01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Clifford, N., Cope, M., & Gillespie, T. W. (Eds.). (2023). Key Methods in Geography (4th ed.). SAGE.
章の要約
第4版は約780ページの編著である。出版社の目次によれば5部39章から成り、各章は一つの方法や研究上の作業についての独立した入門になっている。出版社によると、この版では9つの章が新しく加わった。その中には脱植民地的方法、気候・環境変化の予測・可視化・モデル化、研究成果の執筆が含まれ、どの章にもケーススタディの例、まとめ、演習がある。各章は短く独立しているため、以下の要約は5つの部に沿って、出版社が示す章題を用いて整理する。
第1部:出発点と視点
地理学研究を始める:本書の活用法/フィールドにおける健康・安全・リスク/地理学研究における倫理/課題のための主要文献の特定とレビュー/効果的な研究コミュニケーション/地図作成とGISの基礎/脱植民地的方法。
最初の部は、データ収集の前にあらゆるプロジェクトが必要とすることを扱う。本書の使い方、野外調査の安全とリスク、研究倫理、文献の探索とレビュー、成果の伝え方である。さらに、分野を横断する二つの章、すなわち地図作成とGISの入門、脱植民地的方法の章をここに置いている。これにより、表象とポジショナリティの問題が最後ではなく最初に提起される。
第2部:人間と人間以上の地理を探る
歴史・アーカイブ研究/質問紙調査の実施/半構造化インタビューとフォーカスグループ/回答者日誌/参与観察/情動と感情の研究/人間以上の存在をめぐる研究方法論/テクスト分析/視覚資料の解釈/地理学研究におけるデジタル社会データの利用/ジオヒューマニティーズと創造的研究方法/批判的GIS/人文地理学における計量モデル。
最も長い部で、人文地理学の方法を扱う。アーカイブ、質問紙、インタビューとフォーカスグループ、日誌、参与観察といった確立したデータ生成の方法から、情動と感情、人間以外のアクターとともに行う研究、デジタル社会データ、創造的方法やジオヒューマニティーズといった新しい分野、さらにテクストと画像の解釈的方法までを含む。最後は、批判的GISと計量モデルという対照的な二つの計算系の章で締めくくられる。
第3部:自然環境を探る
フィールドでの観察と計測/環境変化の予測・可視化・モデル化のための無人航空機システム(UAS)/過去から情報を得る:陸域生態系の古生態学的研究/数値モデル:自然地理学における説明と予測の理解/シミュレーションと簡略化モデル/リモートセンシングと衛星地球観測/デジタル地形解析/環境GIS/生物地理学と景観生態学におけるモデルとデータ/環境と持続可能性:環境監査、影響評価、評価額算定。
自然地理学の部は、野外での観察と計測から始まり、ドローンや衛星によるデータ、古生態学的復元、地形解析と環境GISへ進み、さらにモデル化へと移る。モデル化については、数値モデルと、シミュレーションおよび簡略化モデルにそれぞれ別の章がある。最後に生物地理学と環境アセスメントを扱う。
第4部:地理学的分析:地理データの解釈・可視化・表現
二次データの活用/空間データを記述・探索するための統計/計量データの探索と提示/ケーススタディの方法論/質的データを理解する:コーディング、整理、分析/映像・音声・技術を用いた応用/執筆:学術的共有の身体化された空間的実践。
この部はデータの収集からデータを扱う作業へと移る。二次資料、記述的・探索的な空間統計、計量的結果の提示、ケーススタディの設計、質的資料のコーディング、映像・音声と技術を用いた道具、そして執筆を研究実践の一部として扱う新しい章である。
第5部:実践における研究への視点
人文地理学研究におけるデジタルとの出会い/関与する学問の実践:なぜ方法が重要か。
本書は省察的な二つの章で終わる。一つはデジタル技術が人文地理学の研究をどう変えるかを扱い、もう一つは関与する学問(エンゲージド・スカラーシップ)と、地域社会とともに、また地域社会のために行う研究において方法の選択がなぜ重要かを扱う。
主要概念
第1部と第5部:研究の枠組み
- 研究倫理とリスク:倫理審査と安全計画は後から付け足すものではなく、研究設計の一部である。
- 文献レビュー:データを集める前に、既存の研究の中にプロジェクトを位置づけること。
- 脱植民地的方法:研究が誰の知識やどの場所を優遇しているのか、そして方法がそのパターンをどう再生産したり問い直したりするのかを問うこと。
- 関与する学問:地域社会とともに、また地域社会のために行う研究で、方法がその関係のあり方を形づくる。
第2部:人間と人間以上の地理
- 質的データの生成:インタビュー、フォーカスグループ、日誌、参与観察を、単にデータを集めるのではなくデータを生み出す方法として捉えること。
- 人間以上の存在をめぐる研究:動物、モノ、環境を社会生活の参加者として含めるアプローチ。
- 批判的GIS:権力と表象に注意を払いながらGISを使い、また問い直すこと。
第3部と第4部:自然環境と分析
- フィールド計測:研究上の問いに答えられるように観察を設計すること。
- リモートセンシングとUAS:衛星やドローンから環境データを収集すること。
- 数値モデルと簡略化モデル:環境システムをシミュレーションする二つの方法で、どこまでプロセスの細部を含めるかが異なる。
- 空間統計:地理データのパターンを記述し探索すること。
- 質的コーディング:テクストやインタビューの資料を整理し解釈すること。
批判的分析
長所
- 人文地理学と自然地理学をあわせて扱う。 本書は分野の両側にわたって質的・計量的・空間的方法とモデル化を扱うので、学科全体の方法論の授業にも、どちらの分野の卒業研究にも一冊で対応できる。
- 自分の研究を始める学生のための設計。 出版社は本書を、地理学の方法論の授業を受ける学生や独立した研究を始める学生に向けている。第1部は安全、倫理、文献、コミュニケーションという実際的な出発点を扱い、各章にはケーススタディの例、まとめ、演習がある。出版社が引用する推薦文で、アベリストウィス大学の Stephen Tooth は、とくに卒業論文やプロジェクトに取り組む最終学年の学部生に本書を勧めている。
- 扱う範囲の新しさ。 脱植民地的方法、環境変化のためのドローン、執筆についての新しい章に加え、デジタル社会データ、批判的GIS、情動、人間以上の存在をめぐる研究の章があり、確立した技法とともに現在の議論も反映している。
- 短く独立した章。 各方法に異なる執筆者による独自の章があるので、学生は自分のプロジェクトに必要な章だけを読むことができる。
短所
- 深さより幅。 約780ページにおよそ40章があるため、各方法の扱いは一章分の入門にとどまる。空間統計や数値モデルなどの技法を実際に適用する学生には、専門書やソフトウェアの手引きが必要になる。
- 一部の章の配置。 5部構成のため、学生が探しにくい場所に置かれた章がある。地図作成とGISは出発点の部にあり、批判的GISと計量モデルは第4部の分析の章ではなく人文地理学の部に置かれている。章を選ぶ前に目次全体に目を通せば見落としを防げる。
- 変化の速い領域。 Tooth の推薦文は、人工知能が索引に現れるだけで、近年の生成AIの展開は扱われていないと指摘している。こうした道具を使う学生はこの欠落を意識しておくべきである。
コースにおける位置づけ
地理学思想と方法のリストの中で、本書は実践的なハンドブックである。Gomez と Jones の Research Methods in Geography: A Critical Introduction は哲学的立場とデータの方法を並べて扱う短めの編著で、より穏やかな最初の教科書である。学生が自分のプロジェクトのために特定の技法の章を必要とするようになったら、Key Methods の出番である。Matthews と Herbert の Geography: A Very Short Introduction は学問全体を手早く見渡すための本である。
思想の本は、地理学者がなぜその方法を選ぶのかを説明する。Cresswell の Geographic Thought: A Critical Introduction は主要な伝統を扱い、方法の章が実証主義、人間主義、フェミニズム、ポスト構造主義に言及するときの自然な手引きとなる。Johnston と Sidaway の Geography and Geographers は1945年以降の英米人文地理学の詳細な歴史であり、Livingstone の The Geographical Tradition は学問のより長い歴史を論争的なエピソードの連なりとして描く。どちらも実践的な手引きではなく、第2部と第5部の背後にある議論の文脈を与える本である。
本書の使い方
本書は方法論の事前の訓練を前提としていない。方法論の授業を受ける学生や卒業研究を始める学生に向けて書かれており、大学院での研究に至るまで参考書として役立つ。
実践的な読み方:
- 全員: 本書の活用法についての最初の章、続いて健康と安全、倫理、文献レビュー、研究コミュニケーションの章。脱植民地的方法の章は他の章の読み方を変えるので、早めに読むとよい。
- 人文地理学のプロジェクト: プロジェクトに合う第2部の章を二、三選び(たとえばインタビューとフォーカスグループ、参与観察、質問紙)、次に第4部の対応する分析の章(質的コーディングまたは計量データの探索)を読む。
- 自然地理学のプロジェクト: フィールドでの観察と計測の章、次に関係するデータ源の章(リモートセンシング、UAS、古生態学、地形解析)、モデル化を含む場合は数値モデルまたはシミュレーションの章を読み、そのあと第4部の統計の章に進む。
- 執筆の前に: 執筆の章と第5部の省察的な二つの章。
各章の演習は抽象的にではなく自分のプロジェクトに当てはめて取り組み、ケーススタディの例を研究設計の手本として使うこと。各章は手引書ではなく入門なので、採用する方法については章の参考文献をたどって学びを深めるとよい。
