01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Barnard, C., & Peers, S. (Eds.). (2026). European Union Law (5th ed.). Oxford University Press.
章の要約
本書は、異なる専門家が執筆した編著の教科書である。公開されている目次には章に相当する項目が二十七あり、索引の前まででおよそ875ページに及ぶ。出版社は、本書がヨーロッパ各地の専門家を集めてEU法の主要な原則と視点を紹介すること、各章がEU法の予備知識のない学生にも読める一方で複雑な問題や論争にも踏み込んでいること、批判的なケース・スタディが主要な判例を要約していることを説明している。公開の目次には、章題とページ番号はあるが、章番号も節の見出しもない。そのため以下では、章を目次の順に、題名と出版社の説明をもとにグループごとに述べる。
基礎:序論、EUの発展、EUの政治機構、立憲主義と欧州連合(1~97ページ)
四つの章で本書が始まる。約10ページの序論、連合の発展の歴史、政治機構、そして連合が提起する憲法上の問題である。機構の章と歴史の章はそれぞれ30ページほどである。
立法と法秩序:EUにおける立法、国内法秩序におけるEU法の効果、EU法は国際法か、EU法の一般原則とEU行政法(98~237ページ)
これらの章は、連合がどのように法を作るか、EU法が国内法秩序の中でどう機能するか、国際法とどう関係するか、そして条約を補う一般原則を扱う。
権利と救済:EUにおける基本権、司法的保護とEUの救済手段(238~332ページ)
二つの章(約40ページと50ページ)で、基本権の保護と、個人や加盟国がどのように司法的保護と救済を得るかを扱う。
域内市場(333~534ページ)
域内市場のグループは「域内市場と市場統合の理念」で始まり、「物の自由移動」、「自然人の自由移動とEU市民権」、「法人の自由移動とサービスの提供」、「資本の自由移動」、「自由移動規則の例外」と続く。約200ページで、単独のまとまりとしては最大である。
競争と経済政策:競争法、国家補助と公共調達に関するEU法、経済通貨同盟(535~618ページ)
連合が競争と公的支出をどう規制するか、その経済・通貨の仕組みを扱う三つの章である。
政策分野:労働法と平等法、EU保健法、環境法、欧州消費者法、EU刑事法、移民と庇護(619~786ページ)
専門的な分野を扱う六つの章で、出版社は、機構法と四つの自由に加えるものとして提示している。
対外関係とブレグジット:EUの対外行動、ブレグジット:法的側面(787~875ページ)
最後の二つの章は、連合の対外関係と、英国の離脱の法的側面を扱う。対外行動は約55ページで、単独の章としては最長である。
第5版の新しい内容
出版社は、それぞれがどこに現れるかを述べずに、次の点を挙げている。市民権と法の支配に関する新しい判例、移民・庇護協定(EU Pact on Migration and Asylum)の扱い、デジタル単一市場の拡充された扱い、EUの自律性の原則とその価値の展開についての追加、そしてEUと英国の関係の「リセット」を含むブレグジットの更新である。
主要概念
基礎と法秩序
- 立憲主義:連合の憲法的な性格(目次で四番目の章)。
- 国内法秩序におけるEU法の効果:EU法が国内法秩序の中でどのように機能するか。
- 一般原則とEU行政法:EU法の一般原則と、連合の行政を規律する法。
- EUの自律性とその価値:出版社によれば新版でより多く扱われる原則。
権利、救済、域内市場
- 基本権と司法的保護:権利の保護と利用できる救済。
- 四つの自由:物、自然人、サービスと法人、資本、そして自由移動規則の例外。
- EU市民権:自然人の自由移動とあわせて扱われる。
政策と対外関係
- 競争法、国家補助、公共調達:市場での行動と公的支援についての規則。
- 経済通貨同盟:連合の通貨と経済の仕組み。
- 専門的な政策分野:労働と平等、保健、環境、消費者保護、刑事法、移民と庇護。
- EUの対外行動とブレグジット:連合の国際的な役割と離脱の法的帰結。
批判的分析
長所
- 専門家による執筆。 出版社は専門家による複数執筆のテキストと説明しており、各主題にその分野で働く執筆者がいることになる。編者は Catherine Barnard(ケンブリッジ大学)と Steve Peers(ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ)である。
- 一冊での幅広い範囲。 目次は機構と法秩序から四つの自由を経て、競争、保健、刑事、対外関係の法まで及ぶので、一般的な学部の授業にも、より専門的な授業にも一冊で対応できる。
- 読みやすさを意図した構成。 出版社は、すべての章がEU法の予備知識のない学生向けに書かれ、図や批判的なケース・スタディで支えられていると述べている。
- 最新性。 新版の紹介は、移民・庇護協定、デジタル単一市場、ブレグジット後の関係の「リセット」に触れている。
短所
- 分量。 索引の前まででおよそ875ページあり、大部のテキストであるため、特定の授業にすべての章が必要になるわけではない。
- 複数の執筆者。 章ごとに執筆者が異なるため、深さや文体が章によって異なりうる。一つの続いた議論を好む読者は、単著のテキストのほうが追いやすいかもしれない。
- 詳しい目次は公開されていない。 本稿で参照できた情報には章題しか載っていないため、節のレベルの詳細は完全な目次で確認するのがよい。
- 英国に寄った最終章。 ブレグジットの章は、英国を中心にした授業で最も重要になる。
コースにおける位置づけ
Barnard と Peers の本は、このEU法のリストにある二つの大部な学部向け教科書の一つである。Schütze の European Union Law は単著の選択肢で、三部構成という特徴的な構造をとる。Barnard と Peers は同じ範囲を別々の寄稿で扱い、保健法、消費者法、刑事法、移民と庇護などの章を加えている。Foster の EU Law Directions はこの科目を初めて学ぶ学生向けの入門テキストで、最初の読書として適している。Horspool、Humphreys、Wells-Greco の European Union Law は簡潔な Core Text である。
Craig と de Búrca の EU Law: Text, Cases and Materials は判決と学術文献の抜粋を収めており、授業が一次資料に依拠する場合に加えるべき本である。Lenaerts と Van Nuffel の European Union Constitutional Law は連合の憲法・機構法に関する体系的な概説書(treatise)で、発展的な学習に役立つ。
本書の使い方
出版社は、本書をすべての学部のEU法の授業のためのものとして紹介し、すべての章がEU法の予備知識のない学生にも読めると述べている。
実践的な進め方は次のとおりである。
- 中核: 基礎と法秩序の章(1~237ページ)、続いて域内市場のまとまり(333~534ページ)。標準的な授業のほとんどがこれに含まれる。
- 権利と競争: 基本権と司法的保護の章(238~332ページ)、および競争の章(535~591ページ)は、中核に続けて読むとよい。
- シラバスに応じて任意: 専門的な政策の章(保健、環境、消費者、刑事法、移民と庇護)、経済通貨同盟、対外行動、ブレグジットは、授業が扱うときに読めばよい。
- 演習: 批判的なケース・スタディを覚えるべき主要判例の出典として使い、図を機構の手続を追うために使う。
