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Before European Hegemony: The World System A.D. 1250–1350(ヨーロッパ覇権以前:もうひとつの世界システム 1250–1350年) cover

歴史学

歴史学

Before European Hegemony: The World System A.D. 1250–1350(ヨーロッパ覇権以前:もうひとつの世界システム 1250–1350年)

Janet L. Abu-Lughod

英語原題: Before European Hegemony: The World System A.D. 1250–1350

13世紀から14世紀初めにかけて北西ヨーロッパから中国まで広がっていた、相互に結びついた交易世界を論じたジャネット・アブー=ルゴドの研究。都市を分析単位とし、ヨーロッパの台頭以前にすでに機能する世界システムが存在したこと、そしてヨーロッパの優位ではなくその後の衰退こそがヨーロッパの支配への道を開いたことを論じる。

前提知識: 世界史またはグローバル・ヒストリーの講義。中世史やアジア史の知識があると望ましい。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
world historyworld-systemsmedieval tradeglobal historyindian ocean

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Abu-Lughod, J. L. (1991). Before European Hegemony: The World System A.D. 1250–1350. Oxford University Press.

章の要約

本書は14章からなり、本文は約370ページである(1989年の初版は参考文献と索引を含めて全443ページ)。世界経済史の再解釈の書である。出版社によれば、アブー=ルゴドは、近代の世界経済の起源は16世紀ではなく13世紀にあり、のちにそこから生まれたヨーロッパの体系とはまったく異なる体系だったと論じる。都市を分析単位とし、14世紀初頭の最盛期に北西ヨーロッパから中国まで広がっていた体系をたどり、その衰退とヨーロッパの覇権の台頭を説明する。各章は地理的に進み、ヨーロッパから出発して中東とインド洋を経て中国に至り、最後に体系全体へ戻る。

第1–2章:形成途上の体系の研究、古い帝国からの出現

第1章(3–40ページ)は問題と方法を示し、体系の地図を含む。『World History Connected』誌のスコット・ベイリー(Scott Bailey)による書評は、この章が体系を、重なり合う8つの交易圏に分け、西ヨーロッパ、中東、極東という3つのより大きな単位にまとめていると述べている。第2章(43–49ページ)は、体系が古い帝国から出現する過程を扱う短い章である。

第3–5章:ヨーロッパの下位体系

「シャンパーニュの大市の都市」「ブリュージュとヘント:フランドルの商業・工業都市」「ジェノヴァとヴェネツィアの海の商人」は、大市、織物都市、地中海の海上勢力を通して体系の西端を描く。

第6–7章:東方への道

「東方への3つのルート」(137–151ページ)と「モンゴル人と北東航路」(153–184ページ)は、ヨーロッパとアジアのあいだのつながりに目を向ける。ベイリーは、本書がこの世界体系へのモンゴル人の貢献に多くの紙幅を割いていると述べている。

第8–9章:中東

「シンドバードの道:バグダードとペルシア湾」と「奴隷スルタン朝下のカイロの独占」は中東を扱う。ベイリーは中東を、体系の両端を結ぶ決定的な通路だと説明している。

第10–13章:インド洋と中国

「インド洋の体系:3つに分かれて」「インド亜大陸:あらゆる所への途上」「海峡と狭い道」「中国のあらゆる絹」は、叙述をインド、マラッカ海峡、中国へと進める。

第14章:13世紀世界体系の再編

最終章(352–373ページ)は体系全体に戻る。ベイリーの要約では、体系の衰退は、疫病などによるユーラシアの人口減少と、1368年のモンゴル人による中国の喪失に結びつけられ、アブー=ルゴドは、のちにヨーロッパが覇権を得ることに「内在的な歴史的必然性」はなかったとみている。

主要概念

第1–2章:体系

  • 世界体系:相互に結びついた交易地域の集まりを1つの経済として扱うもの。アブー=ルゴドは、イマニュエル・ウォーラーステインに結びつく16世紀の体系より早い、13世紀の例を示す。
  • 都市を分析単位とする:出版社の説明は、都市を作業上の単位に挙げている。

第3–13章:交易圏

  • 下位体系と交易圏:体系のヨーロッパ、中東、アジアの各部分と、その内部で重なり合う交易圏。
  • 戦略的な地点:ベイリーは、ある場所が世界貿易にとって戦略的かどうかを外部の地政学的要因が決めるというアブー=ルゴドの知見を伝えている。フランドル、カイロ、マラッカ海峡がその例である。

第14章:衰退

  • 必然性のない覇権:ヨーロッパの優位は不可避ではなく、先行する体系の崩壊のあとに生じたという議論。

批判的分析

長所

  • 世界史の別の出発点。 出版社は画期的な再解釈と呼ぶ。ベイリーは、本書は世界史の正典に位置を得ており、非常に読みやすく、知的に刺激的だと書いている。
  • ヨーロッパ中心主義への是正。 ベイリーによれば、本書は世界システム分析がヨーロッパ中心的だという批判に応えており、ヨーロッパの後進性と、非キリスト教世界やアジアの人々の相対的な科学的・文化的・金融的洗練を強調している。
  • 場所ごとに組まれた章。 目次はシャンパーニュの大市から中国の絹まで体系を順にたどるため、読者は1つの地域だけを取り出して学べる。

短所

  • 扱う範囲の欠落。 ベイリーは、東アフリカのスワヒリ海岸と西アフリカのマリ王国が、描かれた体系に含まれていないと指摘している。
  • 証拠と力点。 ベイリーは、交易の統計的証拠が乏しいという批判があること、ただし二次文献の豊富な参考文献がそれにある程度答えていること、また多くの世界システム論と同様に、経済が説明の大きな部分を担っていることを述べている。
  • 刊行時期。 本書の初版は1989年で、その後のユーラシアやインド洋の歴史研究は含まれていない。

コースにおける位置づけ

世界史・グローバル史の書目のなかで、アブー=ルゴドの本は特定の体系を扱う大学院レベルの研究書であり、他の多くの本は概説である。セバスティアン・コンラートの『What Is Global History?』はこのアプローチへの短い入門で、方法を知るにはここから始めるとよい。デイヴィッド・クリスチャンの『Maps of Time』はビッグヒストリーの概説であり、教科書(『The Earth and Its Peoples』『Traditions & Encounters』『Ways of the World』『Worlds Together, Worlds Apart』)は13・14世紀の年代的な文脈を与えてくれる。

ユルゲン・オスターハンメルの『The Transformation of the World』も、大部でテーマ別に組まれた比較研究で、時代は19世紀である。併せて読むと、グローバルな統合について前近代と19世紀の2つの見方が得られる。ジェイムズ・ゲルヴィンの『The Modern Middle East』は、アブー=ルゴドの扱う時期から数世紀あとに始まる。

本書の使い方

本書は、中世世界史の大筋と世界システムという考え方を知っている、歴史学・社会学・経済学の大学院生や上級学部生に向いている。ウォーラーステインになじみがあると助けになるが、ベイリーの書評が示すように、本書は彼への異議申し立てとして読むこともできる。

実用的な読み方は次のとおり。

  • 核心: 議論と地図を示す第1章と、結論の第14章。
  • 地域別の章: 授業の力点に応じて、第3–5章(ヨーロッパ)、第8–9章(中東)、第10–13章(インド洋と中国)を読み、それらをつなぐものとしてモンゴル人の章(第7章)を読む。
  • 能動的に読む: 各地域について、その都市を戦略的にしている要因を書き留め、次の地域と比較する。

交易圏の地図を手元に置き、より新しいユーラシア交易の研究と照らし合わせるとよい。