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Linear Algebra(線形代数) cover

数学

数学

Linear Algebra(線形代数)

Jim Hefferon

英語原題: Linear Algebra

大学で最初に学ぶ線形代数の講義向けの、無償で公開されたオープンライセンスの教科書。結果には証明を与えるが、学生がすでに抽象的な議論に慣れているとは仮定せず、動機づけ、計算例、そして完全な解答付きの豊富な演習を通じて数学的な成熟を養う。各章末には読み物や課題に使える短い応用トピックがある。

前提知識: 一学期分の微分積分。証明を書いた経験は前提としない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
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01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Hefferon, J. (2020). Linear Algebra (4th ed.). Orthogonal Publishing L3C. Free official edition: https://hefferon.net/linearalgebra/

章の要約

第1章:連立一次方程式

本書は二つの小さな応用例(質量のつり合いと化学反応)から始まり、ガウスの方法を展開して、そこで使う行基本変形が解集合を変えないことを証明する。解集合をベクトルの形で記述し、どの解集合も一つの特殊解と対応する同次方程式系の解全体の和であること、したがって空集合、一点、無限集合のいずれかであることを証明する。ℝⁿ における線形幾何(直線、平面、長さ、角度、コーシー=シュワルツの不等式と三角不等式)の節は星印つきの省略可能な節である。章の最後では、ガウス=ジョルダン消去法、線形結合の補題、そしてどの行列もただ一つの簡約階段形に変形できることの証明を扱う。トピックは数式処理システム、産業連関分析、計算の精度、電気回路網である。

第2章:ベクトル空間

同次方程式系の解集合が線形結合について閉じていることを動機として、実数上のベクトル空間を定義し、多項式・行列・関数の空間を含む多くの例と、部分空間および張る空間を調べる。続いて一次独立、基底、次元を学び、交換補題を用いて有限次元空間のすべての基底が同じ大きさをもつことを証明する。III.3節では行空間・列空間と「行階数は列階数に等しい」という定理を通じてこれらの概念を連立方程式に結びつけ、省略可能な節で部分空間の和と直和を扱う。トピックは体、結晶、投票のパラドックス、次元解析である。

第3章:空間の間の写像

最も長い章で、ある空間同士が「同じ」であるという直観を厳密にする。同型写像を定義し、有限次元空間は同型を除いて次元によって決まることを示す。続いて準同型写像(線形写像)を扱い、値域空間、零空間、そして階数と退化次数の和が定義域の次元に等しいという定理を示す。その後、行列を基底に関する線形写像の表現として導入するので、行列の積は写像の合成を表すように定義される。逆行列、基底の変換、そして行列が同値であるのは同じ階数をもつときに限るという結果が中核を締めくくる。省略可能な節では直交射影、グラム=シュミットの直交化、部分空間への射影を扱う。トピックは最良近似直線、線形写像の幾何学、魔方陣、マルコフ連鎖、直交行列である。

第4章:行列式

正方行列が正則かどうかを判定する公式を求めるという目標から出発し、まず小さな場合を探究し、次に行基本変形のもとで満たすべき性質によって行列式を定義してその一意性を証明し、置換による展開で構成する(転倒数と符号を用いた存在証明は星印つき)。ある節では行列式を、写像が箱(平行体)の体積を何倍にするかを表す量として解釈し、省略可能な節でラプラス展開と余因子行列による逆行列の公式を扱う。トピックはクラメルの公式、行列式の計算速度、キオの方法、射影幾何学、コンピュータグラフィックスである。

第5章:相似

最終章は、空間からそれ自身への変換を表す最も単純な行列は何かを問う。星印つきの多項式の因数分解と複素数の復習の後で複素数のスカラーに切り替え、相似、対角化可能性、固有値、固有ベクトル、特性多項式、固有空間を定義し、相異なる固有値に属する固有ベクトルが一次独立であることを証明する。省略可能な節では、基底ベクトルの「ストリング」による冪零写像の研究、最小多項式、ケーリー=ハミルトンの定理、ジョルダン標準形を扱う。トピックはべき乗法、安定な人口分布、ページランキング、線形漸化式、連成振動子である。

付録

短い付録では、証明に不慣れな読者のための予備知識として、命題、量化子、証明の技法(帰納法を含む)、集合・関数・関係を復習している。

主要概念

第1章:連立一次方程式

  • ガウスの方法:行の交換、定数倍、行の加減を用いて、解を変えずに方程式系を階段形にする方法。
  • 一般解 = 特殊解 + 同次解:連立一次方程式の解集合は、一つの特殊解に対応する同次方程式系のすべての解を加えたものになる。
  • 簡約階段形:与えられた行列と行同値なただ一つの完全に簡約された行列で、行同値類を代表する。

第2章:ベクトル空間

  • ベクトル空間:一連の条件を満たす加法とスカラー倍をもつ集合。線形結合についての結果が一度にあらゆる場合に当てはまる。
  • 一次独立:集合のどのベクトルも他のベクトルの線形結合になっていないこと。
  • 基底と次元:一次独立で空間を張る集合が基底であり、有限次元空間ではどの基底も同じ大きさをもつ。
  • 行階数と列階数の一致:どんな行列でも行空間と列空間の次元は等しい。

第3章:空間の間の写像

  • 同型写像:単射かつ全射の線形写像。有限次元空間が同型であるのは次元が等しいときに限る。
  • 階数・退化次数の定理:線形写像では、値域の次元と零空間の次元の和が定義域の次元に等しい。
  • 行列表現:選んだ基底に関して線形写像を記録する行列。行列の積は写像の合成を表す。
  • 基底の変換:正則行列によって表現を変換すること。同じ写像を表す行列どうしは行列同値である。

第4章:行列式

  • 関数としての行列式:行基本変形のもとで定められた振る舞いをし、単位行列で値1をとる、正方行列上のただ一つの関数。
  • 置換による展開:行列式を置換にわたる符号つきの和として表す公式で、存在と、行列とその転置が同じ行列式をもつことを証明する。
  • 大きさとしての行列式:行列式の絶対値は、変換が箱の体積を何倍にするかを与える。

第5章:相似

  • 相似な行列:同じ変換を異なる基底に関して表す行列 T と PTP⁻¹。
  • 固有値と固有ベクトル:t(v) = λv を満たすスカラー λ と零でないベクトル v。特性多項式の根から求める。
  • ジョルダン標準形:冪零ストリングから組み立てられるほぼ対角な表現で、有限次元複素空間のすべての変換に存在する。

批判的分析

長所

  • 証明への意図的な橋渡し。 序文は「発展的」アプローチを掲げている。すべての結果は証明されるが、理論は詳しい例に囲まれている。証明は第1章――ガウスの方法の正しさと簡約階段形の一意性――から始まるので、第2章で抽象ベクトル空間に移るときも急な転換にはならない。
  • 行列より先に線形写像。 第3章は行列を写像の表現として定義し、行列の積を合成から導くので、学生は演算がなぜそう定義されるのかを理解でき、基底の変換も自然に続く。
  • 段階的で豊富な演習。 序文によれば各小節におよそ二十数題の演習を置くことを目指しており、日常的な確認から込み入った証明まで幅がある。推奨問題の見本には欄外に印がつけられ、学術誌や競技会から採ったパズル的な問題も区別して示されている。解答は著者のサイトで別冊として入手できる。
  • 省略可能な応用・計算のトピック。 各章は産業連関分析、投票のパラドックス、マルコフ連鎖、コンピュータグラフィックス、ページランキングなどの短いトピックで終わり、それぞれに演習と参考文献への案内がある。一回の授業や学生のプロジェクトに収まる長さである。

短所

  • 実数スカラー中心で、内積の理論は限定的。 第5章まではベクトル空間は実数上で扱われる。直交性は ℝⁿ と省略可能な節にしか現れず、一般の内積空間、スペクトル定理、特異値分解の体系的な扱いはない。
  • 発展的内容は星印つきで圧縮されている。 冪零性、最小多項式、ジョルダン標準形は最後の省略可能な節にまとめられている。序文にあるような典型的な1学期の授業計画では、第5章のうち固有値を扱う前半までしか到達しない。
  • 数値線形代数は少ない。 「計算の精度」と「行列式の計算速度」のトピックはピボット選択、条件数、演算回数を紹介するが、LU分解や反復法は展開されない。
  • 独特な番号付けと長い章。 節は「Three.IV.2」のように参照され、五つの章はいずれも長いため、短い章が多い教科書に比べて特定の結果を探しにくいことがある。

本書で扱う応用

応用は各章末のトピックに限られている。第1章は数式処理システム(Sage の例つき)、レオンチェフの産業連関分析、丸め誤差とピボット選択、キルヒホッフの法則による電気回路網と交通網を扱う。第2章は体、結晶格子、投票のパラドックス(多数決の循環の分解)、次元解析を扱う。第3章には最小二乗法による最良近似直線、線形写像の幾何学、魔方陣、マルコフ連鎖、直交行列が含まれる。第4章はクラメルの公式、演算回数、キオの方法、射影幾何学、コンピュータグラフィックスを、第5章はべき乗法、安定な人口分布、ページランキング、線形漸化式(フィボナッチ数など)、連成振動子を取り上げる。

コースにおける位置づけ

このコースの書目の中で、Hefferon は Gilbert Strang の _Introduction to Linear Algebra_や Anton らの _Elementary Linear Algebra_と並ぶ位置にある。後二者は一般に計算中心の入門書とされる。Hefferon も連立方程式、ベクトル空間、写像、行列式、固有値という同様の範囲を扱うが、すべての結果を証明し、行列を線形写像から導くので、証明の力も養いたい学生の最初の授業に向いている。行列計算や数値的な練習をもっと積みたい学生は、他の入門書の一冊と組み合わせるとよい。

Horn と Johnson の Matrix Analysis は研究レベルの行列理論の参考書であり、入門課程の後に読むべきものである。Hefferon の第5章(相似、固有値、省略可能なジョルダン標準形)はそこへの最も直接的な準備となるが、内積に関する扱いが限られているため、その前にそれらの話題をさらに学ぶ必要がある。

本書の使い方

本書は標準的な学部初年度の線形代数の授業向けに書かれており、典型的な読者は微積分を少なくとも1学期学んだ2〜3年生である。証明を書いた経験は前提とせず、付録で論理、証明技法、集合の記法を復習している。序文の授業計画は、読者が One.II 節の基本的なベクトルの内容をすでに学んでいることを想定している。

1学期の授業はその計画に沿って進められる。第1章(I節とIII節)、第2章、第3章の基底の変換まで(I〜V節)、第4章の I.1〜I.3 節と II 節、第5章の II 節(相似、対角化可能性、固有値)である。星印つきの小節――ジョルダン標準形、射影、ラプラス展開――は、長めの授業や独習での自然な発展となる。各章から一つか二つのトピックを発展学習として選び、できれば Sage のようなソフトウェアを使うとよい。何よりも、多くの演習、特に欄外に印のある問題に取り組み、別冊の解答を見る前に計算か証明で各答えを正当化せよという著者の助言に従うべきである。

版と出典

本ガイドは Jim Hefferon の Linear Algebra 第4版(序文の日付は2020年4月、PDF作成は2020年5月)に基づき、著者の公式ページ(https://hefferon.net/linearalgebra/、ファイルは著者のバーモント大学のサイトに置かれている)からリンクされた無料PDFを読んで作成した。記号表、序文(方針、演習、応用、授業計画、助言)、目次全体、五つの章すべての導入部、すべての節と小節の見出し、全体にわたる番号付き定理・補題・系の主張、各トピックの冒頭部分、付録の構成を参照している。