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Emery's Elements of Medical Genetics and Genomics(エメリー医学遺伝学・ゲノム医学の基礎) cover

医学

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Emery's Elements of Medical Genetics and Genomics(エメリー医学遺伝学・ゲノム医学の基礎)

Peter D. Turnpenny; Sian Ellard; Ruth Cleaver

英語原題: Emery's Elements of Medical Genetics and Genomics

遺伝の原理とゲノム科学から、それらの臨床実践での活用までを扱う医学遺伝学の教科書。遺伝的変異がどのように疾患を引き起こすか、遺伝学的検査やゲノム検査をどう解釈するか、罹患した家系をどう評価しカウンセリングするかを、生涯にわたる臨床例を用いて説明する。

前提知識: 医学・生命医科学課程1年次程度の基礎的な細胞生物学と遺伝学の入門知識。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
medical geneticsgenomicsinheritancegenetic testinggenetic counselling教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Turnpenny, P. D., Ellard, S., & Cleaver, R. (2021). Emery's Elements of Medical Genetics and Genomics (16th ed.). Elsevier.

章の要約

本書は3つのセクションに分かれた全22章で、約450ページある。出版社の説明によれば、実践的な臨床遺伝学を土台にゲノム学を扱い、症例に基づく問題、多肢選択式の自己評価問題、章末のまとめ、用語集を備えている。著者はエクセター(Exeter)の遺伝サービスで働く臨床医である。

第1章:The History and Impact of Genetics in Medicine(医学における遺伝学の歴史と影響)

独立した導入の章。遺伝学を医学の歴史の中に位置づけ、臨床実践にとってなぜ重要かを述べてから、3つのセクションへ進む。

セクションA:ヒト遺伝学の科学的基盤(第2〜9章)

  • 第2章:The Cellular and Molecular Basis of Inheritance(遺伝の細胞的・分子的基盤) と 第3章:Chromosomes and Cell Division(染色体と細胞分裂) は、以降の章が前提とする細胞生物学と染色体の挙動を整理する。
  • 第4章:Finding the Cause of Monogenic Disorders by Identifying Disease Genes(疾患遺伝子の同定による単一遺伝子疾患の原因の探索) と 第5章:Laboratory Techniques for Diagnosis of Monogenic Disorders(単一遺伝子疾患の診断のための検査技術) は、疾患遺伝子の特定から、単一遺伝子疾患を診断する検査法までを扱う。
  • 第6章:Patterns of Inheritance(遺伝形式)、第7章:Population and Mathematical Genetics(集団遺伝学と数理遺伝学)、第8章:Risk Calculation(リスク計算) は定量的な中核にあたり、疾患が家系内でどう伝わるか、集団で遺伝子頻度がどう振る舞うか、家族のリスクをどう計算するかを述べる。
  • 第9章:Developmental Genetics(発生遺伝学) はこのセクションを締めくくり、遺伝子の働きを胚発生と結びつける。

セクションB:医学における遺伝学とゲノム医療(第10〜15章)

  • 第10章:Common Disease, Polygenic and Multifactorial Genetics(一般的な疾患、多遺伝子性・多因子性遺伝学) は、単一遺伝子疾患から、多くの遺伝的要因と環境要因が関わる疾患へと移る。
  • 第11章:Screening for Genetic Disease(遺伝性疾患のスクリーニング) は、集団を対象とするスクリーニングと標的を絞ったスクリーニングを扱う。
  • 第12章:Haemoglobin and the Haemoglobinopathies(ヘモグロビンとヘモグロビン症) と 第13章:Immunogenetics(免疫遺伝学) は、それぞれ独立した章として扱われる専門領域である。
  • 第14章:The Genetics of Cancer and Cancer Genetics(がんの遺伝学とがん遺伝学) は、がんの遺伝的基盤と遺伝性のがん素因を扱う。
  • 第15章:Pharmacogenomics, Precision Medicine and the Treatment of Genetic Disease(薬理ゲノム学、精密医療、遺伝性疾患の治療) は、薬物応答から遺伝性疾患の治療法まで、治療の問題を扱う。

セクションC:臨床遺伝学、カウンセリング、倫理(第16〜22章)

  • 第16章:Congenital Abnormalities, Dysmorphic Syndromes and Intellectual Disability(先天異常、形態異常症候群、知的障害)、第17章:Chromosome Disorders(染色体疾患)、第18章:Inborn Errors of Metabolism(先天代謝異常)、第19章:Mainstream Monogenic Disorders(主要な単一遺伝子疾患) は、臨床遺伝医が出会う疾患を種類別に概観する。出版社によれば、フルカラーの画像が遺伝性疾患の外見の理解を助ける。
  • 第20章:Prenatal Testing and Reproductive Genetics(出生前検査と生殖遺伝学) は、妊娠中の検査と生殖に関する選択肢を扱う。
  • 第21章:Genetic Counselling(遺伝カウンセリング) と 第22章:Ethical and Legal Issues in Medical Genetics(医学遺伝学における倫理的・法的問題) で、遺伝情報の伝え方と、それに伴う倫理的・法的な問いを論じて終わる。

主要概念

セクションA:科学的基盤(第2〜9章)

  • 単一遺伝子疾患:単一の遺伝子の変異によって起こる疾患。原因遺伝子が同定され、検査室で診断される(第4〜5章)。
  • 遺伝形式:疾患が家系内で伝わる様式(第6章)。
  • 集団遺伝学と数理遺伝学:遺伝的変異が集団内で示す挙動と、それに伴う計算(第7章)。
  • リスク計算:ある人やその親族が発症する、あるいは保因者である確率を求めること(第8章)。

セクションB:医学における遺伝学(第10〜15章)

  • 多遺伝子性・多因子性遺伝:複数の遺伝子と環境が合わさって生じる一般的な疾患(第10章)。
  • 遺伝学的スクリーニング:集団や特定の群を対象に遺伝性疾患を検査すること(第11章)。
  • 薬理ゲノム学と精密医療:遺伝情報に基づいて薬の選択や治療を調整すること(第15章)。

セクションC:臨床実践(第16〜22章)

  • 形態異常症候群:識別可能な先天異常のパターン(第16章)。
  • 先天代謝異常:代謝経路の遺伝性の障害(第18章)。
  • 遺伝カウンセリング:遺伝性疾患、リスク、選択肢を患者や家族に説明する過程(第21章)。

批判的分析

長所

  • 明快な3部構成。 出版社は本書を、科学的基盤、医学における遺伝学とゲノム医療、臨床遺伝学・カウンセリング・倫理の3つに分けている。学生は科学の部分から読むことも、実習で必要になれば臨床の部分から読むこともできる。
  • 症例に基づく内容と自己評価教材。 第16版では、問いと解答付きの症例研究が全体に加えられ、多肢選択式問題、まとめの囲み、用語集も備わる。復習と臨床推論の助けになる。
  • 定量的な話題に専用の紙幅がある。 リスク計算と集団遺伝学がそれぞれ独立した章(第7、8章)になっており、遺伝形式を説明するだけでなく家族の遺伝リスクを計算しなければならない学生に役立つ。
  • 現役の臨床医が執筆。 編者は、臨床遺伝学のコンサルタント医、臨床分子遺伝学のコンサルタント医、もう1人の臨床遺伝学の同僚で、いずれもエクセターの同じ病院トラストに所属する。カウンセリングと、倫理・法的問題にそれぞれ1章が充てられている。
  • 適度な分量。 約450ページ、約420点の図版(大半はカラー)で、医学遺伝学の1つの授業ブロックで使う単独の教科書として扱いやすい。

短所

  • ゲノムの仕組みは中心ではない。 分子・ゲノム関連の内容は主に第2〜5章に集まっており、目次にはゲノム変異やエピジェネティクスを専門に扱う章がない(Thompson & Thompson の目次にはそれぞれ1章ある)。これらを詳しく学びたい学生は別の教材が必要になる。
  • 遺伝学の予備知識を前提とする。 本書は遺伝の細胞的・分子的基盤を1章で扱って始まるため、基礎的な遺伝学を学んだことのある読者に向く。
  • 専門的な話題は各1章。 ヘモグロビン症、免疫遺伝学、先天代謝異常はそれぞれ1章ずつで、概観には適するが専門課程には足りない。

コースにおける位置づけ

医学遺伝学のコースでは、臨床志向の学生向けの主教科書にあたる。Thompson & Thompson の Genetics and Genomics in Medicine は、リスト中のもう1冊の本格的な教科書で、全20章と別立ての臨床症例集から成る。両者は代替にも併用にもなる。本書は臨床遺伝学の実践、カウンセリング、倫理を軸に構成されているのに対し、Thompson & Thompson の目次はゲノム変異、エピジェネティクス、遺伝性疾患の分子基盤にそれぞれ章を割いている。

出発点が高いと感じる読者は、まず Clinical Genetics and Genomics at a Glance(見開きの図解)か New Clinical Genetics(実在の家族から出発して科学を組み立てていく症例中心の入門書)から始めるとよい。Harper's Practical Genetic Counselling は第21章よりはるかに深くカウンセリングを扱い、Human Molecular Genetics は第2〜5章を超える分子レベルの内容を学ぶ際に向く。

本書の使い方

本書は、遺伝学やゲノム医学のブロックを履修する医学・生物医科学の学生に向く。遺伝、検査、カウンセリングを臨床の視点から理解したい研修医や医療専門職にも適している。細胞生物学と初歩的な遺伝学の予備知識があることが望ましい。

実践的な読み方:

  • 中核: 第2、3、6章(生物学と遺伝形式の基礎)、第7、8章(定量的な技能)、第10章(一般的な疾患)。
  • 臨床部分: 第16〜22章は臨床実習と並行して読める。第21章と第22章は続けて読むとよい。
  • 選択的な読書: 第12、13、18章は、対応する臓器系や専門分野を学ぶ時期に読む。
  • 能動的な活用: 章末の症例に基づく問題に取り組み、リスク計算は解答を見る前に手で計算してみる。