01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Cooper, J. R., Bloom, F. E., & Roth, R. H. (2003). The Biochemical Basis of Neuropharmacology (8th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第8版はコンパクトな書籍で、本文は約400ページ、その後に索引があり、題の付いた章は13ある。出版社は、神経伝達物質、神経系機能におけるその役割、精神科の薬物作用機序への関与を、明快で生き生きと描いたものと紹介しており、読者として神経科学や精神薬理学の学生、精神科・神経科の研修医、臨床医や研究者を想定している。出版社によれば、第8版では、臨床例、新薬の標的となる受容体サブクラス、分子遺伝学、脳への薬物送達の問題、脳内のニコチン受容体とアルツハイマー病・パーキンソン病への関与の可能性に、より多くの紙面が割かれている。多くの図には第二の色が加えられた。各章は細胞と分子から始まり、受容体とシグナル伝達を経て、個々の伝達物質系を順に扱い、学習と治療で終わる。
序論
冒頭の章は約6ページと短く、7ページから始まる細胞と分子の章の前に、主題を導入する。
神経薬理学の細胞的基礎
約30ページで、神経系の細胞生物学を扱う。分子の章や伝達物質の章に先立つ。
神経薬理学の分子的基礎
約25ページで、ニューロンの機能の背後にある分子的な仕組みを扱い、受容体とシグナル伝達の章に備える。
受容体
受容体に約20ページ。出版社は、この版が新薬の標的となる受容体サブクラスにより注意を払っていると述べている。
シナプス伝達の調節
約20ページで、シナプス伝達がどう調節されるかを扱い、受容体の章の後に置かれている。
アミノ酸伝達物質
伝達物質の章の最初で、約45ページ。アミノ酸伝達物質を扱う。
アセチルコリン
約30ページでアセチルコリンを扱う。出版社は、脳内のニコチン受容体と、アルツハイマー病・パーキンソン病への関与の可能性が認識されつつあることを述べている。
ノルエピネフリンとエピネフリン
約45ページで、この二つのカテコールアミンを扱う。
ドパミン
約45ページで、一つの章として独立している。
セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン)、ヒスタミン、アデノシン
1章約50ページで三つの伝達物質をまとめて扱う。本書で最も長い章の一つである。
神経活性ペプチド
約35ページで、ペプチド性のシグナル分子を扱う。
学習と記憶の細胞機構
約15ページの短い章で、シナプスと細胞の仕組みを学習・記憶に結びつける。
神経疾患および精神疾患の治療
最終章は約28ページで、神経疾患・精神疾患の治療に向かう。出版社は、この版が全体を通じて臨床例と精神科の薬物作用を重視していると述べている。
主要概念
基礎(序論からシナプス伝達の調節まで)
- 細胞的・分子的基礎:個々の伝達物質を扱う前に置かれた、ニューロンの細胞生物学と分子的な仕組み。
- 受容体とそのサブクラス:新薬の標的としての受容体サブタイプ。
- シナプス伝達の調節:シナプスがどれだけ強く信号を伝えるかの制御。
伝達物質系
- アミノ酸伝達物質:伝達物質の連なりを開く章。
- アセチルコリンとニコチン受容体:脳内のニコチン受容体を含むコリン作動性伝達。
- カテコールアミン:ノルエピネフリン、エピネフリン、ドパミン。それぞれが深く扱われる。
- セロトニン、ヒスタミン、アデノシン:一つの章にまとめられている。
- 神経活性ペプチド:ペプチド性の伝達物質と調節因子。
機能と治療
- 学習と記憶の細胞機構:シナプスが経験によってどう変わるか。
- 神経疾患・精神疾患の治療:薬物治療の薬理学。
- 脳への薬物送達:出版社が、この版でより多くの紙面が割かれたと特に挙げている話題。
批判的分析
長所
- 細胞から治療への明快な順序。 章の一覧は細胞と分子から、受容体とシナプス調節、各伝達物質系、最後に学習と治療へと進むので、各章が前の章の上に築かれる。
- モノアミンの深い扱い。 ノルエピネフリンとエピネフリン、ドパミン、セロトニン・ヒスタミン・アデノシンで約400ページのうち約140ページを占め、精神科の薬物作用におけるこれらの系の中心的な役割を反映している。
- コンパクトで読みやすい。 出版社は本書を権威がありかつ非常に読みやすいと述べ、版を重ねて更新されてきたとしている。分量からも通読が可能である。
- 臨床的関連への配慮。 この版は臨床例を加え、新しい薬物標的、脳への薬物送達、アルツハイマー病・パーキンソン病におけるニコチン受容体を論じている。
短所
- 古い。 この版は2002〜2003年に出版されたため、その後の知見、受容体の分類、薬物治療は含まれない。現在の薬理学や疾患モデルには新しい教科書を使うこと。
- 神経伝達物質中心の範囲。 章は疾患や脳の系ではなく伝達物質ごとに編成されているため、睡眠、疼痛、嗜癖などを別々の章で疾患別に扱ってほしい読者には向かない。
- 専門的な素養の前提。 出版社が挙げる読者(神経科学の学生、研修医、臨床医、研究者)は、細胞生物学、生化学、ある程度の神経科学を前提とする。
- 臨床神経学の扱いが限られる。 神経疾患・精神疾患の治療は約28ページの最終章一つで扱われるため、臨床の実践には別の教科書が要る。
コースにおける位置づけ
神経科学のコースの中で、本書は二冊の神経薬理学の教科書のうち古い方である。Nestler らの Molecular Neuropharmacology(第4版、2020年)は同程度の基礎を扱い、続いて第3部全体(第9〜20章)を、疼痛、睡眠、気分、嗜癖、精神病、神経変性などの系と疾患に充てている。現在の治療と疾患機序を知りたいときはそちらを読み、Cooper、Bloom、Roth の本は、古典的な化学を伝達物質ごとに述べた、より短い読み物として使うとよい。
リストの他の書籍は神経薬理学の教科書ではない。Neuroscience: Exploring the Brain と Henley の Foundations of Neuroscience はこの分野の入門書であり、Purves の Neuroscience、Luo の Principles of Neurobiology、From Neuron to Brain は、細胞神経科学と系統神経科学のより本格的な教科書である。リストの神経解剖学の書籍(Snell、Crossman、Blumenfeld、Neuroanatomy and Neuroscience at a Glance)は構造の地図を与える。入門書と神経解剖学の教科書を先に読み、そのあとでシナプスの化学と薬物作用のために本書を読むとよい。
本書の使い方
本書は、神経科学と薬理学の大学院生、精神科・神経科の研修医、神経伝達物質の化学と薬物作用の簡潔な説明を求める研究者に向いている。細胞生物学、生化学、入門的な神経科学の素養を前提とする。
読み進め方の一例:まず細胞と分子の章、受容体とシナプス調節の章を読み、それから関心に応じて伝達物質の章を選ぶ。たとえば精神科ならドパミンとセロトニン・ヒスタミン・アデノシン、神経科ならアセチルコリンである。学習と記憶の細胞機構、神経疾患・精神疾患の治療は最後に読む。本書は2000年代初めのものなので、薬物のリスト、受容体の分類、治療の推奨に頼る前に、各伝達物質系を現在の総説やより新しい教科書で確認すること。復習の練習として、各伝達物質について(合成、放出、受容体、除去、薬物を含む)1ページの要約を作ってみよう。
