01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Meakins, F., Green, J., & Turpin, M. (2018). Understanding Linguistic Fieldwork. Routledge.
章の要約
本書はRoutledgeのUnderstanding Languageシリーズの一冊で、全12章・約290ページに、付録(本書で言及される主な言語の地図、練習問題の解答、用語集と略語一覧)と索引が続く。著者はいずれもオーストラリアの言語を研究している。Felicity Meakins(クイーンズランド大学)はヴィクトリア川流域の諸言語と、英語が先住民の言語に及ぼす影響を、Jennifer Green(メルボルン大学)は辞書編纂、マルチモーダルな語り、手話を、Myfany Turpin(シドニー大学)は詩、歌、民族生物学、言語復興を研究している。出版社は本書を、倫理的かつ責任ある方法で質の高いデータを集めることを学生に教える本と説明し、植民地拡大を経験した国々(オーストラリア、アメリカ合衆国、カナダ、南米、アフリカ)でのフィールドワークに焦点を当てているとしている。構成は二つに分かれ、フィールドワークの実践についての4章の後に、言語学の個別分野におけるフィールドワークについての7章が続く。
第1章:序論
冒頭の章(約24ページ)は本書とこの分野を紹介する。倫理と言語コミュニティとの協働への重視は、出版社による本書の説明全体に通じている。
第2〜4章:フィールドワークの計画、機材と録音、データの管理・注釈・アーカイブ化
実践の中心部分。フィールド調査の計画、機材の選択と録音、そしてその後のデータの管理、注釈付け、アーカイブ化を扱う。各章は23〜25ページである。
第5章:音声学と音韻論
専門的な方法を扱う章の最初のもので、言語の音体系を記述するためのフィールドワークを扱う。
第6章:形態統語論
文法記述のための方法。最も長い二つの章の一つ(約32ページ)である。
第7章:意味のフィールドワークと辞書編纂
意味の調査と辞書の編纂を扱う、もう一つの32ページの章。出版社は音韻・文法とともにこれを中心的な記述分野に数えている。
第8章:手話とジェスチャー
手話言語とジェスチャーのためのフィールドワークの方法(約31ページ)。出版社が引用するKeren Riceは、手話がフィールドワーク文献では通常扱われない分野の一つであると指摘している。
第9〜11章:子どもの言語習得、接触言語、言語芸術
Riceが、今日の言語ドキュメンテーションでは重要な位置を占めながらフィールドワークの手引きではめったに扱われないと述べる三つの分野。フィールドで子どもが言語をどう習得するかを調べること、接触言語の研究、そして言語芸術の研究である(Myfany Turpin自身の研究は詩と歌を対象としている)。
第12章:結びの言葉
4ページの短い結びの章。
主要概念
第1〜4章:フィールドワークを行う
- 倫理的で責任あるフィールドワーク:関わる話者とコミュニティの権利と目標を尊重するデータ収集。
- 言語コミュニティとの協働:研究上の協力関係。出版社によれば、その成果は言語学的な理解を深めるだけでなく言語復興も支えうる。
- 録音と機材:質の高い録音を支える実際的な選択。
- 注釈付けとアーカイブ化:録音データを使えるものにし、将来のために保存すること。
第5〜11章:専門的な方法
- 音韻記述と文法記述:言語の音体系と形態統語論を記述することを目的としたフィールドワーク。
- 意味のフィールドワークと辞書編纂:語の意味を調べ、辞書を作ること。
- 手話とジェスチャー:視覚的なモダリティにおける言語とコミュニケーション。
- 子どもの言語習得:調査対象の言語を子どもがどう習得するかの研究。
- 接触言語:接触を通じて生まれたり変化したりする言語。英語と先住民の言語についての著者自身の研究とも重なるテーマである。
- 言語芸術:歌、詩など、言語の芸術的な使用。
批判的分析
長所
- 多くのフィールドワーク入門書より広い範囲。 出版社が引用するRiceは、本書を現在理解されているフィールドワークへのワンストップの入門書と呼び、手話、子どもの言語習得、接触言語、言語芸術をフィールドワーク文献では通常扱われない分野として特筆している。第8〜11章はこれらに本書のおよそ3分の1をあてている。
- コミュニティの文脈。 同じく引用されたAnthony Woodburyは、ドキュメンテーションが行われるコミュニティの文脈への配慮を称賛している。出版社も倫理と、言語コミュニティとともに作られた資料の例を強調している。
- 学生への実践的な支援。 解答付きの練習問題、用語集、言及される言語の地図、解説付きの読書案内がある。
- バランスのとれた分量。 専門分野の章はほぼ同じ規模(22〜32ページ)で、特定の分野に偏っていない。
短所
- 地域的な視点。 著者の経験はオーストラリアの言語にあり、出版社が示す焦点も植民地拡大を経験した国々である。それ以外の環境でフィールドワークを準備する学生は、コミュニティとの関係や倫理についての助言を補う必要がある。
- マニュアルではなく入門。 1分野1章では、たとえば文法の聞き取り調査や音声分析の本格的な手引きの代わりにはならない。そのために本書は読書案内を示している。
- 古くなりうる細部。 2018年の刊行であり、機材、データ管理、アーカイブ化の章は変化の速い技術と慣行を扱っている。
コースにおける位置づけ
本書はこのコースでフィールドワークへの最もやさしい入門書であり、扱う話題の幅も最も広い。Claire BowernのLinguistic Fieldwork: A Practical Guideは、計画からアーカイブ化までを扱い、音韻・形態・統語・談話にわたる聞き取り調査や、文法書・辞書・テキストの執筆も扱う実践的なハンドブックである。自分でフィールドワークを行う学生にとって、本書と並行して、あるいは次に読むのに自然な本である。Thomas PayneのDescribing Morphosyntaxは記述文法の概要として構成されており、第6章が導入する作業を支える。
分析の面では、Paul KroegerのAnalyzing Grammarがフィールドデータに必要な、未知の言語の形態・統語分析を訓練し、Viveka VelupillaiのAn Introduction to Linguistic Typologyは世界の言語がどう異なるかを示して、フィールドワーカーが何に注目すべきかを知る助けになる。William CroftのTypology and Universalsは、類型論の方法と理論を扱う高度な解説である。
本書の使い方
本書は、フィールドワークや言語ドキュメンテーションの授業を受ける学部生・大学院生、そして初めてのフィールド調査を準備するすべての人に向いている。専門分野の章は音韻論・形態論・統語論の基本概念を前提としているので、言語学入門の授業を受けておくと役立つ。
読み進め方の例:
- 全員にとっての中心: フィールドワークや録音を始める前に、第1〜4章を順に読む。
- プロジェクトに合わせて専門の章を選ぶ: 言語記述なら第5〜7章、手話、習得、接触、言語芸術についてのプロジェクトなら第8〜11章。
- 最後に第12章を読む。
練習問題に取り組み、巻末の解答で確認するとよい。フィールドに出る前に、第3〜4章の録音と注釈付けの助言を小さなプロジェクト、たとえば他の言語の話者との録音で練習してみる。解説付きの読書案内を使って自分のプロジェクトの分野の専門的なマニュアルを探し、本格的な実践ハンドブックとしてBowernを組み合わせるとよい。本書はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスによるオープンアクセス版でも提供されており、Directory of Open Access Booksに掲載されている。
