01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Lemons, D. S. (2013). A Student's Guide to Entropy. Cambridge University Press.
章の要約
本書は序文、8つの章、「What is entropy?」と題する短い結びの章、6つの付録(物理定数と標準的定義、公式集、用語集、年表、問題の解答、注釈付きの参考文献案内)からなる。ペーパーバックは200ページである。出版社によれば、20を超える例題と各章末の約50の演習問題がある。
第1章:Thermodynamic entropy(熱力学的エントロピー)
熱力学を、圧力、体積、温度、エネルギーなど少数の変数で記述される巨視的な物体の科学として述べるところから始まる。エントロピーは熱力学の第一法則と第二法則から導かれ、その熱力学での主な役割は過程の不可逆性を定量化すること、すなわち孤立系のどの過程が可能でどれが不可能かを示すことだとされる。最も長い章(1〜31ページ)である。
第2章:Statistical entropy(統計的エントロピー)
第2章はボルツマンと原子を通して、熱力学の「ブラックボックス」の内部を見る。出版社は、望ましい性質から統計的エントロピーを構成することを、本書の革新的な特徴として挙げている。
第3章:Entropy of classical systems(古典系のエントロピー)
出版社の説明では、古典系のエントロピーは純粋に古典的な仮定から導かれる。
第4章:Entropy of quantized systems(量子化された系のエントロピー)
題名は古典系から量子化された系への移行を示す。章冒頭のプレビューは見られなかったため、ここではこれ以上述べない。
第5章:Entropy of a non-isolated system(非孤立系のエントロピー)
最も短い章(96〜104ページ)で、題名から、ここでは孤立していない系のエントロピーが考えられることがわかる。
第6〜7章:Entropy of fermion systems(フェルミ粒子系のエントロピー)、Entropy of systems of bosons(ボース粒子系のエントロピー)
この二章は、出版社が本書の革新として挙げる、理想フェルミ気体と理想ボース気体への統計熱力学的アプローチを与える。出版社が公開するフェルミ粒子の章のプレビューは対称性と波動関数から始まり、系の波動関数は同種粒子の交換に対して対称にも反対称にもなりうること、そこから微視的状態を数える二つの方法が生まれることを述べる。
第8章:Entropy of information(情報のエントロピー)
最終章は情報理論の舞台であるメッセージとメッセージ源に向かい、物理学や化学のエントロピーを、シャノンが調べた不確かさの尺度と結びつける。
結び:What is entropy?(エントロピーとは何か)
結びでは、本書で検討したエントロピーの比喩的な記述(変換内容、無秩序、不確かさ、位相空間での広がり、欠けた情報)が集められる。また、無秩序という記述が好まれなくなったことも述べられる。
主要概念
第1〜3章:熱から微視的状態へ
- 不可逆性:熱力学でエントロピーが定量化する過程の性質。
- 熱力学的変数と状態方程式:第1章が拠って立つ巨視的記述。
- 統計的エントロピー:微視的状態の数え上げから定義されるエントロピー。
第4〜7章:量子統計
- 量子化された系の多重度:到達可能な微視的状態の数で、フェルミ粒子の章のプレビューは波動関数の対称性と結びつけている。
- フェルミ粒子とボース粒子:波動関数が反対称または対称な粒子で、理想フェルミ気体とボース気体が得られる。
第8章と結び
- 情報エントロピー:シャノンの不確かさの尺度と物理的エントロピーとの類似。
- エントロピーの比喩的記述:結びで挙げられる五つ。
批判的分析
長所
- 範囲が絞られている。 一つの概念に集中し、熱力学から統計力学を経て情報理論まで、本文約160ページでたどる。
- 段階的な導出と例題。 出版社は導出が一歩ずつ進められることを強調し、20を超える例題と約50の演習問題がある。
- 補助資料。 用語集は主要な用語を定義し、年表は重要な進展を示し、注釈付きの参考文献案内もある。問題の解答は巻末にある。
- 書評。 Effrosyni Seitaridou は American Journal of Physics で、説明が徹底的で明快かつ簡潔だと評した。Choice はよく書かれており強く推薦するとした。Prashant Khare は Contemporary Physics で、整然とした導出と、その物理的意味を平易に説明する点を称賛した。The Observatory の評者は、統計力学の講義の主要かつ安価な教科書として推薦している。
短所
- 完全な課程ではない。 扱うのはエントロピーであり、熱力学や統計力学の全体ではない。目次には相転移や相互作用系のような章もない。本書は学部課程の補足として位置づけられている。
- 量子的な内容には準備が要る。 フェルミ粒子とボース粒子の章は波動関数の対称性に依拠するため、前提として微積分と入門的な熱の知識だけが挙げられていても、量子力学の入門課程を学んでいると役に立つ。
コースにおける位置づけ
Lemons は主教材ではなく、短い副読本である。Schroeder の An Introduction to Thermal Physics は熱力学と統計力学を一緒に扱い、微視的状態の数え上げで温度とエントロピーを定義するもので、自然な主教材となる。Blundell 夫妻の Concepts in Thermal Physics は多くの短い章で似た範囲を扱い、応用に情報を含む。Rex が改訂した Finn's Thermal Physics は統計力学を加えた簡潔な古典熱力学の本で、Baierlein の Thermal Physics は巨視的な法則を微視的な確率と結びつける。Pathria と Beale の Statistical Mechanics はアンサンブル理論や相互作用系のために進む大学院水準の本である。エントロピーだけを単独で説明してほしい読者は、これらの講義の前、最中、後のいずれにも Lemons を読める。
本書の使い方
熱と温度に触れたことがあり、入門的な微積分を知っている物理、工学、化学、数学の学部生に向く。
実践的な進め方としては、まず序文と第1、2章を読む。これらが熱力学的な定義と統計的な定義を定める。第3章は自然に続く。第4〜7章はフェルミ気体やボース気体に出会う読者には重要だが、そうでなければ後回しにできる。情報理論に関心のある読者は第8章を単独で読め、結びは最後の総括として適している。演習問題を解いて解答と照合し、用語集と年表を参照用に使うとよい。
