01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Foster, N. (2023). EU Law Directions (8th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第8版は15章からなり、制度法、訴訟手続と救済、実体法の三部に分かれている。本文の前に判例表と法令表が置かれ、本文は索引の前まで500ページ弱である。出版社は Directions シリーズを、初めて科目に取り組む学生のための案内書と位置づけ、場面を設定する導入、強調表示された判例の抜粋、主要な論点の紹介、自己テスト機能を柱としている。オンライン資料には、即時にフィードバックが得られる自己テスト問題、章末問題への取り組み方の提案、EU法の歴史における重要な出来事の年表が含まれる。著者の Nigel Foster は、バッキンガム大学、ウェールズ大学、ザールラント大学ヨーロッパ研究所でヨーロッパ法の教授を務めた。
第1部 制度法(第1~5章)
連合がどのように築かれ、その法がどのように機能するかを扱う約150ページである。
- 第1章:欧州連合の設立と発展。 連合の成立と拡大をたどる歴史的な導入。
- 第2章:連合の諸機関。 諸機関とその役割。
- 第3章:権限の移譲、権限配分と立法。 加盟国が連合に権限を付与する仕組み、権限の配分、立法の過程。
- 第4章:EU法の法源と形式。 基本条約、立法その他の法源と、EUの行為がとる法的形式。
- 第5章:EU法の優位。 抵触する国内法に対してEU法が優先するという原則で、制度法の部の最後に置かれている。
第2部 EU法における訴訟、執行と救済(第6~9章)
EU法が裁判所でどのように適用され執行されるかを扱う約115ページである。
- 第6章:先決裁定(TFEU第267条)。 国内裁判所がEU法の問題を司法裁判所に付託する手続。
- 第7章:加盟国に対する条約違反訴訟。 加盟国が義務を果たさない場合に提起される手続。
- 第8章:救済:直接効果、間接効果と国家責任。 個人が国内裁判所でEU法を援用し、違反した国家に損害賠償を請求する方法。
- 第9章:欧州司法裁判所における直接訴訟。 連合の行為の有効性を争う訴えなど、司法裁判所に直接提起される訴訟。
第3部 実体法(第10~15章)
最も長い部で、約230ページである。
- 第10~11章:物の自由移動I:関税と税の障壁/物の自由移動II:非関税障壁。 物に関する二章で、前者は関税と差別的課税、後者は数量制限その他の非関税障壁を扱う。
- 第12章:人の自由移動。 連合内での人の自由な移動。
- 第13章:EU競争政策と競争法への入門。 題名のとおり入門として示されている。
- 第14章:差別禁止法。 連合の差別禁止に関する法。
- 第15章:ブレグジット。 英国の連合からの離脱を扱う最終章。
主要概念
第1部:制度法
- 諸機関:連合が行動する際に用いる機関と、その役割。
- 権限:加盟国が連合に付与した権限と、その限界。
- EU法の法源:基本条約、立法その他、EU法がとる形式。
- 優位:抵触する国内法に対するEU法の優先。
第2部:訴訟、執行と救済
- 先決裁定(TFEU第267条):国内裁判所と司法裁判所を結ぶ付託手続。
- 条約違反訴訟:条約上の義務を果たさない加盟国に対する手続。
- 直接効果と間接効果:個人が国内裁判所で、直接に、あるいは国内法の解釈を通じてEU法を援用する方法。
- 国家責任:EU法違反によって個人に生じた損害を賠償する加盟国の義務。
第3部:実体法
- 関税と税の障壁:物に課される関税と差別的な内国税。
- 非関税障壁:物の取引を妨げる数量制限その他の措置。
- 人の自由移動:連合内を移動する人の権利。
- 競争法:反競争的行為に関する連合の規則。
- ブレグジット:英国の離脱の法的過程とその帰結。
批判的分析
長所
- 明確な三段階の構成。 各部は、制度がどのように築かれているか、どのように執行されるか、何を規制するかへと進むので、読者は自由移動の規則に適用する前に、優位、先決付託、直接効果に出会うことになる。
- 手続と救済に独立した部。 先決裁定、条約違反訴訟、救済、直接訴訟を第2部に分けることで、EU法を国内裁判所で機能させる論点に専用の部が与えられている。
- ブレグジットに一章。 本書は英国の連合からの離脱についての一章全体で締めくくられる。これは、はるかに長い Barnard と Peers の本や Schütze の本も最後に置いている論点である。
- オンラインの支援。 即時フィードバック付きの自己テスト問題、章末問題への取り組み方の提案、EU法史の年表は、自習と復習に役立つ。
短所
- 実体法の扱いが選択的。 第3部の章題には、サービス、開業、資本、市民権、対外関係のいずれも現れない。これらの論点を教える授業では別の教科書が必要になる。同じリストにある Horspool、Humphreys、Wells-Greco の European Union Law には、サービス、市民権、対外関係の章がある。
- 競争法は概略のみ。 競争法の章は明示的に入門とされているので、競争法の本格的な科目を履修する学生には専門的な文献が必要である。
- 優位と直接効果が離れている。 優位は第1部の最後で、直接効果は第8章で扱われるので、二つの法理を並べて理解したい読者は部をまたいで読む必要がある。
- 版の時期。 第8版は2023年7月の刊行であり、その後の判例やブレグジット後の関係の展開は別の資料で確認する必要がある。
コースにおける位置づけ
本書は、出版社の言葉によれば、EU法に初めて取り組む学生のために書かれており、このコースのリストで最初に読む本として自然である。Horspool、Humphreys、Wells-Greco の European Union Law はもう一冊の簡潔な教科書で、サービス、市民権、環境法、対外関係を含むより多くの実体法分野を扱っており、実体法を広く扱う授業にとっては次の一冊、あるいは代わりの一冊としてよい。
Schütze の European Union Law は、基本条約と司法裁判所の論理を図表を多用して説明する単著の教科書であり、Barnard と Peers の European Union Law は専門家が各章を執筆する編著の教科書である。より深さを求める学生にとっては、どちらも主教科書となりうる。Craig と de Búrca の EU Law: Text, Cases, and Materials は一次資料と解説を組み合わせたもので、判決や条約規定そのものを読みたい学生に向いている。Lenaerts と Van Nuffel の EU Constitutional Law は憲法的・制度的な法についての体系書で、第1部と第2部の特定の論点を調べる際の参照用である。
本書の使い方
本書は、EU法に初めて触れる学部生、法学転換課程の学生、構造的な入門を必要とする他分野の読者に向いている。EU法を事前に学んでいる必要はないが、公法の基礎と裁判所や立法の仕組みについての理解があると役に立つ。
実際的な計画:
- 第1部を順に読む。 第1~5章は制度の語彙を与える。第1章は手早く読んでよいが、権限、法源、優位に関する第3~5章は中核である。
- 第2部を技術的な中核とする。 先決裁定に関する第6章と、直接効果と国家責任に関する第8章は、ほとんどすべてのEU法の授業に登場し、優位に関する第5章と並べて読む価値がある。
- 第3部はシラバスに合わせて選ぶ。 物に関する章(第10~11章)と人の自由移動(第12章)は実体EU法の共通の中核である。第13~15章は授業の必要に応じて読む。
- 欠けている部分は他の教科書で補う。 サービス、開業、資本、市民権については、リストにあるより詳しい教科書の一つを使う。
- オンライン資料を使う。 各章の後で自己テスト問題に取り組み、章末問題の答案を提案された取り組み方と比べ、年表を使って歴史を視野に入れておく。
