01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Brown, J. W., & Churchill, R. V. (2014). Complex Variables and Applications (9th ed.). McGraw-Hill Education.
章の要約
第9版は12章、本文約460ページに前付けがあり、参考文献、領域の変換の表、索引がつく。各章は数ページずつの短い番号つきの節に分かれ、その多くの後に「例」とだけ題された節が続く。出版社の説明によれば、この版は以前の版の内容と文体を保ちつつ、定理の説明を拡充し、議論をより詳しくし、話題をそれぞれ独立した節に分けている。
第1章:複素数
和と積、代数的性質、ベクトルと絶対値、三角不等式、共役複素数、指数形式、積と商の偏角、複素数の累乗根、複素平面の領域。
第2章:解析関数
関数と写像(最初の例は w = z²)、無限遠点を含む極限、連続性と導関数。コーシー=リーマンの方程式と、極座標の場合を含む微分可能性の十分条件を導く。続いて解析関数と調和関数を定義し、一意に定まる解析関数と鏡像の原理で章を閉じる。
第3章:初等関数
指数関数と対数関数、対数の分枝と導関数、べき関数、三角関数と双曲線関数およびその零点と特異点、逆三角関数と逆双曲線関数。
第4章:積分
実変数の複素数値関数の積分から、曲線(コンター)と線積分へ進み、分枝切断を含む例や積分の絶対値の上界も扱う。原始関数と、単連結領域および多重連結領域に対するコーシー=グルサの定理を証明つきで扱う。さらにコーシーの積分公式とその拡張、リウヴィルの定理と代数学の基本定理、最大値の原理へと続く。
第5章:級数
数列と級数の収束、テイラー級数とローラン級数(いずれも証明つき)、べき級数の絶対収束と一様収束、べき級数の和の連続性・積分・微分、級数表示の一意性、べき級数の積と商。
第6章:留数と極
孤立特異点と留数、コーシーの留数定理、無限遠点における留数、孤立特異点の三つの型、極における留数、解析関数の零点、孤立特異点の近くでの関数のふるまい。
第7章:留数の応用
ジョルダンの補題、迂回路、分岐点のまわりの迂回、分枝切断に沿った積分を使って、フーリエ解析に現れるものを含む広義積分を計算する。さらに三角関数を含む定積分、偏角の原理、ルーシェの定理、逆ラプラス変換を扱う。
第8章:初等関数による写像
一次変換、変換 w = 1/z、一次分数変換(上半平面の写像を含む)。続いて指数関数、sin z、z²、z^(1/2) の分枝による写像、多項式の平方根、リーマン面への入門がある。
第9章:等角写像
角とスケール因子の保存、局所逆写像、調和共役、そして調和関数と境界条件が等角写像のもとでどう変換されるか。
第10章:等角写像の応用
定常温度(半平面と四分円での問題)、静電ポテンシャル、流れ関数を用いた2次元流体の流れ(角のまわりの流れと円柱のまわりの流れを含む)。
第11章:シュワルツ=クリストッフェル変換
実軸を多角形の上へ写す写像、三角形と長方形、退化した多角形、そして物理的な例として、スリットを通る水路の流れ、段差のある水路の流れ、導体板の縁のまわりの静電ポテンシャル。
第12章:ポアソン型の積分公式
ポアソンの積分公式と円板に対するディリクレ問題、関連する境界値問題、シュワルツの積分公式、半平面に対するディリクレ問題、ノイマン問題。
主要概念
第1〜3章:複素数と関数
- 指数形式と累乗根:複素数を絶対値と偏角で表し、積・累乗・累乗根を計算する。
- コーシー=リーマンの方程式:複素微分可能性を特徴づける、実部と虚部に対する条件。
- 調和関数:ラプラス方程式の解で、解析関数と密接に結びついている。
- 対数の分枝:一価の対数の選び方とその導関数。
第4〜5章:積分と級数
- 線積分:平面内の経路に沿った複素関数の積分。
- コーシー=グルサの定理とコーシーの積分公式:複素積分の中心的な結果。
- リウヴィルの定理と最大値の原理:積分公式から導かれる帰結。
- ローラン級数:負べきを含む展開で、孤立特異点の近くで成り立つ。
第6〜7章:留数
- 留数定理:孤立特異点における留数から線積分を計算する。
- ジョルダンの補題と迂回路:実の広義積分を計算するための技法。
- 偏角の原理とルーシェの定理:曲線の内部の零点と極を数える。
第8〜12章:写像と境界値問題
- 一次分数変換:(az + b)/(cz + d) の形の写像で、円と直線を円と直線に写す。
- 等角写像:角を保つ写像で、調和関数と境界条件を変換する。
- シュワルツ=クリストッフェル変換:上半平面を多角形領域に写す写像。
- ポアソンの積分公式:円板に対するディリクレ問題の解。
批判的分析
長所
- 応用のために選ばれた理論。 出版社によれば、本書は応用において重要な理論を展開するよう設計されており、とくに留数と等角写像の応用に重点を置いている。目次もそれを裏づける。留数に2章、写像とその利用に4章が充てられ、定常温度、静電気、流体の流れ、ディリクレ問題とノイマン問題で終わる。
- 中心的な定理には完全な証明がある。 テイラーの定理、ローランの定理、コーシー=グルサの定理には、それぞれ独立した証明の節がある。読者は議論を確かめられ、教員はそれを飛ばすこともできる。
- 小さく分けられた節。 ほとんどの節は2〜5ページである。出版社は、第9版で話題をそれぞれの節に分けたことを改善点として挙げており、読む範囲を正確に指定しやすい。
- 参照用の道具。 領域の変換の表が付録にまとめられ、第8〜11章で使える。脚注は微積分のより微妙な結果について他の教科書を参照させるので、微積分の背景が異なる学生も議論についていける。
短所
- 高度な微積分の結果は証明されず引用される。 微妙な結果について脚注で他書を参照させていることは、基礎の一部を他の本に委ねていることを示す。自己完結した厳密な展開を求める学生には、より理論的な教科書が必要である。
- 内容は古典的。 話題はポアソン型の公式、リーマン面、シュワルツ=クリストッフェル変換までで、リーマンの写像定理や整関数の理論といった話題は節の題に現れない。
- 視覚的・計算機的な教科書ではない。 目次は解析的な技法を重視している。幾何的な図や計算機での実験から学ぶのが得意な学生は、副読本がほしくなるかもしれない。
コースにおける位置づけ
Brown と Churchill の本は、このコースのリストにおける、解法と応用を中心とした標準的な最初の授業用教科書である。Matthias Beck らの A First Course in Complex Analysis は、最初の授業のための無料で短い代替であり、二冊を並べて読むことができる。Brown と Churchill は、留数の応用、等角写像、物理的な境界値問題にはるかに深く踏み込む。Tristan Needham の Visual Complex Analysis は同じ主題を幾何的な図を通じて展開し、本書の第1〜3章や第8〜9章と並行して読むとよい。Ian Stewart と David Tall の Complex Analysis は、厳密さと位相により注意を払う中級の教科書である。
より理論的な2番目の授業には、Lars Ahlfors の Complex Analysis と Stein と Shakarchi の Complex Analysis が、この主題を純粋数学として展開する。それらは Brown と Churchill が引用にとどめる事柄を証明し、等角写像の理論などの話題をより深い水準で扱う。物理学や工学に進む学生には、Brown と Churchill の第7章と第10〜12章が最も直接に役立つ。純粋数学に進む学生は、Ahlfors や Stein–Shakarchi の前の計算的な基礎として本書を使うとよい。
本書の使い方
本書は、複素変数関数の理論と応用についての入門授業のための教科書として書かれており、ふつうは数学・物理学・工学の学生が微積分の後に履修する。実際の前提は多変数の微積分である。証明への入門があれば証明の節に役立つが、必須ではない。
- 1学期の中心的な道筋: 複素数から留数とその応用までの第1〜7章。第4章と第5章の証明の節は、最初は軽く読めばよい。
- 応用のコース: 第7章の後、写像とその物理的な利用のために第8〜10章を読む。工学や数理物理の授業では第11章または第12章を加える。付録の変換の表を手元に置いておく。
- 練習: 数多くの「例」の節が演習の手本になる。第7章では、経路の選び方が自然にできるようになるまで、留数を使った広義積分をいくつも計算する。
- 独学: 短い節を一つずつ読み、その演習に取り組んでから先へ進む。幾何的な直観には Needham の本を、中心的な理論の別の説明には Beck らの無料の教科書を使う。
