01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Schultz, D. P., & Schultz, S. E. (2015). A History of Modern Psychology (11th ed.). Cengage Learning.
章の要約
本書は15章からなり、用語集、参考文献、人名索引・事項索引が付き、全体で448ページである。出版社の説明によれば、近代心理学の扱いは19世紀後半から始まり、方法は伝記的である。影響力のある理論家についての情報や、その人生の出来事が考え方、アプローチ、方法にどう影響したかを用いて叙述する。章題から分かる構成原理は、学派が順に続くことであり、各学派はその前史から導入される。
第1章:The Study of the History of Psychology(心理学史の研究)
章題は、心理学の歴史がどのように研究されるかを扱う章であることを示しており、本編の叙述に先立って置かれている。
第2–3章:Philosophical Influences on Psychology(心理学への哲学的影響)/Physiological Influences on Psychology(心理学への生理学的影響)
学問の前史を扱う2章で、一方は哲学、他方は生理学に基づく。いずれも個々の学派が現れる前に置かれているため、本書の物語は心理学が何から生まれたかという点から始まる。
第4–5章:The New Psychology(新しい心理学)/Structuralism(構成主義)
第4章の題は「新しい心理学」、第5章は目次に最初に現れる学派である「構成主義」である。出版社は、近代心理学の扱いが19世紀後半から始まると述べており、この2章はそこに位置する。
第6–8章:Functionalism: Antecedent Influences(機能主義:先行する影響)/Functionalism: Development and Founding(機能主義:発展と創始)/Applied Psychology: The Legacy of Functionalism(応用心理学:機能主義の遺産)
機能主義には3章が充てられている。その前史、発展と創始、そしてそこから生まれた応用心理学である。
第9–11章:Behaviorism: Antecedent Influences(行動主義:先行する影響)/Behaviorism: The Beginnings(行動主義:始まり)/Behaviorism: After the Founding(行動主義:創始以後)
行動主義にも3章があり、その前史、始まり、創始後の展開をたどる。
第12章:Gestalt Psychology(ゲシュタルト心理学)
ゲシュタルト心理学に1章が充てられている。
第13–14章:Psychoanalysis: The Beginnings(精神分析:始まり)/Psychoanalysis: After the Founding(精神分析:創始以後)
精神分析を扱う2章で、前者はその始まり、後者は創始以後の展開を扱う。出版社による第11版の更新点の一覧には、フロイトの肛門性格の復活が挙げられている。
第15章:Continuing Developments in Psychology(心理学の継続的な展開)
最終章は「心理学の継続的な展開」という題で、叙述を現在に近づける。出版社は第11版の更新点として、ポジティブ心理学の最新の展開と、心理学における脳科学の役割の拡大を挙げているが、どの章に含まれるかは述べていない。
主要概念
第1–3章:基礎
- 心理学史を研究すること:冒頭の章で提起される方法と目的に関する問い。
- 哲学的影響:本書が心理学の前史とみなす哲学上の思想。
- 生理学的影響:本書が心理学の前史とみなす生理学上の知見。
第4–8章:新しい心理学から機能主義まで
- 新しい心理学:近代心理学の19世紀後半における始まり。
- 構成主義:本書で最初に扱われる学派。
- 機能主義:前史から創始までたどられる学派。
- 応用心理学:機能主義の遺産として提示される。
第9–15章:行動主義、ゲシュタルト、精神分析、その後
- 行動主義:前史、始まり、その後の展開の3章でたどられる。
- ゲシュタルト心理学:独立した1章をもつ学派。
- 精神分析:その始まりと後の展開を通して扱われる。
- ポジティブ心理学と脳科学:出版社が更新された内容として挙げる領域。
批判的分析
長所
- 明快な構成原理。 目次は、前史、創始、その後の展開という同じ型を繰り返す。このため見通しがよく、どの学派から読み始めても、その前史と後日談が隣接する章に見つかる。
- 出版社が明示する人物中心の方法。 著者らは、理論家についての伝記的情報を与え、その人生の出来事が考え方、アプローチ、方法にどう影響したかを示すことで、歴史を身近なものにすると述べている。制度史を抽象的に感じる学生にとって有用な入口となる。
- 学問の二つの根への配慮。 哲学的影響と生理学的影響にそれぞれ1章が充てられ、どの学派も登場する前に両方の根が同等に扱われる。
- 扱いやすい長さ。 448ページ、15章という規模なので、1学期のあいだ週に約1章のペースで進められる。
短所
- 扱う範囲の始まりが遅い。 出版社自身の説明によれば叙述は19世紀後半に始まるので、それ以前の歴史は第2・3章の前史としてしか登場しない。古代からの長い歴史を求める読者は別の本が必要である。
- 学派ごとの枠組み。 目次には行動主義、機能主義、ゲシュタルト心理学、精神分析が名前で挙がるが、認知心理学、社会心理学、発達心理学、臨床心理学には独立した章がない。これらを扱える余地を題から読み取れるのは第8章と第15章だけなので、20世紀後半は初期の学派より簡潔な扱いになると考えておくべきである。
- 版が古い。 第11版は2015年の刊行であり、それ以後の展開は含まれない。
コースにおける位置づけ
このリストには心理学史の本が複数あり、規模と方法が異なる。Wertheimer と Puente の A Brief History of Psychology は初学者向けの最初の一冊として説明されており、本書の前に短い入門を読みたい読者に向く。Fancher と Rutherford の Pioneers of Psychology も個々の人物の生涯と思想を通して語るため、方法の点で最も近い代替であり、両者を読む意義は主として同じ物語が二つの教科書でどう語られるかの比較にある。
より広い視野を求めるなら、Leahey の A Critical History of Psychology は古代哲学から思想をたどり、心理学内部の論争を、それを形づくった社会的・経済的・政治的な力と並べて扱う。こちらのほうが歯ごたえがある。Danziger の Constructing the Subject は心理学の研究方法がどのように成立したかを論じた研究であり、本書のような概説のあとに読むのがよい。Freud の The Interpretation of Dreams は精神分析の章に対応する一次資料で、第13・14章と並行して読める。
本書の使い方
入門心理学の講義を修了し、心理学史・システム論の授業を取る学部生に向く。試験準備のためのコンパクトな復習用テキストとしても使える。出版社の説明は本書を物語として提示しており、通読しやすい。
実際の読み方としては、学派が順に続き各章が前の章を前提とするため、順番に読むのがよい。第1–5章で問いと学問の始まりを押さえ、第6–14章で主要な学派を学び、第15章で現在に至る。時間が限られる場合は、第1章、前史の2章、各学派の創始の章(第5、7、10、13章)、第15章を読む。
各学派には、それが生んだものを一つ組み合わせるとよい。精神分析ならフロイトの抜粋、20世紀初頭の学派なら短い原論文である。読了後は、各学派について、何に反対し、何を主張し、何を残したかを1ページの表にまとめると、心理学史の論述問題への準備にもなる。
