01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Maddux, J. E., & Winstead, B. A. (Eds.). (2025). Psychopathology: Foundations for a Contemporary Understanding (6th ed.). Routledge.
章の要約
第6版は約730ページの編著で、3部23章からなる。各章はその領域の専門家が執筆しており、出版社によれば、理論、研究、臨床実践に関する最新の情報を提供し、最新のDSM-5-TR改訂と世界保健機関の国際疾病分類を取り入れている。第I部は精神病理をどう考えるかを扱い、第II部と第III部は、それぞれ児童期・青年期と成人期の具体的な問題を扱う。
第I部:精神病理について考える(第1〜7章)
冒頭の部は本書の概念的な中核であり、出版社が強調する批判的思考が最もよく表れている。第1章:精神病理の概念――社会構成主義の視点(Maddux、Winstead、Gosselin)は、精神病理がどのように概念化されるかを示す。第2章:精神病理――神経生物学的視点と第3章:精神病理への発達的視点は、二つの見方を加える。第4章:精神病理への文化的視点(Junko Tanaka-Matsumi)と第5章:ジェンダー、人種、民族、階層と精神病理における役割(WinsteadとJanis Sanchez-Hucles)は、文化と社会的位置を持ち込む。第6章:分類と診断――歴史的発展と現代の課題(Thomas WidigerとAlexandra Hines)は診断体系を扱い、第7章:心理アセスメントと臨床判断(Howard Garb、Eric Youngstrom、James Wood、Scott Lilienfeld)はアセスメントと臨床家が下す判断に移る。
第II部:児童期・青年期によくみられる問題(第8〜13章)
6つの章が若い人々の具体的な問題を取り上げる。児童期・青年期の学習障害(第8章)、自閉スペクトラム症(第9章)、児童期・青年期の外在化障害(第10章)、児童期・青年期の内在化障害(第11章)、摂食障害(第12章)、性別違和とジェンダーの不一致(第13章)である。
第III部:成人期によくみられる問題(第14〜23章)
10の章が成人の障害の主要なカテゴリーに沿って進む。不安症と強迫症および関連症(第14章)、心的外傷およびストレス因関連障害(第15章)、抑うつ障害と双極性障害および関連障害(第16章)、統合失調症スペクトラム障害およびその他の精神病性障害(第17章)、パーソナリティ障害(第18章)、性機能不全と性嗜好障害(第19章)、身体症状症および関連症(第20章)、解離症(第21章)、物質関連障害および嗜癖性障害(第22章)、メンタルヘルスと加齢(第23章)。章題の多くはDSM-5-TRのカテゴリー名と重なり、最終章は障害別ではなくライフステージの視点をとる。
主要概念
- 社会構成主義の視点:精神病理がどう概念化されるかについての第1章の枠組み。
- 神経生物学的視点と発達的視点:第2・3章の見方。
- 文化、ジェンダー、人種、民族、階層:第4・5章で扱う社会的要因。
- 分類と診断:第6章の歴史的発展と現代の課題。
- アセスメントと臨床判断:第7章の主題。
- 外在化障害と内在化障害:第10・11章での児童期の問題の二つの分類。
- 心的外傷・ストレス因関連、抑うつ、精神病性、パーソナリティ、物質関連の各障害:第III部の主な成人のカテゴリー。
- メンタルヘルスと加齢:第23章のライフステージの視点。
批判的分析
長所
- 批判的思考が組み込まれている。 出版社は、文化、人種、ジェンダー、階層、臨床判断、意思決定、従来のカテゴリー的アプローチに代わる見方についての章があり、批判的思考を重視する点が本書の特色だと述べている。第I部は、個々の障害を記述する前に、7章をこうした問いにあてている。
- 専門家による執筆。 目次には各章の専門家が挙がっており、たとえば分類とパーソナリティ障害はWidiger、アセスメントはGarb、Youngstrom、Wood、Lilienfeld、解離症はLynnらである。出版社のページの評者は、本版を簡潔で補足しやすく、学生を圧倒しないものと評している。
- 診断面の内容が新しい。 本版は最新のDSM-5-TR改訂とWHOの国際疾病分類を取り入れており、Edelsteinの推薦文は高齢者と現行のICD・DSMへの配慮を特に挙げている。
- 継続性。 出版社のページが引く以前の版の評者は、各章が似た形式をとっていて学生にも教員にも役立つと述べており、Edelsteinの推薦文は第6版がほぼすべての以前の専門家による章を引き継いでいると述べている。
短所
- 編著であること。 各章は異なる執筆チームによるので、詳しさや文体は章ごとに異なる。
- 障害の取捨。 23章はDSMの主要カテゴリーと重なるが、目次には睡眠・覚醒障害や神経認知障害を扱う独立した章がない。これらの領域が必要な読者は他の資料を要する。
- 大学院向け。 出版社は本書を、臨床心理学・カウンセリング心理学やソーシャルワークなど関連分野の大学院生の定番テキストとして示している。初学者には学部の異常心理学の教科書より負担が大きい。
コースにおける位置づけ
異常心理学・臨床心理学の書目の中で、本書は批判的な視点をもつ大学院レベルの障害論の教科書である。ロナルド・コマーとジョナサン・コマーの Psychopathology: Science and Practice はその学部向けの対応書で、主要な障害カテゴリー、モデル、治療のエビデンスを概観しており、初学者の最初の一冊に向く。Pomerantzの Clinical Psychology: Science, Practice, and Diversity、LlewelynとAafjes-van Doornの Clinical Psychology: A Very Short Introduction、バーンズの Psychiatry: A Very Short Introduction は、精神病理の知識が応用される職業と分野を描く。
バーロウの Clinical Handbook of Psychological Disorders は事例に沿ってアセスメントと介入をたどる治療マニュアルで、治療だけでなく理解と病因に重点を置くMadduxとWinsteadと併せて読むとよい。第I部の概念的な論争と、主要な障害ごとの専門家による章がほしいときにMadduxとWinsteadを使う。
本書の使い方
臨床心理学・カウンセリング心理学とその関連分野の大学院生、参考書を必要とする実践家や研究者に向く。学部レベルの異常心理学または臨床心理学と研究法の既習が前提である。
読み方の例は次のとおり。
- **第I部から始める。**特に第1・6・7章。障害がどう概念化・分類・評価されるかの枠組みを与え、後の章を評価しやすくする。
- **その後は授業に合わせる。**児童・青年に関わるなら第II部、成人の障害が必要なら第III部の該当章を読む。
- 第4・5章をどの障害の章にも並べて読み、文化、ジェンダー、人種、階層が全体像をどう変えるかを考える。
- **ライフステージの視点がほしければ、**第23章「メンタルヘルスと加齢」で締めくくる。
- 各章を完結したレビューとして読み、診断に関する章は現行のDSM-5-TRやICDと照らし合わせる。
