01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Velupillai, V. (2012). An Introduction to Linguistic Typology. John Benjamins.
章の要約
本書は約520ページ、全13章からなり、その後に二つの付録(言語類型論に関係するウェブサイトの選択リストと、引用したすべての言語のマクロデータ)、用語集、文献一覧、事項索引が続く。どの章も同じ形をとる。その章で引用される言語の一覧と地図、本論の各節、手話言語についての節、要約、キーワード、練習問題である。各章には、選んだ特徴の世界的な分布を示す特徴地図も少なくとも一つ含まれる。出版社は本書を、World Atlas of Language Structures(WALS。本書は2011年のオンライン版を用いる)の成果を一貫して用い、ピジン・クレオール言語を体系的に取り入れた最初の入門書として紹介している。
第1章:序論
類型論が何を扱い、言語学の他の下位分野とどう関わるかを説明し、想定読者を述べ、本書の約束事を説明する。例文には一次資料を示すこと、基本的な概念にも短い定義を与えること、さらなる学習のために文献の手がかりを示すことである。
第2章:類型論と普遍性
類型論と分類を定義し、ピジン、クレオール、混合言語についての注記と手話言語についての注記を加えたうえで、普遍性とは何か、それがどう述べられるかを問う。
第3章:方法論
「サンプリング、データベース、そして類型論者は何言語を話すのか?」という副題をもつ。データと世界の言語の状況、サンプリング、WALSのような類型論データベース、そして手話言語に特有の方法論上の問題を扱う。
第4章:音韻論
音素、音節、韻律(子音、母音、音節、超分節的特徴)を扱い、続いて音韻類型論、すなわち言語間の分節音の目録と音節のパターンを扱う。
第5章:形態論
形態類型論を扱い、手話言語の形態論で締めくくる。
第6章:語彙とその類
語形成(派生、複合、そして南北アメリカで特に多いことが地図で示される名詞抱合のような過程)と、品詞の類型論を扱う。
第7章:名詞の範疇と統語
文法上の性(2から約20まで)や一致といった名詞句の範疇と、名詞句の統語を扱い、手話言語におけるこれらの範疇で終わる。
第8章:動詞の範疇
動詞句についての短い注記の後、テンス(遠近の度合いを含む)、アスペクト、その他動詞に標示される範疇を扱い、テンス体系の特徴地図を示す。
第9章:単文
節の参与者、すなわち意味役割、語用論的役割、文法関係とアラインメント(主語と目的語)、そして単文の構造を扱う。
第10章:語順
基本語順と句の内部の語順、語順の自由な言語、ピジン・クレオール言語と手話言語における語順を扱う。
第11章:複文
Haspelmathの概説に依拠した等位接続(接続詞のないもの・あるもの、接続詞が一つのもの・二つのもの)と、言語が節を結びつける他の方法を扱う。
第12章:発話行為とポライトネス
平叙文、疑問文、命令文を扱い、続いてポライトネスとそれを保つための手段、たとえば間接発話行為や敬語を取り上げる。代名詞のポライトネスの区別については、ピジン・クレオール言語と他の言語を比較したデータを示す。
第13章:言語変化
文法化(意味の希薄化をはじめとする構成的過程、一方向性と脱文法化についての短い注記)と、接触による変化および言語圏を扱う。言語圏としてはバルカン、環バルト海、エチオピア・エリトリア、南アジアなどが取り上げられる。
主要概念
第1〜3章:基礎
- 類型論:系統とは独立に、構造的な特性によって言語を分類すること。
- 普遍性:すべての言語、あるいは大多数の言語に共通する性質についての言明。特徴間の含意関係を含む。
- サンプリング:比較が語族や地域によって偏らないよう言語を選ぶこと。
- 類型論データベース:多くの言語について特徴をコード化したWALSのような大規模な集成。
第4〜8章:音、語、範疇
- 分節音の目録:言語が用いる子音と母音の集合。その大きさは言語によって大きく異なる。
- 品詞:言語が区別する語の類。言語によって異なる。
- 文法上の性と一致:名詞の分類と、他の語へのその標示。
- テンス、アスペクト、遠近の度合い:出来事の時間的な位置づけ、出来事の内部構造、現在からの段階的な隔たり。
第9〜13章:節、使用、変化
- アラインメント:自動詞と他動詞の項を言語がどのようにまとめるか。
- 基本語順:主語・目的語・動詞の支配的な順序と、句の内部の要素の順序。
- 敬語:聞き手や指示対象への敬意の文法的な標示。
- 文法化と言語圏:語彙項目が文法的要素になること、そして接触によって近隣の言語が共有する特徴。
批判的分析
長所
- すべての領域を扱う。 13の章が、音韻論と形態論から、品詞、名詞句と動詞句、単文と複文、語用論、変化へと進むので、1冊で言語の多様性についての授業全体を支えられる。
- データに基づき、視覚的である。 本書はWALSとその後のデータベースに基づき、各章に言語地図と少なくとも一つの特徴地図を載せ、読者がデータをたどれるよう一次資料を示している。
- 扱われることの少ない言語を取り込む。 ピジン・クレオール言語が全体を通じて他の言語と比較され(語順やポライトネスの章など)、すべての章に手話言語の節がある。
- 学習のための作り。 各章は要約、キーワード、練習問題で終わる。用語集と、引用したすべての言語のマクロデータを収めた付録によって、参考書としても使える。
短所
- ある程度の予備知識が前提となる。 序論は、少なくとも一般言語学と音声学・音韻論の入門授業を履修した読者を想定している。ただし基本用語にも短い定義が与えられている。
- 理論よりも広さ。 類型論の方法と普遍性の説明に充てられるのは2章(第2〜3章)である。有標性、階層、機能的説明をめぐる理論的な議論が必要な学生には、より上級の扱いが必要になる。
- データベースのある時点の姿。 本書は2011年時点のWALSと当時利用できたデータベースを反映している。個々の特徴の最新の値はオンラインで確認すべきである。
コースにおける位置づけ
本書は類型論とフィールドワークのリストにおける幅広い入門書であり、最初に読むのに自然な一冊である。Croftの Typology and Universals は方法と理論に関する上級の次の段階で、含意的普遍性、有標性、階層、プロトタイプを示し、機能的・通時的説明を主張する。先にVelupillaiの第2〜3章を読んでおくとよい。Kroegerの Analyzing Grammar は未知の言語の形態論と統語論を分析する技能を養うもので、第5〜11章とよく組み合う。
フィールドワークについては、Velupillaiが予想すべき構造の幅を示し、Payneの Describing Morphosyntax がその幅を特定の言語を記述するための問いに変える。Bowernの Linguistic Fieldwork と、Meakins, Green and Turpinの Understanding Linguistic Fieldwork は、話者とともにデータを集める実践を扱う。
本書の使い方
本書は、言語の多様性と類型論の授業、そして類型論的な視点をもつ形態論・統語論の授業のために作られており、出版社はフィールド言語学者の手引きにもなるとしている。読者は基本的な音声学、音韻論、文法用語を知り、行間グロス付きの例文を読めることが望ましい。
- 中核: 方法を扱う第1〜3章と、多くの類型論の授業の形態統語的な中核である第5〜10章。
- 必要に応じて加える: 音韻類型論を扱うなら第4章、節の結合と語用論なら第11〜12章、文法化と地域類型論なら第13章。
- 手話言語とクレオールの節: 飛ばさずに読むこと。他の入門書と本書が最も異なる部分である。
各章の練習問題とキーワードに取り組み、特徴地図と並行してWALS Onlineで特徴を調べ、最新のデータと各論点の背後にある言語を確認するとよい。読みながら、言語の付録と用語集を参考資料として使うとよい。
