01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Rex, A., & Finn, C. B. P. (2024). Finn's Thermal Physics (4th ed.). CRC Press.
章の要約
本書は13の章と4つの付録(物理定数と換算係数、熱力学で用いる数学的関係、物質を磁化し誘電体を分極させるのに要する仕事、一部の問題の解答)からなる。出版社の説明では、この版は C. B. P. Finn の原著を Andrew Rex が改訂したもので、元の文体を保ちつつ、統計力学を加え、新しい概念ごとに例題を置き、問題を増やし、超伝導、磁性、ボース–アインシュタイン凝縮、気候変動、情報の物理についての内容を更新している。以下の章題は出版社の目次によるもので、各章の記述は、これらの題と出版社の説明が裏づける範囲を超えない。
第1–2章:温度;可逆過程と仕事
本書は温度の定義から始まり、次に可逆過程とそこでなされる仕事を扱い、続く法則の土台を築く。出版社は、本書が第一原理から進むと述べている。
第3–5章:熱力学第一法則;熱力学第二法則;エントロピー
この3章が古典的な中核をなす。熱と仕事に適用されるエネルギー保存、第二法則、そしてエントロピーである。出版社は、熱力学関数の意味にまつわる微妙な点にも触れていると述べる。
第6章:統計力学
出版社は統計力学が2つの新しい章で扱われると述べており、題と位置から見ると第6章と第13章にあたるようである。この章がエントロピーの直後にあることは、古典的な量が整ってから微視的な見方が導入されることを示している。
第7–8章:熱力学ポテンシャルとマクスウェルの関係式;一般的な熱力学関係式
熱力学ポテンシャルとマクスウェルの関係式が、熱力学量の間の一般的な関係を扱う章の前に置かれている。
第9章:磁性体の系
熱力学を磁性材料に応用する。物質を磁化し誘電体を分極させるのに要する仕事を扱う付録Cがこの章を支える。
第10–12章:相変化;開放系と化学ポテンシャル;熱力学第三法則
これらの章は、相の間の転移、物質をやり取りする系と化学ポテンシャル、そして第三法則を扱う。
第13章:量子統計
最終章は量子統計で本書を締めくくる。出版社は、ボース–アインシュタイン凝縮を更新された話題に挙げている。
主要概念
第1–5章:古典熱力学
- 温度と可逆性:第1・2章の冒頭の主題。
- 第一法則と第二法則:第3・4章。
- エントロピー:第5章。
第6–13章:統計的・応用的な熱力学
- 熱力学ポテンシャルとマクスウェルの関係式:第7章。
- 化学ポテンシャルと開放系:第11章。
- 第三法則:第12章。
- 量子統計:第13章。
批判的分析
長所
- 筋の通った構成。 13の章は、温度から三つの法則と熱力学の関係式を経て、相変化と量子統計へと進むため、一つの議論として通読できる。
- 例題を設計の特色とする。 出版社は、新しい概念の後に例題を置き、結果が数値としてどういう意味をもつかを示すと述べ、問題の数も増えたとしている。一部の問題の解答は付録Dに載っている。
- 磁性体と相変化に独立した章。 第9章と第10章は、これらの応用を演習に任せず、専用の紙面を与えている。
- 範囲の更新。 新版は統計力学や、超伝導、ボース–アインシュタイン凝縮、気候変動などの話題を加え、古い教科書を現代の熱物理の授業の内容に近づけている。
短所
- 統計力学は集中している。 統計力学に当てられているのは2章(第6章と第13章)だけなので、最初から統計的に学びたい授業ではもう1冊が必要になる。
- 第三者の証拠が乏しい。 第4版の公刊された書評は見つからず、出版社の文面も(なお「第3版」と書くなど)一貫していないため、上記の評価は目次と販売用の説明に基づく。
- 範囲が狭い。 章題には気体分子運動論や他分野への応用がなく、他の熱物理の教科書には含まれることが多い。
コースにおける位置づけ
Finn の Thermal Physics は、第一原理から積み上げる、熱力学を先に置いたコンパクトな教科書である。Blundell 夫妻の Concepts in Thermal Physics はより広い道をとり、多くの短い章で熱力学、気体分子運動論、統計力学を扱い、星や凝縮系に応用する。Schroeder の An Introduction to Thermal Physics は、微視的状態の数え上げで温度とエントロピーを定義し、くだけた文体なので、統計力学から入りたい読者に向く。
Lemons の A Student's Guide to Entropy は一つの概念に絞った短い併読書で、第4–5章と相性がよい。Baierlein の Thermal Physics はもう一つの本格的な熱物理の教科書であり、Pathria と Beale の Statistical Mechanics は大学院向けの教科書なので、Finn のような本の後に読むもので、代わりにはならない。
本書の使い方
ページのメタデータは、偏微分を含む1年次の微積分と大学の物理入門を前提として挙げている。出版社は、第一原理から熱力学を直観的に理解したい読者のための入門書として本書を位置づけている。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1–5章を順に読み、次に、後の議論で最もよく使われるポテンシャルと関係式を扱う第7・8章。
- 応用: 授業に応じて第9–11章。磁性体か相変化が焦点なら、その章から先に読む。
- 統計的な見方: 第6章と第13章。熱力学中心の授業なら最後にまとめて、統計力学が目標なら早めに読む。
- 演習: 問題に取りかかる前に例題を検討し、付録Dで一部の問題の解答を確かめる。付録Bには本文で使う数学的関係がまとめられている。
