01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Danziger, K. (1994). Constructing the Subject: Historical Origins of Psychological Research. Cambridge University Press. (Original work published 1990)
章の要約
Danzigerの本は概説書ではなく研究書である。本文約200ページ、全11章で、その後に短い付録、注、索引が続き、Cambridge Studies in the History of Psychologyのシリーズに属する。1990年に刊行され、1994年にペーパーバック版が出た。出版社の紹介は中心的な主張を示している。方法論は単なる技術の問題ではなく一種の社会的実践であり、したがって心理学研究の歴史は、理論や発見の歴史ではなく、研究場面の社会関係(実験者と被験者の間、研究者同士の間)の歴史である。叙述は19世紀から、20世紀の第2四半世紀に好まれる研究スタイルが現れるまでを扱う。
第1章:Introduction(序論)
序論は、科学の歴史を書く二つの方法を対比する。一つは内部の視点から、より良い現在へ向かう漸進的な進歩として描くもので、称賛的な調子になりやすい。もう一つは科学史・科学哲学・科学社会学の立場からのもので、より批判的である。心理学史は主に心理学者自身の手に委ねられてきたため、前者が続いてきた。Danzigerは、分野をどう組織するか(著名な人物、発見、理論のいずれを軸にするか)がその歴史の語り方を決めると説明し、本書では分野の研究実践を主題とする。
第2章:Historical roots of the psychological laboratory(心理学実験室の歴史的起源)
1879年のWundtによるライプツィヒの実験室の創設を、慣例的で恣意的な出発点として取り上げる。心理学は概念を哲学と生理学から借り、方法を既存の実践から転用したので、初期の研究者は自分たちが知る伝統に制約されていた。本章は、実験室が被験者と実験者の分業を制度化したことにも触れる。
第3章:Divergence of investigative practice: The repudiation of Wundt(研究実践の分岐:Wundtの否定)
現代心理学で起きたほとんどすべてのことは、明示的または暗黙のうちにWundtの否定であったと論じる。内観と実験についての彼の考えは学生たちのそれと分かれ、彼が動員した実践は彼の手を離れた。この分岐から、いくつかの異なるタイプの研究実践が生まれた。
第4章:The social structure of psychological experimentation(心理学実験の社会構造)
ライプツィヒの研究共同体がどのように組織されたか、被験者と実験者の分業がいかに実験という特有の社会システムを作り出し、そこでの相互作用がそれぞれの担う役割によって規制されたかを述べる。
第5章:The triumph of the aggregate(集計の勝利)
局所的な研究が公共の知識になる経路としての心理学雑誌と、知識の主張をするために著者が従わなければならない慣習を取り上げる。それらの主張は研究対象者についての帰属を伴う。現代心理学を始めたいくつかのタイプの実践のうち、一つは最初の数十年でほとんど生き残らず、ゴルトン型が20世紀前半に支配的な地位を得た。
第6章:Identifying the subject in psychological research(心理学研究における被験者の特定)
知識の主張が対象に付与する帰属を踏まえ、被験者が個人の意識なのか集団なのかの違いを論じる。アメリカの研究における人為的に定義された集合的被験者、すなわち「基礎」研究の抽象的な集団が社会的に定義された集団に取って代わり、白ネズミが人間集団の代役を務めうるようになったことを扱う。
第7章:Marketable methods(売れる方法)
心理学が学界の外でその製品を売り込み始めた経緯を示す。教育が主な市場であった。心理学を社会的に有用にするうえで重要だった二つの技法、すなわちゴルトン型の個人差へのアプローチと、処遇群の実験的使用が分析される。
第8章:Investigative practice as a professional project(専門職化の企てとしての研究実践)
1920年代までにWundt流のスタイルはアメリカ心理学で衰退しつつある研究プログラムに見え、ゴルトン型のプログラムは学問外の市場との結びつきに助けられて成長したと論じる。Danzigerは、この分野が受動的に適応したのではなく、事業の威信を守るように自らの実践を形づくったと強調する。
第9章:From quantification to methodolatry(数量化から方法崇拝へ)
20世紀の心理学が数に頼る様子を検討する。心理的属性に数えられる形が与えられて初めて、集団データに基づく統計的構成物が作れる。ゴルトンとG. Stanley Hallによる初期の数量化にも触れる。
第10章:Investigating persons(人を調べる)
心理テスト・モデルの拡張をたどる。個人差は競争的な基準との比較として定義され、それが教育機関の必要に適合した。また、第一次世界大戦でのアメリカ陸軍による知能検査の、教育以外での初の大規模な利用があり、陸軍はそれをさほど有用と見なさなかったようである。
第11章:The social construction of psychological knowledge(心理学的知識の社会的構成)
それまでの章の背景にある研究過程のモデルを明示し、研究実践を生産的な労働過程(「知識生産の政治経済学」)として捉え、知識の社会的構成が、それが生み出された状況を超えた妥当性を制限するかどうかを問う。
付録
前の章のいくつかの表の元になった、経験的な雑誌論文の内容分析。1895年、1910年、1925年、1935年前後の心理学雑誌の巻をまとめて傾向を追っており、全期間をカバーするのはAmerican Journal of Psychologyだけである。
主要概念
第1–4章:実験室とその社会秩序
- 研究実践:研究者が知識を生み出す組織化された方法。本書の歴史叙述の単位。
- 被験者と実験者の関係:独自の役割と規則をもつ社会システム。ライプツィヒの実験室で制度化された。
- Wundtの否定:内観と実験についての創始者自身の限定からの実践の分岐。
第5–8章:集計、被験者、市場
- 知識の主張:研究結果の公的な形。雑誌の慣習によって形づくられる。
- 集合的被験者と集計:個人の意識に代わって集団が研究対象になること。
- ゴルトン型プログラム:個人差と処遇群。外部の市場と結びついていた。
- 専門職化の企て:この分野が自らの方法を能動的に形づくること。
第9–11章:数と知識
- 方法崇拝(methodolatry):第9章の題に用いられる語で、数量化から方法への絶対的な傾倒への移行を指す。
- 心理テスト・モデル:競争的な基準に照らして個人差を測ること。
- 知識の社会的構成:研究結果が特定の社会歴史的状況の中で生まれること、およびそれがその状況を超えてどこまで通用するかという問い。
批判的分析
長所
- 明快な組織原理。 方法を社会的実践と捉えることで、ライプツィヒの実験室から20世紀の集計と統計の規範まで、一つの論旨が貫かれ、章の配列もそれに従っている。
- 専門家からの評価。 出版社は、Isis(新しい世代の心理学史の「最良のものの一つ」であり、「心理学史家には必読」とする)、American Scientist(1929年のBoringの History of Experimental Psychology 以来、心理学内部の歴史研究で最も目覚ましい成果とする)、Contemporary Psychology(研究実践の「鋭く説得力のある考古学」と称賛)を引用している。
- 雑誌そのものからの証拠。 付録は四つの時点の心理学雑誌の論文の内容分析を説明しており、第4、5、6、8章の表がその結果を示している。そのため議論は逸話以上のものに支えられている。
- 現在の方法論教育との関連。 被験者、集計、有意性検定、心理テストは研究法の授業で日常的に使われる道具であり、本書はそれらがどのように標準になったかを説明している。
短所
- 時代と地域。 出版社によれば叙述は20世紀の第2四半世紀で終わり、社会的文脈の例示にはアメリカとドイツの展開が用いられるため、認知心理学のようなその後の発展は含まれない。
- 専門的で論争的。 主張をもつ研究書であり、読者が分野の標準的な歴史を既に知っていることを前提としている。中立的な概観を求める読者は、まず通史から入るべきである。
- 刊行年が古い。 本書は1990年の刊行であり、それ以後の研究は含まれない。
- 社会構成主義。 第11章自身が、知識の社会的構成がその射程に影響するかどうかを問うており、読者は本書の答えを自分で検討したくなるだろう。
コースにおける位置づけ
このコースの書籍リストの中では、一つの主題を扱う上級の研究書である。WertheimerとPuenteの A Brief History of Psychology は簡潔な最初の教科書で、FancherとRutherfordの Pioneers of Psychology は人物の生涯を通して歴史を語る。SchultzとSchultzの A History of Modern Psychology は学派を軸にした簡潔な叙述である。Leaheyの A Critical History of Psychology は、心理学の内部の議論を、それを形づくった社会的・経済的・政治的な力と並べて扱っており、Danzigerの関心に最も近い。Freudの The Interpretation of Dreams は歴史書ではなく一次文献である。
通常の順序は、まず通史、その後にDanzigerである。学派や人物の順序を知っている読者は、Danzigerの中に、実験、被験者、統計が心理学者の仕事の仕方になった過程の説明を見いだすだろう。
本書の使い方
心理学史の概論を履修し、基本的な実験法と統計法に触れたことのある上級の学部生や大学院生に向いている。研究法や心理学の哲学の授業の補助書としても適している。
実際的な読み方は次のとおり。
- 中核: 論証の枠組みと理論的立場を示す第1章と第11章、続いて第2–5章。
- 次に: 第6–8章。被験者、市場、専門職を扱い、現代の心理学研究を理解するうえで最も関連の深い部分である。
- 任意: 第9–10章(数量化と心理テスト)。雑誌分析のやり方に関心のある読者は付録も。
- 併読: 登場する人物や学派に馴染むよう、心理学の通史と一緒に読む。また現在の研究法の教科書とも併読し、各手続きがどこから来たかを問う。
