01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Graff, G., & Birkenstein, C. (2024). "They Say / I Say": The Moves That Matter in Academic Writing (6th ed.). W. W. Norton & Company.
章の要約
第6版(2024年1月刊、ペーパーバック448ページ)は、おなじみの構成を保っている。序文、序論、4部19の短い章、少数の読み物、引用法についての付録、テンプレート索引、作者・題名索引である。各章は学術的な文章における「動き(ムーブ)」を示す言い回しを題名とし、学生が自分の文章に合わせて使える文の型であるテンプレートと、それに続く練習問題を示す。Norton によれば、この版では個人的な体験談の使い方についての章、生成AIについての章、出典の示し方の節、15以上の新しい例、新しい読み物が加わった。ペーパーバックには電子書籍、オンラインのチュートリアル、動画へのアクセスが付いている。
序文と序論:学術的な会話を分かりやすくする/会話に参加する
序文は、学術的な文章をその会話的な原点に立ち返らせることで分かりやすくするという本書の狙いを説明する。序論は中心となる考えを示す。よい学術的文章は他者が述べたことに応答するものであり、「彼らは言う/私は言う」というパターンはテンプレートとともに身につけることができる。書評者たちは、序論がテンプレートは独創性を損なうという反論にも答え、創造性は確立された形式の想像力豊かな使い方にあると論じていることを指摘している。
第1部 第1–3章:「彼らは言う」——他者が言っていることから始める/「彼女の論点は」——要約の技術/「彼自身の言葉では」——引用の技術
第1部は、論証を、それが応答する見解を示すことから始める方法、他者を公正に要約する方法(書き手が一時的に他者の世界観に入り込む「信じるゲーム」)、そして引用をそれ自体に語らせるのではなく、導入し説明する枠組みのなかに置く方法を教える。
第2部 第4–8章:「賛成/反対/なるほど、でも」——三つの応じ方/「それでも」——自分の主張と彼らの主張を区別する/「懐疑的な人は反論するかもしれない」——反対者を文章に置く/「私の経験では」——個人的な体験談で論証に力を与える/「だから何?誰が気にする?」——なぜ重要かを述べる
第2部は書き手自身の立場へと進む。賛成する、反対する、あるいはその両方を同時に行う。自分の見解がどこから始まるかをはっきり示す。反論を予期する。そして、その論証がなぜ重要なのかを説明する。新設の第7章は、逸話、観察、生きた経験が信頼性を築き、個人的な物語を公共の議論に結びつける方法を、ミシェル・アレクサンダーやマイク・ローズらの例とともに示す。
第3部 第9–12章:「その結果」——各部分をつなぐ/「そんなふうに言っていいの?」——学術的な文章は自分の声を捨てることではない/「誤解しないでほしいが」——メタコメンタリーの技術/「本当に言いたいのは」——本格的に推敲する
第3部は、まとまり(つなぎの言葉と接続の工夫)、学術的な言葉と日常の言葉を混ぜること、メタコメンタリー(読者の解釈を導く、自分の文章についての注釈)、そして本格的な推敲を扱う。
第4部 第13–19章:「ご指摘はもっともです」——授業の議論に参加する/この書き手を動かしているものは何か——会話を読む/「しかし複数の資料が示すように」——会話としての調査/「よく調べてみると」——文学をめぐる会話に参加する/「データが示すのは」——自然科学における文章/「これを分析せよ」——社会科学における文章/「わかるように説明して……」——あなたの「彼らは言う」がボットであるとき
最後の部は、これらの動きを特定の場面に応用する。授業での議論、課題として読むテクストを論争への寄与として読むこと、調査、文学批評、そして自然科学と社会科学における文章である。新設の第19章はチャットボットをもう一つの「彼らは言う」として扱う。Norton はこの章を、生成AIツールを透明性をもって使い、事実と虚構を見分け、チャットボットに「彼らは言う/私は言う」の方向で問いかけ、反対者を見つけたり「だから何?」に答えたりするための助言だと説明している。
読み物と付録
読み物には、グラフ自身の「隠れた知性(Hidden Intellectualism)」、ミシェル・アレクサンダー『新しいジム・クロウ』の抜粋、そして高等教育における障害、「オール・ライヴズ・マター」という言葉、刑務所でのインターネット利用、オンラインで過ごす時間、人工知能と仕事をめぐる短いエッセイが含まれる。新しい付録「彼らの言うことを引用する」は、MLA と APA の書式のクイックスタート・ガイドである。
主要概念
第1–2部:「彼らは言う」と「私は言う」
- 会話に参加する:自分の論証を、ある話題について他者が述べたことへの応答として組み立てること。
- テンプレート:要約する、違いを示しつつ賛成する、ある点を認めるといった修辞的な動きを明示する、応用のきく文の型。
- 信じるゲーム:ある見解に応答する前に、その見解をもつ人々が述べるように要約すること。
- 反対者(ネイセイヤー):予想される反論を自分の文章に置き、それに答えること。
- 「だから何?誰が気にする?」:論証がなぜ、誰にとって重要なのかを述べること。
第3–4部:全体をまとめる
- メタコメンタリー:読者の解釈を導くために、書き手が自分の主張について注釈する文。
- 言葉の使用域を混ぜる:自分の声を手放さずに、学術的な言葉と日常の言葉を組み合わせること。
- 会話としての調査:資料を、書き手が参加する論争の参加者として扱うこと。
- 「彼らは言う」としてのAI:チャットボットの出力を権威としてではなく、要約し、検証し、応答すべき一つの見解として扱うこと。
批判的分析
長所
- 一つの考えを一貫して適用する。 『Journal of Biblical and Theological Studies』に掲載された第4版の書評は、学術的な文章は常により大きな会話のなかで行われるという主張がすべての章を貫いていること、そしてテンプレートが他の手引きにはない貢献であることを指摘している。
- 短く実践的。 章は短く、動きごとに構成されているので、学生は下書き中に必要な章を開くことができる。Norton は本書を「一緒にやってみる」種類の本と呼び、テンプレート索引によって文の型を探しやすくなっている。
- 相手を公正に示す。 応答する前に要約すること、反対者を置くことを重視する姿勢は、自分とは異なる見解に真剣に向き合う習慣を育てる。同じ書評によれば、著者たちは序文でこの倫理的な側面を強調している。
- 時代に合わせた更新。 第6版は個人的な語りと生成AIについての章を加え、動きを討論、読解、調査、いくつかの学問分野に応用している。
短所
- テンプレートが定型になりうる。 ジェイソン・アーサーとアン・ケース=ハルファティは『Composition Forum』(2008年)での初版の書評で、テンプレートを順に埋めていっても弱い、あるいは一貫しない論証が生まれうること、また議論を二者の対立として組み立てることは多くの声をもつ会話を単純化しすぎるおそれがあることを論じた。学生は文の型を出発点として扱うべきである。
- 論理や根拠の手引きではない。 同じ書評者は、序文が論証の論理的原則を教えないと明言していることを指摘している。推論と根拠の評価には別の教材が必要である。
- ジャンルや執筆プロセス全体についての記述は少ない。 推敲の章と分野別の章を除けば、本書は計画、下書き、特定のジャンルを順に案内するものではなく、本格的なレトリックの教科書やハンドブックを置き換えるのではなく補うものである。
- 新しいAIの章は早く古くなる。 ツールと教育機関の方針が変わっていくからである。
コースにおける位置づけ
このコースでは、文章を重視するどの授業にも添えられるコンパクトな伴走書である。オープン教科書の『Writing Guide with Handbook』は執筆プロセス、ジャンル、文法、出典表示をはるかに詳しく扱い、『Reading Literature and Writing Argument』は文学テクストを通じて論証を教える。本書はそのどちらとも並べて使え、資料を要約し応答するための文レベルの動きを補う。第16章は文学的な論証を書く学生に直接役立つ。
より進んだ学習には、ブースらの『The Craft of Research』が、会話としての調査という考えを、問い、問題、主張、根拠についての本格的な手引きへと発展させている。スティーヴン・トゥールミンの『議論の技法』は、本書が意図的に扱わない推論の分析を与えてくれる。
本書の使い方
前提となる授業は必要なく、本書は学生の書き手、特に大学1年次の作文の授業を主な対象としている。章は課題と並行して読めるほど短い。
- まず序論と第1部を読む。 会話のモデルと、以後のすべての章が前提とする要約と引用の技術が示される。
- 最初の論証エッセイの前に第2部に取り組み、 推敲の際には反対者についての第6章と「だから何?」についての第8章を使う。
- 推敲中は第3部を使う。 特にメタコメンタリーの第11章と本格的な推敲の第12章。
- 第4部は必要に応じて選ぶ。 読解の課題には第14章、研究論文には第15章、特定の分野で書くときは第16〜18章、授業でAIツールが認められている場合は第19章。
- 練習問題と読み物で練習する。 自分の文章でテンプレートを使う前に他の書き手が行っている動きを見つけ、言い回しは写すのではなく自分に合わせて変える。
テンプレート索引と引用法の付録があるので、本書は学位取得までのあいだ手早く参照できる本としても役立つ。
