01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Johnston, R. J., & Sidaway, J. D. (2016). Geography and Geographers: Anglo-American Human Geography since 1945 (7th ed.). Routledge.
章の要約
第7版は10章、約544ページである。主題は英語圏における人文地理学の歴史であり、主要な論争、重要な思想家、学派を、それぞれの時代の経済的・社会的・文化的・政治的・知的な変化の中に位置づけて扱う。出版社は、本書が地理学文献の幅広い読み込みに基づき、地理学とその歴史がどう理解されているか、そしてこの学問が何を、どのように研究すべきかをめぐる論争に目を向けていると強調している。
文脈と議論
出版社は本書を、主要な論争、重要な思想家、学派を、それぞれの時代の経済的・社会的・文化的・政治的・知的な変化の中に置いて概観するものと説明している。デイヴィッド・リヴィングストンは第7版について、地理的な営みが置かれた「より広い文脈についての議論」を挙げ、それが地理学の歴史地理学が成熟したことを示すと評している。
第1章:学問分野の性質
冒頭の章は学問分野の性質を取り上げ、地理学のアイデンティティの変遷を述べる以後の叙述の枠組みとする。
第2章:基礎
この章は戦後の地理学が築かれた基礎を扱い、以後の変化の出発点を示す。
第3章:体系的研究の成長と「科学的方法」の採用
地理学内での体系的研究の成長と、科学的方法への移行を扱い、続く空間科学の章への準備となる。
第4章:空間科学としての人文地理学
地理学を空間分析とパターンの科学とみなした運動を扱う。戦後の物語の中心的な一幕である。
第5章:人間主義地理学
人間の経験、意味、場所を中心に据えたアプローチを扱う。直前の空間分析重視に対置される。
第6章:「ラディカル」な地理学
この学問への急進的な批判と、社会的・政治的問題との関連性を検討する。
第7章:ポストモダニズム、ポスト構造主義、ポストコロニアリズム
それ以前の確実性を問い直し、表象、差異、植民地主義の遺産に目を向けた、後の理論的転回を論じる。
第8章:ジェンダー化された地理学
フェミニスト地理学やジェンダーに着目した地理学の発展を扱う。
第9章:応用地理学と有用性をめぐる論争
応用的な研究と、地理学が実践的・社会的な関心にどう、またそもそも役立つべきかをめぐる論争を取り上げる。
第10章:変わりゆく学問分野?
最終章は、この学問分野の現在の位置と、その変化が続いていく様子を考察する。
主要概念
第1–4章:学問分野と空間科学
- 学問分野:共有された実践、制度、境界によって規定される領域。本書全体を見るレンズとなる。
- 科学的方法:科学をモデルとした体系的な手続きを地理学が採り入れること。
- 空間科学:空間的なパターンと秩序の分析としての地理学。
第5–10章:批判と多様化
- 人間主義地理学:人間の経験と意味を中心に置くアプローチ。
- ラディカル地理学:地理学の研究を社会的・政治的批判と結びつけるアプローチ。
- ポストモダニズム、ポスト構造主義、ポストコロニアリズム:普遍的な主張に異議を唱えた理論的立場。
- ジェンダー化された地理学:空間と場所に対するフェミニストおよびジェンダーの視点。
- 有用性をめぐる論争:地理学的知識の実践的・社会的な活用をめぐる議論。
批判的分析
長所
- 文脈を重視した歴史。 本書は地理学の考え方を、より広い経済的・社会的・文化的・知的変化の中に位置づけており、この点は出版社も評者も強調している。
- 分野での評価。 第5版を評した『Political Geography』誌の書評(Murray Low、2004年)は、本書がおそらく他のどの単一の資料よりも人文地理学者の集合的な学問観を形づくってきたと述べた。第7版についてはDavid Livingstoneが「領域の実用的な地図」と呼び、Clive Barnettは主要な知的転換を説得力ある語りで描いた「生きた古典」と評している。
- 扱いやすい構成。 主要なアプローチやテーマごとに1章を充てた10章構成で、見通しがよく、地理思想の授業と併用しやすい。
短所
- 範囲。 題名のとおり、1945年以降の英米の人文地理学を扱っており、自然地理学や英語圏以外の伝統は対象外である。
- 分量。 約544ページは、この学問の歴史を初めて見るには大部であり、手短に全体像をつかむにはコースの短い入門書のほうが向く。
- 単一の伝統の年代記。 枠組みは戦後の変化であり、それ以前の時期の地理学は基礎(第2章)としてしか現れない。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースで戦後の人文地理学を詳しく扱う歴史書である。『Geography: A Very Short Introduction』と『Geographic Thought: A Critical Introduction』は、地理学者の考え方を扱う、より短い最初の入門書で、後者は学問の歴史と理論をより広く扱う。『The Geographical Tradition』は、ヨーロッパの探検の時代から20世紀後半までを扱う歴史研究であり、本書が取り上げる以前の背景を補う。『Key Methods in Geography』と『Research Methods in Geography』は歴史書ではなく方法論の手引きで、本書と並べて使うのがよい。
本書の使い方
本書は、この学問が現在の姿に至った経緯を理解したい地理学専攻の学部生などを対象とする。出版社は、すべての地理学専攻の学部生の必読書としているが、人文地理学の主要な下位分野にある程度なじんでいると、論争を位置づけやすい。
まず第1–2章で枠組みをつかみ、第3–7章は、アプローチの出現順に従って読む。第8–9章はフェミニスト的研究や応用研究への関心に応じて選び読みでき、第10章を最後に読む。授業の指定文献が学派に言及したときの参考書として使い、各章を、その章が扱う運動の一次文献と組み合わせて読むとよい。
