各分析をSPSSで実行する手順を案内するものだと説明しており、全体を通じて例、演習、問いが盛り込まれている。各章は自然に3つの段階に分かれる。基礎(第1〜5章)、中核となる検定(第6〜12章)、より高度な手法への入門(第13〜16章)である。
第1〜2章:変数と研究デザイン;SPSS入門
本書は、以降のあらゆる検定の選択の前提となる変数と研究デザインの用語から始め、続いて全体を通じて使われるソフトウェアであるSPSSを紹介する。
第3〜5章:記述統計;確率、標本抽出、分布;仮説検定と統計的有意性
これらの章は推測の概念的な土台を築く。データの要約、確率・標本抽出・分布の考え方、そして仮説検定と統計的有意性の論理である。
第6〜7章:相関分析:ピアソンのr;2条件間の差の分析:t検定
最初の2つの推測統計の検定である。2変数間の関係を見る相関と、2つの条件を比較するt検定。
第8章:有意性をめぐる問題
最初の検定の後に置かれたこの章は、読者が有意性検定を実際に使ってみた段階で統計的有意性に立ち返り、その使い方と解釈をめぐる問題を検討する。
第9章:関連の指標
変数間の関連の指標を扱う章で、本書はこれを第6章のピアソンの相関とは別に扱っている。
第10〜11章:3つ以上の条件間の差の分析;複数の独立変数をもつ分散分析
分散分析を、まず3つ以上の条件をもつ1つの独立変数について、次に複数の独立変数をもつデザインについて扱う。
第12章:回帰分析
ある変数を他の変数から予測する方法としての回帰で、第6章の相関の考え方を発展させる。
第13〜15章:共変量の効果を取り除いた3群以上の分析;因子分析入門;多変量分散分析(MANOVA)入門
標準的な検定を超える手法への3つの入門である。共変量の効果を取り除いたうえでの群間比較、因子分析、そしてMANOVA。後の2つは章題でも入門と銘打たれている。
第16章:ノンパラメトリック統計
最終章は、それまでに扱ったパラメトリック検定の前提を満たさないデータのためのノンパラメトリックな代替手法を示す。
主要概念
基礎(第1〜5章)
- 変数と研究デザイン:どの分析が適切かを決める、変数とデザインの種類。
- 記述統計:検定の前に一組のデータを要約し記述すること。
- 標本抽出と分布:標本と母集団の関係。推測の基礎となる。
- 仮説検定と有意性:観察された効果が偶然によって生じた可能性が高いかどうかを判断すること。
中核となる検定(第6〜12章)
- ピアソンのr:2変数間の直線的な関係の強さと方向の指標。
- t検定:2つの条件間の差の検定。
- 分散分析(ANOVA):3つ以上の条件の比較、および複数の独立変数をもつデザインの分析。
- 回帰:1つ以上の予測変数から結果変数を予測すること。
さらなる手法(第13〜16章)
- 共変量:群を比較する際にその効果が取り除かれる変数。
- 因子分析:多数の変数間の相関を説明する、背後にある因子を見いだすこと。
- MANOVA:複数の従属変数をもつ分散分析。
- ノンパラメトリック検定:データの分布についての仮定がより少ない代替手法。
批判的分析
長所
- 計算より概念が先。 出版社が本書について掲げる中心的な主張は、恐ろしげな数式なしで統計の概念を説明することである。推論ではなく数学でつまずく学生にとって、これは検定が何をするのか、いつ使うのかを理解するうえでの最大の障壁を取り除いてくれる。
- 全体を通じたソフトウェアの統合。 SPSSはどの分析よりも前の第2章で導入され、巻末には解答つきのSPSS課題がある。出版社によれば、コンパニオン・ウェブサイトでは所属機関でjamoviを使う学生のためにjamoviでの手順を示す動画が提供され、電子教科書版ではSPSSの手順動画と章末の多肢選択式クイズが加わる。
- 妥当な順序。 有意性には2つの章が充てられている。第5章でその論理を、そして読者が相関とt検定を使った後に有意性をめぐる問題についての独立した章(第8章)を置く。ノンパラメトリック検定は散らばらせず、最後の1章にまとめられている。
- 練習が組み込まれている。 出版社は本書を例、演習、問いが豊富に盛り込まれたものと説明しており、演習とSPSS課題の解答が本書に掲載されているため、独習にも使える。
短所
- 数学なしの概念理解には限界がある。 このアプローチは最初の講義には適しているが、高度な手法に進む学生は、本書が意図的に省いている形式的な扱いをいずれ必要とする。
- 高度な手法は入門にとどまる。 因子分析とMANOVAは入門として示されており、マルチレベルモデルやベイズ分析といったテーマは目次に現れない。
- SPSSに依存している。 例示される分析はSPSSを使っている。jamoviの利用者にはコンパニオン動画があるが、Rなど他のソフトウェアの利用者は手順を自分で読み替える必要がある。
コースにおける位置づけ
研究法と統計のコースにおいて、本書は穏やかな統計学の教科書であり、研究法の本と自然に組み合わさる。Rajiv Jhangianiらの Research Methods in Psychology(無料のオープン教科書)やBeth Morlingの Research Methods in Psychology は研究がどのように設計され評価されるかを扱う。本書の第1章は検定を選ぶのに必要な範囲でしか研究デザインをまとめていないので、研究法の教科書を並行して読めばその隙間が埋まる。
Andy Fieldの Discovering Statistics Using IBM SPSS Statistics は、SPSSを使って同様の統計的内容を扱うが、ロジスティック回帰やマルチレベルモデルにまで及ぶ章をもち、さらに先へ進む。まず本書で検定を学び、その後Fieldの同じ検定の章を読んで理解を深めるのが賢明な順序である。Scott Maxwell、Harold Delaney、Ken Kelleyの Designing Experiments and Analyzing Data は、分散分析をモデル比較を通して扱う大学院向けの教科書であり、研究の道に進む学生にとって第10〜11章と第13章の後の自然な次の一歩である。Richard McElreathの Statistical Rethinking はRとStanによるベイズ・モデリングを教えるもので、本書の有意性検定の枠組みとはまったく異なるアプローチであり、標準的な検定を確実に身につけてから読むのがよい。
本書の使い方
統計学の予備知識は前提とされない。基本的な算数と心理学の研究課題への馴染みがあれば十分である。本書は心理学の1〜2年次の学部生、標準的な分析を実行し理解する必要がある隣接分野の学生、そして数式の多い本に挫折して統計学に再挑戦する人に向いている。
実践的な計画:
- 基礎(1年次): SPSSについての第2章を含め、第1〜5章を順に読む。第5章は飛ばしてはならない。以降のすべての検定がその論理に依拠している。
- 中核となる検定: 第6〜7章を読み、先へ進む前に有意性をめぐる問題についての第8章を読む。第9〜12章は講義で教える順に読めばよい。
- さらなる手法(上級年次、またはプロジェクトのため): 卒業研究のデザインに応じて第13〜15章を、データがパラメトリック検定の前提を満たさないときにはいつでも第16章を読む。
SPSSを開いた状態で取り組むとよい。例として示された分析を自分で再現し、巻末の解答を確認する前にSPSS課題に取り組む。各検定について、いつ使うのか(デザイン、変数の種類、条件の数)を1行のメモにまとめておくと、第12章を終えるころには分析を選ぶための判断ガイドになる。講義でjamoviを使う場合は、コンパニオン・サイトの動画を使ってSPSSの各手順をjamoviに対応させるとよい。やはり数式が知りたくなった学生は、概念がはっきりした段階で、より数学的な教科書の対応する章にあたればよい。
