01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Foner, E., & McGirr, L. (Eds.). (2011). American History Now. Temple University Press.
章の要約
本書は、アメリカ歴史学会のために編まれた、アメリカ史研究の最近の成果をめぐる18本の書き下ろし史学史論文を収める。全体は約440ページで2部からなり、アメリカの過去の各時代を論じる8本と、主要なテーマを論じる10本である。出版社の説明では、本書は『The New American History』の2つの旧版を引き継ぎつつ、執筆者を全面的に入れ替え、目次を組み直したもので、「解釈と論争の移り変わる境界線」をたどる。冒頭に巻編者の序文とシリーズ編者の序文があり、巻末に執筆者一覧が付く。各章の筆者は異なるため、論文ごとに文体や構成が違う。
第I部:アメリカの過去の諸時代(第1–8章)
第1章はアラン・テイラー(Alan Taylor)の「円と四角:植民地アメリカの広がり」(Squaring the Circles: The Reach of Colonial America)で、出版社が試し読み用に提供している章である。1721年にカトーバ(Catawba)の首長たちがサウスカロライナの王領総督に贈った鹿皮の地図から始め、植民地アメリカはヨーロッパ人の拡大だけでなく、先住民の外交と交易を通して見なければならないと論じる。第2章はウッディ・ホルトン(Woody Holton)の「アメリカ革命と初期共和国」、第3章はセス・ロックマン(Seth Rockman)の「ジャクソン時代のアメリカ」で、建国初期を続けて扱う。第4章はアダム・ロスマン(Adam Rothman)の「奴隷制、南北戦争、再建」で、19世紀半ばを扱う。
後の時代の筆者は次のとおり。ロバート・D・ジョンストン(Robert D. Johnston)「政治の可能性:1877年から1917年のアメリカの民主主義」(第5章)、編者の1人リサ・マギル(Lisa McGirr)「両大戦間期」(第6章)、メグ・ジェイコブズ(Meg Jacobs)「アメリカ政治の不確かな未来、1940年から1973年」(第7章)、キム・フィリップス=フェイン(Kim Phillips-Fein)「1973年から現在まで」(第8章)。出版社によれば、対象は植民地時代からレーガン時代に及ぶ。
第II部:アメリカ経験の主要テーマ(第9–18章)
第2部は、アメリカ史の全期間を通してテーマをたどる。
- 第9章 エレズ・マネラ(Erez Manela)「世界のなかのアメリカ」。
- 第10章 ローレンス・B・グリックマン(Lawrence B. Glickman)「『文化的転回』」。
- 第11章 ジョン・T・マクグリービー(John T. McGreevy)「アメリカの宗教」。
- 第12章 スティーヴン・アロン(Stephen Aron)「フロンティア、ボーダーランド、西部」。
- 第13章 サラ・T・フィリップス(Sarah T. Phillips)「環境史」。
- 第14章 スヴェン・ベッカート(Sven Beckert)「アメリカ資本主義の歴史」。
- 第15章 レベッカ・エドワーズ(Rebecca Edwards)「女性史とジェンダー史」。
- 第16章 メイ・M・ンガイ(Mae M. Ngai)「移民史とエスニック史」。
- 第17章 ネッド・ブラックホーク(Ned Blackhawk)「アメリカ先住民とアメリカ史研究」。
- 第18章 ケヴィン・ゲインズ(Kevin Gaines)「アフリカ系アメリカ人の歴史」。
出版社は、これらのテーマには、女性史、アフリカ系アメリカ人史、移民史という確立した下位分野に加え、資本主義の歴史、先住民史、環境史、宗教史、文化史、「世界のなかのアメリカ」が含まれると述べている。
主要概念
第I部:時代
- 史学史:ある時代についての歴史家の解釈がどう変わってきたかの歴史。各論文が概観しているのはこれである。
- 時代区分:本書の8つの時代別の章は、植民地期から現在までのアメリカ史を区切る(第1–8章)。いくつかの章題には、用いられる年代や転換点が含まれている。
第II部:テーマ
- 下位分野とアプローチ:女性史・ジェンダー史、アフリカ系アメリカ人史、移民史・エスニック史、先住民史、文化的転回(第10、15–18章)。
- 新しい分野:環境史、資本主義の歴史、世界のなかのアメリカ(第9、13、14章)。
- 地域と宗教:フロンティア、ボーダーランド、西部、そしてアメリカの宗教(第11–12章)。
批判的分析
長所
- 専門家による執筆。 出版社は、新しい世代の執筆者が新しい問いを立て、新しいアプローチを発展させたことを強調している。編者はコロンビア大学のエリック・フォーナー(Eric Foner)とハーバード大学のリサ・マギルである。
- 互いに補い合う2つの入り口。 同じ分野が、第1部では時代別に、第2部ではテーマ別に、2度概観される。読者はどちらからでも話題に近づける。
- ある書評の評価。 出版社が引用する『Journal of Southern History』の書評は、論文を思慮深いと評し、この本は研究キャリアのさまざまな段階にある歴史家に役立つとしている。
- 簡潔。 18本の論文で約440ページ。多くの論文はおよそ20〜30ページである。
短所
- 叙述的な通史ではない。 本書は、読者がすでにアメリカ史の大筋を知っており、歴史家がそれをどう論じてきたかを知りたいと想定している。出来事を学ぶためには使えない。
- 刊行年による制約。 論文は2011年向けに書かれており、出版社の説明では後の時代はレーガン時代で終わる。その後の新しい研究や、後に加わり形を変えた話題は本書の外にある。
- 設計上、扱いにむらがある。 18章のうち、専用の章をもつ下位分野と、もたないものがある。本書は選集であり、分野の完全な地図ではない。
コースにおける位置づけ
アメリカ史の書目のなかで、『American History Now』は歴史家たちの論争についての本である。ポール・ボイヤーの『American History: A Very Short Introduction』とオープン教科書『The American Yawp』は、この国の歴史の概説で、これらの論文が前提とする物語を与えてくれる。フォーナー自身の『Give Me Liberty!』は、自由の物語として語られた概説教科書である。ジェームズ・マクファーソンの『Battle Cry of Freedom』は、米墨戦争から南北戦争の終結までを描く1巻の叙述的歴史で、本書の第4章が扱う時期に当たる。
妥当な順序は、まず概説か叙述的な歴史を読み、次にここの関連する論文で解釈がどう変わったかを見て、最後に各論文が引く専門書や論文に進むことである。
本書の使い方
本書は、アメリカ合衆国史の概説をすでに修め、この分野の研究がどう組織され論じられているかを知りたい上級の学部生、大学院生、教員に向いている。史学史のセミナーや専門分野の試験の準備にも役立つ。
実用的な読み方は次のとおり。
- 時代別: いま学んでいる時代に対応する第1部の章を、その時代の叙述的な歴史と併せて読む。
- テーマ別: 授業や研究テーマに関係する第2部の章を読む。第14–18章は主要な下位分野の簡単な地図になる。
- 能動的に読む: 各論文について、描かれている古い解釈、それに取って代わった新しい問い、最もよく引かれる著作を書き出す。各論文の参考文献は読書リストとして扱う。
自分の関心に最も近い論文から読み、その論文の参考文献をたどって読み進めるとよい。
