01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Cooke, E. (2020). Land Law (3rd ed.). Oxford University Press. Clarendon Law Series.
章の要約
本書はOUPのClarendon Law Seriesの一冊で、出版社はこのシリーズを「友人への手紙のように」書かれ、脚注や制定法の引用を最小限にとどめたものと説明している。第3版は全9章、本文約265ページである。著者はソリシタの資格を持ち、レディング大学で教え、2008年から2015年までイングランド・ウェールズ法律委員会(Law Commission)で財産法・家族法・信託法を担当する委員を務めた。2015年から2019年までは第一層審判所(不動産部)土地登記部門の首席裁判官を務め、その後は上級審判所(土地部)の裁判官である。新版では控訴院と最高裁判所の最近の判決、および法律委員会の改革提案が取り込まれている。本書全体を2つのテーマが貫いている。複雑さの管理と、静的安全(すでに権利を持つ者の保護)と動的安全(買主の保護)の緊張である。
第1章:土地法とは何か
冒頭の章は、財産、物的財産(real property)、土地、財産権とは何かを問い、1925年財産法(Law of Property Act 1925)による土地の定義から出発し、1998年人権法を通じた欧州人権条約の影響を検討する。本書のテーマを導入し、土地法を、競合する権利の類型と競合する価値のせめぎ合いとして示す。
第2章:土地に対する財産権
ここでは、保有(tenure)と不動産権(estate)という封建的起源が説明され、あわせてフリーホールド、リースホールド、コモンホールドという所有形態、コモン・ローとエクイティの区別の始まり、土地に対する権利を組織する方法としての信託の発展が扱われる。所有に至らない権利が紹介され、次章への準備として、1925年以前のコモン・ロー上およびエクイティ上の権利の対抗力に関するルールが示される。
第3章:今日の土地法と登記
前半の章の中で最も長い章で、1925年の立法がコモン・ロー上およびエクイティ上の不動産権と権益を定義し直すことで複雑さにどう取り組んだか、対抗力がどのように管理されたか(信託が中心的役割を果たす)、法が隠れた・書面化されていない所有権をどう扱ってきたか、そして登記された土地における不可侵性(indefeasibility)の考え方を説明する。最後に、2002年土地登記法の運用について2014年に始まった法律委員会のプロジェクトと、その成果である2018年の報告書と勧告を取り上げる。
第4章:土地に対する権益の設定と取得:言葉と意思
この章は、契約と移転の方式、書面と捺印証書、そして電子的な不動産取引への移行を扱い、続いて方式要件を迂回する非公式な経路として、結果信託、擬制信託、プロプライエタリー・エストッペルを紹介する。最後は家族財産に特有の難しさで締めくくられる。
第5章:土地の共同所有
共同所有は、土地信託(trust of land)を通じて検討される。それが生じる家族、事業、相続という場面、合有(joint tenancy)と共有(tenancy in common)とその見分け方、合有の分離(severance)、そして1996年土地信託・受託者選任法(TLATA)である。紛争と破産も検討され、章は静的安全と動的安全の問題に立ち返り、登記されていない所有権益を保護するための登記上の制限(restriction)の利用にも触れる。
第6章:モーゲージ
モーゲージを担保権として説明し、その現在の形態、借主と貸主の権利と救済、主に借主を保護するための契約関係への裁判所の介入を扱う。住宅所有者や、モーゲージの影響を受ける第三者の保護が論じられ、章は圧力と不当威圧(undue influence)で終わる。
第7章:リース、ライセンス、コモンホールド
この章はリースとライセンスを区別し、相互に依存する物件のための所有構造であり、家主と借主の力の不均衡に対処するものとしてのコモンホールドを説明する。さらに、リースの種類、期間の確定性、設定と登記、リースの約款、救済と責任の承継、終了、そして居住の保障とリースホールドの買取権(enfranchisement)という制定法上の制度を扱う。
第8章:付従的権利
地役権、プロフィタ・プランドル(profits à prendre)、約款(covenant)がまとめて扱われる。地役権の性質と設定(黙示や時効取得を含む)、その消滅、積極的約款と制限的約款およびその対抗力に関する複雑なルール、1925年財産法84条による解除や変更、そして法律委員会の改革提案である。
第9章:権原の相対性はどうなったのか
最終章は権原の相対性と時効取得(adverse possession)を扱う。かつては基本的だったが、2002年法のもとで権原が登記されている場合には、その重要性ははるかに小さくなった。時効取得の要件、占拠者の権原をめぐる人権関連の判例、登記された土地での扱い、そしてこの概念がなお意味を持ち続ける理由を説明し、2002年法の影響の評価で終わる。
主要概念
基礎(第1〜3章)
- 静的安全と動的安全:既存の権利者と買主の競合する要求。本書全体のテーマ。
- 保有と不動産権:現代の土地所有の源流となる封建的概念。
- コモン・ローとエクイティ:財産権の2つの源泉と、エクイティから生まれた信託。
- 不可侵性:登記が登記された権原に与える保護。
土地の取得と共有(第4〜5章)
- 方式とその例外:書面と捺印証書、そして結果信託・擬制信託とプロプライエタリー・エストッペルという経路。
- 土地信託:イングランド法が共同所有を管理するための構造。
- 合有、共有、分離:共同所有の2つの形態と、一方から他方への転換。
土地に対する権利と土地の上の権利(第6〜9章)
- 担保としてのモーゲージ:債務を担保する財産権で、借主の保護を伴う。
- リースとライセンス:財産権と個人的な許可との境界線。
- コモンホールド:相互に依存する物件のための所有構造。
- 付従的権利:ある土地のために他の土地の上に成立する地役権、プロフィタ、約款。
- 権原の相対性と時効取得:権原をめぐる古い論理と、登記がその役割をどう縮小したか。
批判的分析
長所
- 手引書ではなく、つながりのある説明。 本書は、複雑さ、そして静的安全対動的安全という明示されたテーマを軸に、土地法の各部分がどう組み合わさるかを示そうとしており、第5章はこのテーマに明示的に立ち返る。そのため読者は、ルールを覚えるだけでなく、それを評価する視点も得られる。
- 簡潔さ。 9章、約265ページで、1925年の立法から時効取得まで、土地法の授業の中核をカバーしており、授業の早い段階で全体を通読できる。
- 制度に近い著者。 財産法担当の法律委員会委員、土地登記事件の裁判官としてのCookeの経験は、2002年法に関する法律委員会の2018年報告書や、地役権と約款についての改革提案への目配りに表れている。
- 独特の構成。 地役権、プロフィタ、約款を付従的権利としてまとめ、方式、非公式な信託、エストッペルを1つの章に置くことで、関連する法理を並べて見ることができる。
短所
- 授業用の教科書ではない。 Clarendonのスタイルは脚注と制定法の引用が少ないことを意味し、出版社の説明は教科書にあるような事例問題や学習支援の仕掛けに触れていない。典拠と演習のためには、なお教科書や判例・資料集が必要である。
- 圧縮された扱い。 他の本では数章を占める主題が、ここでは1章にまとめられている。第7章のリース、ライセンス、コモンホールド、第8章の地役権、プロフィタ、約款である。それぞれの詳細は限られる。
- 版の時期。 第3版は2020年のものであり、その後の判例や法律委員会の提案の進展は他の資料で確認する必要がある。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースの土地法の本の中で、短く論説風の概観にあたる。ClarkeとGreerの Land Law Directions は、図、判例要約、章末問題、試験の助言を備えた本格的な入門教科書であり、Martin Dixonの Modern Land Law は具体例を交えた簡潔な叙述型の教科書である。どちらも主教材になりうるが、Cookeは科目の全体像をつかむために早めに読むか、後で主題をまとめ直すために読むとよい。McFarlane、Hopkins、Nieldの Land Law: Text, Cases, and Materials は、Cookeの形式が省いている判決、制定法、学説の抜粋を補ってくれる。
学術的な側では、GrayとGrayの Elements of Land Law が不動産権と権益の詳細な説明に、財産という概念そのものについての考察と比較法的な素材を組み合わせており、Megarry & Wade: The Law of Real Property は歴史的背景を含めて現代法を詳しく論じた体系書である。Cookeのテーマ、とりわけ静的安全対動的安全は、どちらを読む際にもよい準備となる。
本書の使い方
本書は、初めて土地法に取り組む読者のために書かれている。土地法や財産法の科目を始める法学部生、法学転向課程の学生、そして細部をまとめて把握するのが難しいと感じている読者である。イングランドの法制度と信託の基本的な知識があると役立つが、信託は第2章で紹介される。
実践的な読み方:
- 授業の前か開始時に: 第1〜3章を1、2回で通読する。歴史、1925年の枠組み、そして後のすべての主題が前提とする登記制度が得られる。
- 主題ごとに: 方式、家族の住居をめぐる信託、エストッペルの講義の前に第4章を、共同所有とともに第5章を、モーゲージ、リース、地役権と約款とともに第6〜8章を、時効取得とともに第9章を読む。そのうえで、判例と事例問題の演習のために授業の教科書に移る。
- 復習とレポートのために: 授業の終わり近くに全体を読み返す。本書のテーマは、登記の目的、占有者の保護、改革の必要性についての論述問題に使える枠組みとなる。
本書が論じる改革提案、たとえば2002年土地登記法に関する2018年の報告書を追いかけ、2020年以降それがどうなったかを確認すること。
