01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Taylor, S., & Workman, L. (2021). Cognitive Psychology: The Basics. Routledge.
章の要約
本書は全9章、約306ページで、白黒の図版が58点入っている。出版社は、認知心理学の中心的な話題をコンパクトに紹介する入門書だと説明している。扱うのは、日常的な心の現象の背後にある科学、実験室での研究と応用研究、そして認知における脳の役割の理解を進める技術の発展である。さらに、全体を通じて現実の例が使われ、著者は親しみやすく学生向けの書き方をしているという。目次は一目で見渡せる長さで、基礎、従来の主要テーマ、より広い展望の章という順に並ぶ。
第1章:What is Cognitive Psychology?(認知心理学とは何か)
冒頭の章は分野を定義し、最初の見取り図を与える。本書の残りが取り組む問いを知るのに適した章である。
第2章:Relationship between Brain Structure, Function and Cognitive Modelling(脳の構造・機能と認知モデリングの関係)
テーマ別の章に先立ち、この章は脳の構造と機能を認知モデリングに結びつける。出版社は神経科学と計算論的認知科学を本書が扱う関連分野として挙げており、その背景をここで整える。
第3章:Attention and Perception(注意と知覚)
従来の主要テーマの最初。注意と知覚が一章にまとめられており、出版社が「注意と知覚」をこの分野の中心領域の一つとして挙げていることと合致する。
第4章:Memory and Learning(記憶と学習)
記憶と学習が一章を共有し、記憶が先、学習が後に置かれている。出版社が挙げる従来の主要テーマとしては、注意と知覚に続く二番目にあたる。
第5章:Thinking: Decision-Making and Problem-Solving(思考:意思決定と問題解決)
この章は思考を意思決定と問題解決として扱い、紹介文にある「思考、問題解決、意思決定」の流れに対応する。
第6章:Language and Communication(言語とコミュニケーション)
第6章は言語とコミュニケーションを扱い、出版社が挙げる従来の主要テーマが揃う。
第7章:Consciousness and Metacognition(意識とメタ認知)
ここから本書は中心的な項目の外へ進み、意識とメタ認知、つまり心への気づきと「考えることについて考えること」を扱う。
第8章:Cognitive Neuropsychology(認知神経心理学)
第8章は認知神経心理学にあてられている。第2章と合わせて、短い入門書としては脳に大きな位置が与えられている。
第9章:Future Directions of Cognitive Psychology(認知心理学の今後の方向)
最後の章は将来を見据える。出版社によれば、今後の研究の方向についての議論に先立ち、進化心理学の貢献を含む新しい視点も検討される。
主要概念
第1〜2章:基礎
- 認知心理学:第1章で定義される対象分野。
- 脳の構造と機能:解剖と心的な働きとの関係。第2章で扱う。
- 認知モデリング:心的過程のモデル化。第2章の題名に含まれる。
第3〜6章:中心的な話題
- 注意と知覚:第3章。
- 記憶と学習:第4章。
- 意思決定と問題解決:第5章。
- 言語とコミュニケーション:第6章。
第7〜9章:発展的な話題
- 意識とメタ認知:第7章。
- 認知神経心理学:第8章。
- 今後の方向:第9章。出版社によれば進化心理学の貢献も含まれる。
批判的分析
長所
- コンパクトで一章一テーマ。 約306ページ・9章なので最初の通読に手ごろで、章題は認知心理学の科目が通常扱う話題にそのまま対応している。
- 脳とモデルを冒頭に。 脳の構造・機能と認知モデリングの関係を第2章に置くため、以降の話題をその背景を踏まえて読める。第8章では認知神経心理学を通じて再び脳に戻る。
- 標準的な項目を超える幅。 目次と出版社の紹介によれば、意識とメタ認知、進化的視点、今後の方向も含まれ、記憶や知覚をたどるだけの案内より広い。
- 初学者向け。 出版社は、本書が親しみやすく学生向けで、全体に現実の例を用い、認知心理学とその関連分野の学生、関心のある一般読者に向くと述べている。
短所
- 意図的に短い。 9章・約306ページでは、各領域は紹介にとどまり、詳しい理論の評価や研究文献には届かない。深く学ぶには本格的な教科書が必要になる。
- 学習用の仕掛けは明記されていない。 出版社の紹介文には復習問題、重要語句集、学生向けのオンライン資料への言及がない。そうした機能を頼りにする読者は、実物を確かめるか、備えのあるテキストと併用するとよい。
- 全体を網羅する構成ではない。 目次には認知と情動、日常記憶の章がなく、これらはこのコースのもう一つの初級書が独立した章として扱う話題である。認知発達を別に扱う章も目次からはうかがえない。
コースにおける位置づけ
このコースにある二冊の初級書の一つで、もう一冊は Eysenck と Brysbaert の Fundamentals of Cognition である。Taylor と Workman の本は9章と短く、手早い最初の見取り図や復習に向く。Fundamentals of Cognition は11章・600ページ超で、教科書としての網羅性と学習支援が必要な科目に向く。
深めるなら、Reisberg の Cognition: Exploring the Science of the Mind は中程度の分量の学部向け教科書であり、Eysenck と Keane の Cognitive Psychology: A Student's Handbook は研究文献を非常に詳しく扱う総合的なテキストである。認知神経科学は Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind でさらに進められ、大学院レベルの Bayesian Models of Cognition は第2章で触れられるモデリングの話題を発展させる。これらに進む前の出発点として適している。
本書の使い方
心理学を学び始めた学生、関連分野の学生、脳が思考をどう支えるのかに関心のある一般読者に向く。心理学の予備知識は前提とされない。
読み方の例を挙げる。
- まず第1・2章を読む。 分野を定義し、後で使う脳とモデリングの背景を整える章である。
- 第3〜6章を中核とする。 注意と知覚、記憶と学習、思考、言語を扱う。順に読んでも、講義の週に合わせてもよい。
- 第7〜9章は発展として扱う。 意識とメタ認知、認知神経心理学、今後の方向は、二巡目、あるいはこれらを含む科目に向く。
- 読みながら: 中核の各章について、顔の認識や意思決定のような身近な例を一つ選び、その章の考え方で説明してみる。そのうえで、各話題の背後にある研究を、より詳しい教科書で確かめる。
