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Concepts in Thermal Physics(熱物理学の概念) cover

物理学

物理学

Concepts in Thermal Physics(熱物理学の概念)

Stephen J. Blundell; Katherine M. Blundell

英語原題: Concepts in Thermal Physics

熱力学、気体分子運動論、統計力学を、それぞれ一つの考え方を扱う短く独立した多数の章で展開する英国の学部教科書。確率と温度の意味から出発して熱力学の法則と分配関数を組み立て、それを恒星、コンパクト天体、凝縮系、情報、大気へと応用していく。

前提知識: 偏微分や簡単な多重積分を含む1年次の微積分と初等力学。必要な確率の知識は冒頭の章で復習される。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
thermodynamicsstatistical mechanicskinetic theoryentropy教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Blundell, S. J., & Blundell, K. M. (2010). Concepts in Thermal Physics (2nd ed.). Oxford University Press.

章の要約

本書は短い37の章を9つの部にまとめたもので、その後に付録(定数、有用な公式と数学、電磁スペクトル、熱力学の定義と展開公式、換算質量、記号の用語集)と参考文献が続く。初版を評した書評者は、各章が1つの概念を扱っていると指摘しており、どの章も演習問題で終わる。

第I部、第1–4章:序論/熱/確率/温度とボルツマン因子

冒頭の部は全体の導入を行い、後で必要になる確率の知識を用意する。確率の章は、ボルツマン因子を導入する温度の章よりも前に置かれており、熱力学が始まる前に統計的な考え方が整うようになっている。

第II部、第5–8章:マクスウェル=ボルツマン分布/圧力/分子の流出/平均自由行程と衝突

気体分子運動論で、最初に扱う物理系は気体である。初版の書評によれば、著者らはこの部を省略可能で後回しにもできるものとして提示している。

第III部、第9–10章:気体の輸送特性/熱拡散方程式

気体における輸送現象と、熱の拡散方程式を扱う。

第IV–V部、第11–15章:エネルギー/等温過程と断熱過程/熱機関と熱力学第二法則/エントロピー/情報理論

熱力学第一法則と第二法則。第二法則の部は、エントロピーと並んで情報理論の章で終わる。

第VI部、第16–18章:熱力学ポテンシャル/棒、泡、磁石/熱力学第三法則

「実践の中の熱力学」。熱力学ポテンシャルのあと、気体以外の系(棒、泡、磁石)を扱い、第三法則に至る。

第VII部、第19–24章:エネルギー等分配/分配関数/理想気体の統計力学/化学ポテンシャル/光子/フォノン

統計力学そのものは、熱力学の諸法則のあとにここから始まる。分配関数に続いて理想気体、化学ポテンシャル、そして量子の気体としての光子とフォノンが扱われる。

第VIII部、第25–30章:相対論的気体/実在気体/実在気体の冷却/相転移/ボース=アインシュタイン分布とフェルミ=ディラック分布/量子気体と凝縮

古典的理想気体を超えて、相対論的気体と実在気体、その冷却、相転移、2つの量子統計分布と、それらの量子気体や凝縮への応用を扱う。

第IX部、第31–37章:音波/衝撃波/ブラウン運動と揺らぎ/非平衡熱力学/星/コンパクト天体/地球の大気

特別な話題。出版社は恒星天体物理、物性物理、情報、気候への応用を挙げており、最後の3つの章は考え方を星、コンパクト天体、大気へと広げる。

主要概念

第I–III部:第1–10章

  • ボルツマン因子:温度とエネルギーの状態間分布を結びつける確率の重み。
  • マクスウェル=ボルツマン分布:気体中の分子の速さの分布。
  • 平均自由行程:分子が衝突から次の衝突までに進む典型的な距離で、輸送特性に用いられる。
  • 熱拡散方程式:熱が物質中をどのように広がるかを記述する方程式。

第IV–VI部:第11–18章

  • 第一法則と第二法則:熱と仕事を含むエネルギー保存と、熱機関の限界。
  • エントロピー:第二法則の状態量で、情報理論と並べて論じられる。
  • 熱力学ポテンシャル:一定の温度、圧力、場のもとにある系を扱うための関数。
  • 第三法則:温度が零に近づくときのエントロピーの振る舞い。

第VII–IX部:第19–37章

  • 分配関数:統計力学の中心的な量で、熱力学的性質がここから導かれる。
  • 化学ポテンシャル:系の間の粒子のやり取りを支配する量。
  • ボース=アインシュタイン分布とフェルミ=ディラック分布:同種粒子の量子統計。
  • 相転移:状態の変化で、第28章で扱われる。

批判的分析

長所

  • 統計力学より先に熱力学。 目次では、熱力学の諸法則(第IV–VI部)が分配関数(第20章)より前に置かれている。Narayan は Physics Today(2007年10月)で初版を評し、熱力学は統計的解析なしに複雑な系へ適用でき、その一般性を見失うべきではないとして、この順序を良い選択と見なした。
  • 短く、1章1概念の構成。 書評は、37の章が短く、説明が概して非常に明快であることを強調している。章が短いため、一部の章だけを課題にすることも容易である。
  • 最初に気体、図には実測データ。 書評者は、最初に扱う物理系がスピン鎖ではなく気体であることと、いくつかの図に実際の実験データが載っていることを評価している。
  • 例題、歴史、応用。 出版社は、豊富な例題、主要な発見の歴史的背景、すべての章末の演習問題、星から気候に及ぶ応用を挙げている。第2版では、浸透、拡散の問題、ベイズの定理、放射輸送、イジング模型、モンテカルロ法が加わり、例題と演習問題も新しくなった。

短所

  • 薄い扱いの話題がある。 初版の書評は、磁性系の扱いと分子の自由度の「凍結」の扱いが短すぎるとし、情報理論の章はその内容をまだ知らない読者には役立たないのではないかと疑い、熱を「移動中のエネルギー」と述べる説明は誤解を招くと評した。第2版でこれらの箇所が変更されたかどうかは、出版社の説明からは分からない。
  • 相転移。 同じ書評者は、相転移の章が時代遅れだとし、イジング模型やモンテカルロ・シミュレーションのような数値的な例を求めた。第2版はその両方を加えているが、目次だけからはこの批判にどこまで応えているかを確認できない。教員は補助教材を用意したほうがよいかもしれない。
  • 分子運動論での理想気体の仮定。 書評者は、初めの分子運動論の章で理想気体近似がどこで入るかを明示した記述を見つけられなかった。
  • 問題の範囲と分量。 書評者は問題がよく選ばれているとしつつ、特に概念を他分野に応用する問題がもっと多いことを望んだ。また特別な話題の章は、1学期の授業では省かれるだろうと見ていた。

コースにおける位置づけ

Blundell と Blundell は、この分野全体を扱う学部向けの総合的な教科書であり、その順序に特色がある。まず確率、気体分子運動論、熱力学の法則があり、分配関数はそのあとに来る。Schroeder の An Introduction to Thermal Physics は逆で、最初からミクロ状態の数え上げによって温度とエントロピーを定義するため、熱力学を先にする道と統計を先にする道のどちらを好むかによって、二冊を使い分けられる。Baierlein の Thermal Physics は、同書のページでは、ミクロな状態と確率を通じて熱力学と統計力学を発展させる本と説明されている。

もっとやさしい入口としては、Rex が改訂した Finn's Thermal Physics が、古典熱力学の簡潔な入門に統計力学を加えた本であり、Lemons の A Student's Guide to Entropy は、熱力学、統計力学、情報理論を結びつける一つの概念についての短い案内書である。Pathria と Beale の Statistical Mechanics は、アンサンブル理論から始まる、Blundell の第VII–VIII部の先にある大学院レベルの一歩である。

本書の使い方

本書は、物理学科の2、3年生と、化学や工学の力のある学生に向いている。微積分(偏微分を含む)と入門的な力学があれば十分で、温度を導入する前に確率の専用の章(第3章)が置かれている。

1学期の授業の核としては、第1–4章、法則とポテンシャルのために第11–14章と第16章、分配関数・理想気体・化学ポテンシャルのために第19–22章、量子分布のために第29–30章が考えられる。初版の書評によれば、第II部は最初の2章(マクスウェル=ボルツマン分布と圧力)を除いて後回しにも省略もできる。第15、17章、第25–27章、第IX部は、情報理論、磁石と泡、相対論的気体と実在気体、星や大気への応用といった、自然な任意の発展である。

各章末の演習問題は、理解を確かめる主な手段として解くとよい。第28章の相転移が簡潔だと感じる読者は、イジング模型の別の解説と併せて読むとよい。統計を先にする入門を求める読者は、第3–4章と第19–20章と並行して Schroeder の冒頭の章を読むことができる。