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The American Yawp:オープンなアメリカ史教科書 cover

歴史学

歴史学

The American Yawp:オープンなアメリカ史教科書

Joseph L. Locke; Ben Wright (editors)

英語原題: The American Yawp: A Massively Collaborative Open History of the United States

大学の授業や一般読者向けに、多数の研究者が共同執筆したアメリカ史の概説書です。先住民社会や植民地期から現代までを、社会・政治・経済・文化の幅広い視点からたどります。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとで公開され、利用や改変ができます。

前提知識: 不要。歴史学の履修経験は前提としない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
United States historyopen textbookhistorical surveyprimary sourceshistory

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Locke, J. L., & Wright, B. (Eds.). (2026). The American Yawp: A Massively Collaborative Open History of the United States (2nd ed., 2 vols.). Stanford University Press. Free official edition: https://www.americanyawp.com/

章の要約

現在オンラインで公開されている本文は2026年の「第2版」で、2026年7月1日にサイトの標準版となった。全28章を2巻に分け、第I巻(第1–14章)は再建期まで、第II巻(第15–28章)は1877年から始まる。各章は番号付きの節が並ぶ構成で、図版と脚注を備え、たいていはひとつの場面を描く導入から始まって結論で終わり、その後に推薦文献(第I巻ではさらにリンク付きの一次史料一覧)が続く。この版に合わせた史料集 American Yawp Reader が別にあり、全30章だった旧版もサイト上にアーカイブとして残されている。

第1章:American Origins(アメリカの起源)

第2版で書き直され、ヨーロッパ人到来以前とその前後の先住民の歴史だけを扱う章になった。最初のアメリカ人、起源と移住の伝承、大陸規模の変化、先住民の政治体制を取り上げ、ヨーロッパ人の到来はこの物語の第一章ではなく第二章の始まりだと述べて締めくくる。

第2–3章:Making an Atlantic World(大西洋世界の形成);Colliding Cultures(衝突する文化)

第2章はイベリア半島諸国の膨張を、帝国と資本主義のより広い歴史の中に置く。ヨーロッパの大西洋進出、1500年までの北アフリカと西アフリカ、奴隷貿易の起源、スペインによるアメリカ大陸と北米での征服と統治が扱われる。第3章はスペインに挑んだ他のヨーロッパ諸国、イングランドの植民、ジェームズタウンとニューイングランドを追い、大陸の大半はなお先住民が支配していたことを強調する。

第4–5章:British North America(英領北アメリカ);Colonial Society(植民地社会)

第4章は17世紀のイングランド植民地を、奴隷制と人種の形成、本国の動乱、新たな植民地、そして暴動・反乱・蜂起を扱う節を通してたどる。第5章は18世紀に移り、消費と大西洋交易、奴隷制と反奴隷制、政治的・宗教的自由の追求、入植に対する先住民諸国の対応、七年戦争とポンティアック戦争を論じる。

第6–8章:The American Revolution(アメリカ独立革命);A New Nation(新しい国家);The Early Republic(初期共和国)

独立革命は、その起源、原因、独立、戦争、そして帰結を通して描かれ、自由のための戦いが奴隷制を残したといった逆説が強調される。第7章はシェイズの反乱と憲法制定会議から、批准、ハミルトンの財政制度、フランス革命、奴隷制と西方拡大、信教の自由、1800年の選挙までの1780–90年代を扱う。第8章はジェファソン期、自由黒人と奴隷とされた黒人、先住民の力、1812年戦争を扱う。

第9–11章:Getting Forward(前進);American Democracy(アメリカの民主主義);Growth and Conflict(成長と対立)

第2版では、南北戦争前の数十年が主題別の章ではなく時系列で語られる。1815–1828年(市場革命、ジャクソン派の政治、第二次大覚醒)、1829–1837年(ジャクソン政権、無効化危機と銀行戦争、先住民の土地剥奪、綿花地帯、テキサス、改革運動と奴隷制廃止運動)、1838–1848年(都市と工業、新しい信仰と道徳改革、西方拡大と米墨戦争)の三つである。

第12–14章:The National Crisis(国家の危機);The Civil War(南北戦争);Reconstruction(再建)

第12章は、奴隷制の拡大がいかに地域間の対立を国家全体の危機に変えたかを、ゴールドラッシュや「綿花は王なり」から自由土地派の政治までたどる。第13章は、脱退から連邦のための戦争(1861–1863年)、さらに奴隷解放のための戦争(1863–1865年)へと進む戦争を追う。第14章は再建の政治、黒人にとっての自由の意味、女性、人種的暴力、経済発展、西部、再建の終わりを扱い、再建を単なる成功か失敗かではなく、覆された企てとして描く。

第15–17章:Capital and Labor(資本と労働);Geographies of Empire(帝国の地理);New Lives(新しい暮らし)

第II巻は1877年の鉄道大ストライキから始まり、産業資本主義の台頭、不平等、労働運動と人民党運動、アメリカの急進主義を扱う。第16章は南北戦争後の西部、インディアン戦争と土地割当、米墨国境地帯、1898年以降の海外帝国をひとつの物語として結びつける。第17章は移民、都市化、「新南部」の黒人の生活、ジェンダー・宗教・文化を扱う。

第18–19章:The Progressive Era(革新主義の時代);World War I and Its Aftermath(第一次世界大戦とその後)

第18章は、改革運動、女性運動、反トラスト政治、環境保護、ジム・クロウを、金ぴか時代の諸問題への応答として示す。第19章は、中立とメキシコへの介入から参戦、銃後、インフルエンザの大流行、十四か条、戦後処理までのアメリカを追う。

第20–22章:The New Era(新時代);The Great Depression(大恐慌);World War II(第二次世界大戦)

1920年代の章は共和党政権、消費文化、「新しい女性」と「ニュー・ニグロ」、原理主義、復活したクー・クラックス・クランを扱う。大恐慌の章は、その起源とフーヴァーから、人々の生活経験、ボーナス・アーミー、第一次・第二次ニューディールとその遺産へと進む。第二次世界大戦の章はアメリカの経験に焦点を当て、戦時経済、女性、人種、戦後世界の構想を取り上げる。

第23–25章:The Cold War(冷戦);The Affluent Society(豊かな社会);The Sixties(1960年代)

第23章は冷戦を地球規模の政治的・イデオロギー的闘争として扱い、軍拡競争、マッカーシズム、脱植民地化の節を含む。第24章はガルブレイスの1958年の著書から題名をとり、郊外、教育と公民権、ジェンダー、戦後の「コンセンサス」の政治を扱う。第25章は公民権運動、偉大な社会、ベトナム戦争の起源、この時代の社会運動を扱う。

第26–28章:The Unraveling(ほころび);The Triumph of the Right(右派の勝利);American Carnage(アメリカの殺戮)

第26章は、ベトナムと1968年からニクソン、脱工業化、環境運動、性をめぐる政治、カーター期を含む1970年代の「悲惨指数」までをたどる。第27章は新右派の台頭からレーガン政権、文化戦争、1990年代までを追う。第28章は2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃から始まり、2001年9月11日、大不況、オバマ政権期、トランプ時代の政治、パンデミックを扱う。

主要概念

第I巻:1877年以前(第1–14章)

  • 出発点としての先住民の歴史:本書は数千年にわたるアメリカ先住民の社会から始め、ヨーロッパ人の到来をその後の章として扱う。
  • 大西洋世界:帝国、交易、奴隷とされたアフリカ人の強制移住を通じて、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸を結びつけた体系。
  • 奴隷制と人種の形成:植民地の労働力が年季奉公人から奴隷とされたアフリカ人へと移り、人種奴隷制が法的に制度化された過程。
  • 市場革命:19世紀初頭に労働、政治、家族生活を作り変えた経済的変化。
  • 地域対立から国家の危機へ:西部への奴隷制拡大が連邦を分裂させた争点となったこと。

第II巻:1865年以降(第15–28章)

  • 資本と労働:19世紀後半の産業資本主義と、組織された労働者・農民・急進派との対立。
  • 帝国の地理:西部征服、国境地帯、海外帝国主義をつながった過程として扱う見方。
  • ニューディール:大恐慌への連邦政府の対応。その政策、人種と地域にかかわる限界、遺産が検討される。
  • 新右派:経済面では自由至上主義的で、宗教面では保守的な運動。1980年以降の政治を作り変えた。

批判的分析

長所

  • オープンライセンスで無料。 本文はCC BY-SA 4.0ライセンスで公開されており、オンラインで読めるほか、巻ごとのPDFをダウンロードして改変することもできる。編者によれば、300人を超える歴史家が執筆し、スタンフォード大学出版局が査読を行い、同出版局は低価格の印刷版も刊行している。
  • 最近の研究と幅広い対象。 序論は、政治と権力に加えて、トランスナショナルな視点、多様な声、抵抗の物語を取り込むと約束している。第2版の更新履歴はそれが実際に行われたことを示す。先住民の歴史だけを扱う新しい第1章、アフリカ・南西部・国境地帯、ジェンダー、障害、LGBTQの歴史の拡充、20世紀を通じた先住民の歴史の記述などである。
  • 2学期制の授業向けの構成。 2026年の再編では、教員の意見に基づいて各巻を15章から14章に減らし、1学期におおむね週1章で進められるようにした。南北戦争前の章は、旧版の主題別の章どうしの重複をなくすため、厳密な時系列で書き直された。
  • さらに学ぶための資料。 第I巻の各章には短い解説付きでリンクされた一次史料の一覧があり、すべての章に推薦文献が付いている。

短所

  • 学習補助の少ない叙述。 章には学習目標、復習問題、年表、用語集がなく、学生は自分で年表や問いを作る必要がある。
  • 改訂後の付属資料のばらつき。 現行版では一次史料一覧があるのは第I巻の章だけで、第II巻の章は文献情報で終わるため、1877年以降の史料には Reader が必要になる。
  • 集団の声。 各章にそれぞれ編者と多数の執筆者がいるため、本文はひとりの歴史家の議論というより総合的な叙述である。
  • 変化するテキスト。 編者はこれを「生きたテキスト」と呼ぶ。版によって本文、章番号、章題が変わっている(初版は全30章)ため、学生は授業と同じ版を読んでいるか確認すべきである。

コースにおける位置づけ

このコースの中で The American Yawp は、2学期分の授業全体を支えられる無料の通史である。エリック・フォーナーの Give Me Liberty! は同じ範囲を「自由」というひとつの主題でまとめた商業教科書で、どちらも主たる叙述として使え、Yawp は別の通史の記述を確かめる無料の手段にもなる。ポール・S・ボイヤーの American History: A Very Short Introduction はずっと短い解釈的な概観で、授業の前に読むか、全体の流れの復習に向いている。

ほかの本は物語の一部をより深く掘り下げる。ジェームズ・M・マクファーソンの Battle Cry of Freedom は米墨戦争から南北戦争の終結までを扱う本格的な一巻本の通史で、第11–13章の後に合う。急進的な黒人労働運動の研究である Detroit: I Do Mind Dying は第25–26章に対応する。エリック・フォーナーとリサ・マクガーが編んだ American History Now は、解釈がどう変わってきたかを論じる史学史の論文集で、通史の流れを把握してから読むのがよい。

本書の使い方

本書は事前の履修を前提とせず、一般読者と大学の通史の授業のために書かれている。各学期の計画:

  • 中心: 週1章を順に読む。章は長く(注を含めておよそ9,000–15,000語)、各章の議論は結論にまとめられている。
  • 第I巻: 第1–3章は、巻の残りが前提とする先住民と大西洋の枠組みを示す。授業がイングランド植民地から始まる場合でも飛ばさないこと。第9–11章は1815年から1848年までのひとつの続いた物語として読むのがよい。
  • 第II巻: 第14章(再建)は印刷版では両巻に収められており、1865年から始まる授業はここから入れる。第26–28章は最も新しい内容で、版ごとに最も変わりやすい。
  • 本文と並行して: 第I巻の各章についてリンクされた一次史料を二つか三つ読み、Reader の対応する史料も読む。レポートの文献選びには推薦文献を使う。
  • 独習: 各章の後に短い年表を作り、結論の主な議論を自分の言葉で書いておく。

版と出典

本ガイドは americanyawp.com で無料公開されている2026年第2版のオンライン本文(クリエイティブ・コモンズ BY-SA 4.0)に基づき、序論と全28章の節見出し、冒頭の節、結論、一次史料と文献情報の節、および初版からの変更点を説明するサイトの更新履歴を参照している。