01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Croft, W. (2003). Typology and Universals (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
本書は「ケンブリッジ言語学教科書」シリーズの約340ページの教科書で、全9章に、参考文献、引用言語の地図、人名・言語・事項の各索引が付く。出版社によれば、第2版は全面的に書き直され、意味地図モデルや統語論的論証の問題といった新しい方法、特定の種類の普遍性についてのより深い説明をめぐる現在の議論、類型論的アプローチと生成文法的アプローチの比較が加えられた。章は方法から出発し、古典的な普遍性を経て、有標性、階層、プロトタイプへ進み、最後に統語論、言語変化、そして類型論そのものの位置づけを論じる。
第1章:Introduction
冒頭の章は類型論と生成文法との関係を位置づけ、続いて方法の実際面、すなわち言語間比較、言語間の比較可能性の問題、言語サンプリング、データ源を扱う。
第2章:Typological Classification
この章は類型論的分類で何が分類されるのかを問い、形態類型論の節を含む。分類によって明らかになる普遍性への下地を作る。
第3章:Implicational Universals and Competing Motivations
無制限の普遍性と含意的普遍性、競合する動機づけを扱う。語順と接辞順の普遍性についてのより深い説明を論じ、類型論・普遍性・生成文法の関係にあらためて戻る。
第4章:Grammatical Categories: Typological Markedness, Economy and Iconicity
類型論的有標性を展開し、次に経済性と類像性を説明として取り上げる。頻度とそれらの深い説明、語順と音韻における類型論的非対称性も論じられる。
第5章:Grammatical Hierarchies and the Semantic Map Model
有生性と定性の階層、意味地図モデル、概念空間・構造的コード化・行動的ポテンシャルの関係、文法関係の階層を扱う。
第6章:Prototypes and the Interaction of Typological Patterns
文法範疇における類型論的有標性のパターンをプロトタイプと結びつける。類型論的プロトタイプ、文法関係、品詞、その他のプロトタイプと有標性の逆転を論じる。
第7章:Syntactic Argumentation and Syntactic Structure in Typology
類型論と統語論的論証を取り上げ、次に類像性・経済性と統語構造、最後に類型論的な「共謀」とコミュニケーション上の動機づけを論じる。
第8章:Diachronic Typology
最後の本論の章で、状態から過程へと視点を移す。文法化と、共時態から通時態を推論する問題を扱う。
第9章:Typology as an Approach to Language
類型論者のように考えるとはどういうことか、記述・説明・一般化、そして類型論とソシュール的二分法および進化モデルとの関係を述べる短い結びの章である。
主要概念
第1〜3章
- 言語サンプリング:言語間の一般化が信頼できるように、比較する言語を選ぶこと。
- 含意的普遍性:ある言語が一つの性質を持てば別の性質も持つ、という形の言明。無制限の普遍性と対をなす。
- 競合する動機づけ:複数の圧力が一つのパターンを異なる方向に引く説明。
第4〜6章
- 類型論的有標性:文法的対立の一方が、他方より構造的・行動的に制限されるという非対称性。
- 経済性と類像性:有標・無標の範疇の形を説明するための二つの動機づけ。
- 意味地図モデル:一つの文法形式が担いうる機能どうしの関係を表す方法。
- 類型論的プロトタイプ:諸言語を通じて特定される、範疇の最も典型的な成員。
第7〜9章
- 統語論的論証:言語内部の根拠から、何が統語構造や関係に当たるかをどう決めるかという問題。
- 文法化:語彙項目や構文が文法形式になる過程。
- 通時類型論:言語変化の過程によって共時的パターンを説明すること。
批判的分析
長所
- 方法の教科書と理論の一体化。 目次から、本書は最初の章で比較可能性、サンプリング、データ源を扱ってから説明に進むことがわかる。読者は普遍性がどう確立されるかを見てから、どう説明されるかを見る。
- 説明の道具立ての体系的な網羅。 含意的普遍性、競合する動機づけ、有標性、経済性、類像性、階層、意味地図モデル、プロトタイプがそれぞれ章の流れの中に位置を占め、機能的類型論の主要な手段について一貫した説明を与える。
- 生成的な代案への対応。 出版社は類型論的アプローチと生成的アプローチの比較を強調しており、目次でも第3章で生成文法に戻り、第7章で統語論的論証を扱う。
- 通時態が説明の一部。 文法化を含む通時類型論に一章が充てられており、著者が言語変化を共時的普遍性の説明源と見ていることがわかる。
短所
- 単一の立場。 出版社は本書を機能的・通時的説明を主張するものとして紹介している。構造類型の中立的な目録を求める読者には、コースの他の本のほうが適している。
- 初学者には難しい。 形態論と統語論の実用的な知識が前提で、長い参考文献を含む約340ページでは、基本概念の解説に割く余地は少ない。
- フィールドワークや文法記述の手引きではない。 本書は比較と説明を扱うため、言語の記述を学ぶ学生には記述文法やフィールドワークの教科書が別に必要である。
コースにおける位置づけ
類型論とフィールドワークのリストの中で、言語がどう記述されるかをすでに知っている読者にとって、クロフトは理論と方法の中核である。Velupillai の An Introduction to Linguistic Typology は、多くの言語のデータを用いて類型論の各領域を概観する、より入りやすい本で、最初の一冊に向く。Kroeger の Analyzing Grammar と Payne の Describing Morphosyntax は文法分析と記述を教えるもので、クロフトはそれを前提としている。
フィールドワークの本(Bowern の Linguistic Fieldwork、Meakins・Green・Turpin の Understanding Linguistic Fieldwork)は、データの収集と記録を扱い、言語間のパターンの説明は扱わない。クロフトは、類型論の概説と文法記述の教科書を読んだ後、個別の普遍性や文法化についての研究論文に進む前に読むとよい。
本書の使い方
形態論と統語論の基礎があり、できれば類型論の入門を一度終えた上級の学部生や大学院生に向く。語順、有標性、階層、文法関係について書く学生や、機能類型論の立場を一箇所で確認したい隣接分野の研究者にも適する。
まず第1〜3章を読む。後の章が依拠する方法と含意的普遍性の概念がここで確立される。第4〜6章は説明の中核で、順に読むのがよい。生成統語論との関係に関心があれば第7章を、言語変化に関心があれば第8章をじっくり読む。第9章は短く、本書の立場の要約として使える。例を確認するときは、引用言語の地図と言語索引を手元に置く。小さなサンプルで言語間の主張を一つ自分で検証してみると、方法がどう働くかがわかる。
