01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
van Inwagen, P. (2024). Metaphysics (5th ed.). Routledge.
章の要約
第 5 版は約 320〜330 ページ(Routledge は 332 ページ、Google Books は 322 ページとする)で、三部十三章からなり、各部にはそれぞれ導入があり、最後に後記が付く。出版社は、本書が哲学の予備知識を前提とせず、各章の末尾に注と推薦図書が付くと述べている。以下の要約は章題、部の題、そして本書が取り上げる問いを列挙した出版社の紹介文に基づく。目次には章内の節は載っていない。
第 1 章:序論
出版社の挙げる問いは「形而上学とは何か」から始まり、この題の冒頭の章は、三つの部に入る前にこれに答える位置にある。
第 1 部:世界のあり方(第 2–5 章)
第 2 章:個体性。 章題と、出版社が最初に挙げる問いから見て、この章は世界に多数の事物があるのか、それともただ一つなのかを問うように思われる。目次はこの章についてそれ以上の説明をしていない。
第 3 章:外在性。 出版社は、人間の思考や感覚から独立に存在するものからなる外界があるのかを問うており、これは本章の章題に合致する。
第 4 章:時間性。 時間に関する章である。出版社によれば、この章は第 4 版では長く難しかったが、第 5 版では大幅に書き直されて、よりとっつきやすく魅力的になった。そのため、これは今回の版の主な変更点である。
第 5 章:客観性。 出版社の問い「客観的真理というものはあるのか」が、この章題に対応する。
第 2 部:世界がある理由(第 6–7 章)
第 6–7 章:必然的存在——存在論的論証/必然的存在——宇宙論的論証。 二つの章が、必然的存在者をめぐる論証を通して「なぜ何もないのではなく何かがあるのか」という問いに取り組む。前者は存在論的論証を、後者は宇宙論的論証を扱うので、この部は二つの古典的論証に集中している。
第 3 部:世界の住人(第 8–13 章)
第 8 章:どのような理性的存在者がいるか。 この部は、どのような理性的存在者が存在するかを問うことから始まる。
第 9 章:世界における理性的存在者の位置——設計と目的。 この章は理性的存在者が世界のどこに位置するかを考える。副題は設計と目的を挙げており、私たちの存在に意味はあるのかという出版社の問いに合う。
第 10–11 章:理性的存在者の本性——二元論と物理主義/理性的存在者の本性——二元論と人格の同一性。 二つの章は、理性的存在者とは何か、すなわち物理的か非物理的か、そして二元論が人格の同一性とどう関わるかを問う。
第 12 章:理性的存在者の力——意志の自由。 意志の自由は、理性的存在者の力の一つとして扱われる。出版社の著者紹介には、著者の以前の著書 An Essay on Free Will(1983)が挙がっている。
第 13 章:結びの瞑想。 本文を締めくくる章。
後記:存在
「存在」と題された後記が、結びの瞑想のあとに置かれる。出版社の挙げる問いには、存在しないものはあるか、普遍者は存在するかも含まれるが、目次はそれらがどこで論じられるかを示していない。
主要概念
第 1 部
- 個体性、外在性、時間性、客観性:第 2–5 章の章題が挙げる、世界の四つの側面。
- 外界:人間の思考や感覚から独立に存在する事物という考え。
- 客観的真理:真理が誰の信念からも独立かどうか。
第 2 部
- 必然的存在者:存在しないことがありえない存在者。二つの古典的論証の標的である。
- 存在論的論証と宇宙論的論証:第 6・7 章が取り上げる、必然的存在者をめぐる二つの論証。
第 3 部
- 理性的存在者:第 8–12 章がその存在と本性を検討する人格あるいは心。
- 二元論と物理主義:理性的存在者が非物理的か物理的かをめぐる対立する見方。
- 人格の同一性:人が同一であり続けるために何が必要か。二元論との関連で論じられる。
- 意志の自由:第 12 章の主題である、理性的存在者の力。
批判的分析
長所
- 前提知識を要しない。 出版社は、本書が哲学の予備知識を前提としないと述べ、学部生や関心のある一般読者に適していると説明している。
- 大きな問いを軸にした構成。 出版社の挙げる問いと三つの部(世界のあり方、その理由、その住人)が、本書に明確な順序を与えており、各部にはそれぞれ導入がある。
- 第 5 版の改訂。 時間に関する章はとっつきやすいよう書き直され、文章は明晰さのために引き締められ、注、推薦図書、総合文献表が更新された。
- 関連する主題に専門的な業績をもつ著者。 出版社の著者紹介には van Inwagen の An Essay on Free Will(1983)、Material Beings(1990)、Being: A Study in Ontology(2022)が挙がっており、それぞれ第 12 章の主題(自由意志)、物質的世界、後記(存在)に関わる。
短所
- 概観書に比べて話題の幅が狭い。 目次には、因果、様相、性質、部分と全体といった専門の章が見当たらない。分析形而上学の標準的な問題の全体像を求める読者は、概観書も併せて読む必要がある。
- 第 2 部が狭い。 目次を見るかぎり、なぜ世界があるのかという問いは、存在論的論証と宇宙論的論証の二章で扱われる。この問いへの他のアプローチを知りたい読者は、さらに読む必要がある。
- 一人の著者による取捨選択。 十三の章は一人の著者による問いの選択であり、出版社の挙げる問いはいくつかの標準的な話題を含まないので、本書は別の論述と併せて読むのが最もよい。
コースにおける位置づけ
van Inwagen の Metaphysics は、このコースにおいて、少数の大きな問いを軸に組み立てられた入門書である。Stephen Mumford の Metaphysics: A Very Short Introduction と Earl Conee・Theodore Sider の Riddles of Existence は、日常的な問いやパズルを軸にした、より気軽な最初の本である。Conee と Sider の扱う範囲(人格の同一性、運命論、時間、神、自由意志、物質的対象、普遍者と必然性)は van Inwagen とかなり重なる。Loux と Crisp の Metaphysics: A Contemporary Introduction は、入門科目を終えた学生に向けた分析形而上学の中心問題の概観で、様相、因果、部分と全体、形而上学的不確定性の章を持つが、van Inwagen の目次にはこれらが見えない。
Saul Kripke の Naming and Necessity と David Lewis の On the Plurality of Worlds は、後で読む専門書である。van Inwagen の目次には様相の章がないので、本書からこれらへ向かう読者は、先に Loux と Crisp の必然と可能の章を経由するとよい。
本書の使い方
本書は、予備知識のない学部生と一般読者に向けられている。議論を追い、評価する練習が少しあると助けになるが、出版社は正式な要件を挙げていない。
本書は順に読むのが最もよい。三つの部は積み上げ式で、各部の導入を先に読むべきだからである。一学期の目安としては、第 1 部(第 2–5 章、世界の構造)に学期の約三分の一、第 2 部(第 6–7 章、必然的存在者をめぐる二つの論証)に短い期間、第 3 部(第 8–13 章、人格と意志の自由)に残りを充てる。時間が限られている場合は、第 1・4・12 章を読めば本書のおおよその範囲がわかる。なお第 4 章は今回の版で書き直された章である。
各章末の注と推薦図書を手がかりに原典に当たり、各章の立場を、このコースの別の本の論述と比べるとよい。第 4 版の読者は、第 5 版を主に、改訂された時間の章と更新された文献リストのために使える。
