01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Horn, R. A., & Johnson, C. R. (2013). Matrix Analysis (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
第2版は番号付きの9つの章(第0〜8章)と6つの付録からなり、その後に参考文献、記号表、問題のヒント、索引が続く。第1版の序文は、その目標を、広い範囲の話題の有用で現代的な扱いであり、学部または大学院の教科書として、また自己完結した参考書として使えるものだと述べている。第0章は演習のない参照用の概説である。第1〜3章は線形代数の第2課程の中核となる内容で、残りの各章はそれぞれほぼ独立に一つの主要な話題を扱う。
第0章:Review and Miscellanea(復習と雑録)
必要に応じて参照する概念と事実の概説。ベクトル空間、行列、行列式(2回)、階数、正則性、ユークリッド内積とノルム、区分行列、特別な型の行列、基底の変換、同値関係を扱う。第2版では約75%拡張された。演習はなく、講義や独習は通常、第1章から始まる。
第1章:Eigenvalues, Eigenvectors, and Similarity(固有値、固有ベクトル、相似)
固有値・固有ベクトルの方程式、特性多項式と代数的重複度、相似、左固有ベクトルと右固有ベクトルおよび幾何的重複度。新版は左固有ベクトルの役割を強調している。
第2章:Unitary Similarity and Unitary Equivalence(ユニタリ相似とユニタリ同値)
ユニタリ行列とQR分解、ユニタリ相似、ユニタリおよび実直交の三角化、Schurの三角化定理の帰結、正規行列、特異値分解を伴うユニタリ同値、CS分解。特異値分解はここで導入され、本書全体で使えるようにされている。
第3章:Canonical Forms for Similarity and Triangular Factorizations(相似の標準形と三角分解)
Jordan標準形定理とその帰結、最小多項式と同伴行列、実Jordan標準形とWeyr標準形、三角分解。序文によれば、Jordan形はWeyr特性を通じて導入される。
第4章:Hermitian Matrices, Symmetric Matrices, and Congruences(Hermite行列、対称行列、合同)
Hermite行列の性質と特徴づけ、部分空間の共通部分による変分的特徴づけ、固有値の不等式、ユニタリ合同と複素対称行列、合同と対角化、そして余相似(consimilarity)と余対角化。
第5章:Norms for Vectors and Matrices(ベクトルと行列のノルム)
ノルムと内積の定義と例、その代数的・解析的性質、双対性と幾何的性質、行列ノルム、行列上のベクトルノルム、逆行列と連立一次方程式の条件数。
第6章:Location and Perturbation of Eigenvalues(固有値の位置と摂動)
Geršgorin円板とそのより詳しい考察、固有値の摂動定理とその他の固有値包含集合。
第7章:Positive Definite and Semidefinite Matrices(正定値行列と半正定値行列)
定義、特徴づけ、極分解と特異値分解およびその帰結、Schur積定理、同時対角化と凸性、Loewner半順序と区分行列、正定値行列に関する不等式。
第8章:Positive and Nonnegative Matrices(正行列と非負行列)
不等式と一般論、正行列、非負行列、既約行列と原始行列、一般的な極限定理、確率行列と二重確率行列。これがPerron–Frobenius理論である。
付録A〜F
複素数、凸集合と凸関数、代数学の基本定理、多項式の零点と行列の固有値の連続性、連続性・コンパクト性とWeierstrassの定理、そして標準対(Hermite行列の対、または対称行列と交代行列の対の標準形の表)。
主要概念
第1〜3章:相似と標準形
- Schur三角化:すべての複素正方行列は上三角行列にユニタリ相似であり、第2章で多くの帰結が展開される。
- Jordan標準形とWeyr標準形:相似の標準形で、第2版は統一的な主題として用いる。
- 特異値分解:2.6節で導入され、全体で使われる分解。
第4〜6章:Hermite行列、ノルム、固有値の位置
- 変分的特徴づけ:部分空間の共通部分を用いて、Hermite行列の固有値を極値として記述すること。
- 行列ノルム:行列上のノルム。結果は劣乗法性の公理に依存するか否かで区別される。
- Geršgorin円板:行列の固有値を含む複素平面上の領域。
第7〜8章:正行列と非負行列
- Loewner半順序:差が半正定値かどうかでHermite行列を順序づけること。
- Schur積定理:半正定値行列のHadamard積は半正定値である。
- Perron–Frobenius理論:正行列、非負行列、原始行列、既約行列のスペクトルの性質。
批判的分析
長所
- 標準形が組織原理。 出版社と第2版の序文は、標準形を、相似、ユニタリ同値、合同などの同値関係を貫く統一的な主題として説明している。
- 大量の問題。 第2版には1,100を超える問題があり(第1版は約690)、多くは付録にヒントがある。随伴行列や複合行列、有限次元の量子系、Loewner楕円体などの話題を章をまたいで展開する問題の系列もある。
- 学習にも参照にも使える。 索引は約1,200項目から3,500項目超に増えた。著者は、なじみのない用語は索引で調べるようにと述べており、そこに定義への案内があるはずだとしている。
- モジュール式の構成。 第1版の序文によれば、第1〜3章の後は各章がそれぞれほぼ独立に一つの主要な話題を扱うので、関心に応じて入ることができる。
短所
- 話題は広いが網羅的ではない。 第1版の序文は、数域(field of values)、慣性、M行列、行列方程式、KroneckerやHadamardの積は、姉妹編の Topics in Matrix Analysis で扱うとしている。
- 入門書ではない。 序文は1学期分の初等線形代数と初歩的な解析の知識を前提とし、第1〜3章を第2課程の中核と述べている。
- 取捨選択が必要。 著者は、章と節の選択によって1学期または2学期の講義を支えられるとし、個々の講義に合わせて節を慎重に事前選択することを勧めている。一つの講義で通読する想定ではない。
コースにおける位置づけ
このコースにおける行列理論の上級の参考書である。Hefferonの無料テキスト、Strangの Introduction to Linear Algebra、Antonの Elementary Linear Algebra は、著者の想定する1学期分の背景を与える最初の課程である。Axlerの Linear Algebra Done Right はベクトル空間と作用素を証明中心に扱い、Anthonyらの Linear Algebra: Concepts and Methods は中核の理論と方法を展開する。どちらもHornとJohnsonの直前の段階として適する。
HornとJohnsonは、Schur三角化、Jordan形、特異値、行列ノルム、Perron–Frobenius理論を、研究に使える精密さで扱う点でこれらを超える。統計、数値計算、制御、応用解析に進む読者にとって、課程の後も手元に置く本である。
本書の使い方
本書は、線形代数の最初の課程を終え、証明と基礎的な解析に慣れた学生や、参考書を必要とする研究者に向く。
- 中核: 第1〜3章。必要に応じて第0章を参照する。第2課程の線形代数に相当し、著者は第2・3章の大部分を含めることを勧めている。
- 次に: 著者の勧めどおり、第4章からHermite行列の事実、第5章からノルムの事実。
- 関心に応じて: 第6章は固有値の位置、第7章は正定値行列と不等式、第8章はPerron–Frobenius理論。付録A〜Eは証明を支え、付録Fは専門的な表である。
問題は系列に沿って解き、ヒントは試みた後でのみ使い、定義は索引で探すこと。
