01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Geankoplis, C. J., Hersel, A. A., & Lepek, D. H. (2018). Transport Processes and Separation Process Principles (5th ed.). Pearson.
章の要約
第5版は大幅な再編を経た版である。序文によれば、従来の14の長い章を、現在の移動現象論や分離工学の教科書に近い形にするため33の短い章に分け直したが、内容そのものの変更は比較的小さい。全体は約1,250ページで、第1部「移動現象」(第1〜21章)、第2部「分離プロセスの原理」(第22〜33章)、物性値の付録から成る。各章は学習目標の一覧で始まり、章のまとめで終わる。例題は節ごとに番号が振られ、追加の演習問題は著者の補助ウェブサイトに掲載されている。
第1章:工学の原理と単位への導入
復習の章である。移動現象と分離プロセス(単位操作)の分類、SI・cgs・英国単位系、温度と組成の表し方、気体の法則と蒸気圧、リサイクルや反応を含む物質収支、エネルギーの単位、熱収支、シンプソン則による数値積分を扱う。序文は、この内容をすでに知っている読者は章の全部または一部を省いてよいとしている。
第2〜4章:流体と流体静力学への導入/流体の性質と流れ/全体の質量・エネルギー・運動量収支
まず流体静力学とマノメータ、ニュートンの粘性法則、レイノルズ数を扱う。第4章では全体(巨視的)の質量・エネルギー・運動量収支を、機械的エネルギー収支とベルヌーイの式を含めて展開し、最後に殻運動量収支から管内と流下液膜の層流速度分布を導く。
第5〜7章:管内の非圧縮性流れと圧縮性流れ/充塡層と流動層の流れ/ポンプ・圧縮機・撹拌装置
流体力学の工学的な中核である。摩擦係数と管継手の損失、管径の選定、等温および断熱の圧縮性流れ、ピトー管から堰に至る流量計測、浸漬物体の抗力、充塡層と流動化、ポンプと気体輸送機械、圧縮、撹拌槽の設計・所要動力・スケールアップを扱う。
第8〜11章:流体流れの微分方程式/非ニュートン流体/ポテンシャル流れとクリーピング流れ/境界層と乱流
より理論的な流体力学である。第8章は連続の式と運動方程式を微分形で導き、簡単な流れに適用する。第9章は管内流れと撹拌の計算を非ニュートン流体に広げる。第10章は流れ関数、非粘性のポテンシャル流れ、クリーピング流れを導入し、第11章は境界層、乱流、レイノルズ応力、プラントルの混合距離、普遍速度分布を扱う。
第12〜14章:伝熱への導入/定常熱伝導/非定常伝熱の原理
第12章は伝導・対流・放射を導入し、第1章のエネルギー単位と熱収支の内容を繰り返す。第13章は複合平板、円筒、球を通る定常熱伝導、内部発熱、形状係数、差分法を扱う。第14章は集中定数法、解析解、線図、数値解法による非定常熱伝導を扱い、食品の冷却と凍結に関する節を含む。
第15〜17章:対流への導入/熱交換器/放射伝熱への導入
第15章は次元解析と境界層の考え方を用いて、管内流れ、外部流れ、自然対流、沸騰と凝縮、さらに撹拌槽やフィン付き熱交換器などの特殊な場合について対流の相関式を組み立てる。第16章は熱交換器の種類、対数平均温度差の補正係数、有効度、汚れ係数、二重管式熱交換器を扱う短い章である。第17章は形態係数、灰色体、吸収性気体中の放射を扱う。
第18〜21章:物質移動への導入/定常物質移動/非定常物質移動/対流物質移動
第18章はフィックの法則、拡散係数の推算、二成分混合物の連続の式を示す。第19章は気体・液体・固体・多孔質体(クヌーセン拡散を含む)・生体ゲル中の定常拡散を扱い、第20章は非定常拡散と反応を伴う拡散を、第21章は物質移動係数と三つの移動現象の間のアナロジーを展開する。
第22〜23章:吸収と放散/調湿プロセス
第22章は相間平衡、段接触、境膜および総括物質移動係数を整えたうえで、フラッディング、移動単位、熱効果を含めて段塔と充塡塔による吸収塔を設計する。第23章は湿度、湿度図表、湿球温度を扱い、冷水塔と除湿塔を設計する。
第24〜25章:ろ過と膜分離プロセス(液液または固液系)/気体膜システム
第24章はデッドエンドろ過の理論(定圧ろ過と定速ろ過)から、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透、透析へと進み、人工腎臓による血液透析も扱う。第25章は気体透過を詳しく扱い、完全混合、十字流、向流、並流の各モデルと、表計算ソフトによる差分法を示す。
第26〜27章:蒸留/液液抽出
第26章は気液平衡、フラッシュ蒸留と回分蒸留、マッケーブ・シーレ法、段効率と塔径、エンタルピー・濃度法、多成分系の簡易計算法を扱う。第27章は抽出平衡、抽出装置、向流多段抽出の設計を扱う。
第28〜31章:吸着とイオン交換/晶析と粒子の粉砕/沈降・沈殿・遠心分離/浸出
固定層吸着とイオン交換、晶析の理論と粉砕、沈降、濃縮、遠心分離機とサイクロン、単段および向流多段の浸出を扱う。
第32〜33章:蒸発/乾燥
第32章は蒸発缶の種類、単一効用と多重効用の計算、凝縮器、生物系材料の蒸発、蒸気再圧縮を扱う。本書で最も長い第33章は、乾燥装置、平衡含水率、恒率乾燥と減率乾燥、各種乾燥機の式、凍結乾燥、生物系材料の熱処理と殺菌を扱う。
主要概念
第1部:移動現象
- 単位操作と移動現象:多様な分離工程が運動量・熱・物質の移動という三つの基本機構を共有するという、本書を組み立てる考え方。
- 全体収支とベルヌーイの式:配管、ポンプ、流量計の設計に用いる巨視的な質量・エネルギー・機械的エネルギーの収支。
- 摩擦係数:層流と乱流の管内流れで流量と圧力損失を結ぶ無次元量。
- 連続の式と運動方程式:質量保存と運動量保存の微分形。
- フィックの法則と拡散係数:成分の分子拡散流束と、拡散係数の推算方法。
- 物質移動係数とアナロジー:対流物質移動の相関式と、熱・運動量移動との対応関係。
第2部:分離プロセスの原理
- 平衡段と操作線:吸収、蒸留、抽出、浸出の設計を支える図式的・解析的な基礎。
- マッケーブ・シーレ法:二成分蒸留の段数を階段作図で求める方法で、最小還流比と全還流を含む。
- 破過曲線:固定層吸着塔やイオン交換塔の設計に用いる出口濃度の時間変化。
- 恒率乾燥と減率乾燥:乾燥曲線の二つの期間で、それぞれに計算法がある。
批判的分析
長所
- 移動現象の原理と装置の結びつき。 序文に示された二部構成では、運動量・熱・物質移動の原理を先に置き、分離プロセスを後に置く。そのため、第21章の物質移動係数がそのまま第22章の塔設計に使われることや、乾燥の章が熱移動と物質移動の両方に依拠することを授業で示しやすい。
- 分離操作の幅広さ。 第2部の12章は、古典的な蒸留・吸収・抽出の章に加えて、膜プロセス(液相と気相)、吸着とイオン交換、晶析、沈降、浸出を扱う。
- 生物系・食品系の題材。 目次は生物系材料に繰り返し目を向けている。食品の冷却と凍結、生体ゲル中の拡散や生体溶質の拡散、血液透析、果汁や糖液の蒸発、凍結乾燥、殺菌の速度論などである。
- 柔軟な授業設計。 序文は五つの履修プラン(移動現象と分離を1年半かけて学ぶもの、移動現象のみ、分離のみなど)を示しており、学習目標とまとめを備えた新しい短い章は部分的に割り当てやすい。
短所
- 再編の名残。 旧版の章を分割した結果、重複が残っている。第1章のエネルギー単位と熱収支の節は第12章冒頭の節として再び現れ、第23章の湿度の内容は第33章にも現れる。また序文の5番目の履修プラン(物質移動)はいまだに第12〜19章を挙げているが、新しい章番号ではその大半が伝熱の章である。
- 章の分量の偏り。 第2、3、16章はそれぞれおよそ10〜17ページだが、第22、26、33章は60ページを超える。章の数が増えたことは、毎週同じ分量で進められることを意味しない。
- ソフトウェアは本の外にある。 Aspen や CHEMCAD、MATLAB、COMSOL、Excel を使う問題は印刷された章ではなく、補助ウェブサイトに置かれている。
コースにおける位置づけ
化学プロセス工学のリストの中で、本書は1年次の収支計算の授業と最終学年の設計の授業の間に位置する。Felder、Rousseau、Bullard の Elementary Principles of Chemical Processes と Denn の短い Chemical Engineering: An Introduction は、Geankoplis が第1章で復習し、その後は前提とする物質収支とエネルギー収支を教える。McCabe、Smith、Harriott の Unit Operations of Chemical Engineering は最も近い対応書で、どちらも流体の流れ、伝熱、主要な分離操作を扱い、並行して読むことができる。違いは構成にある。Geankoplis はまず第1部で移動現象の原理をすべて展開してから分離プロセスに移るため、移動現象論と分離工学を別の科目として教えるカリキュラムに合う。
Fogler の Elements of Chemical Reaction Engineering は反応器を扱うが、本書は反応を伴う拡散を除いて反応器を扱わない。Towler と Sinnott の Chemical Engineering Design は最後に読む本で、第2部の分離装置の計算をプロセス全体とプラントの設計の中で用いる。
本書の使い方
本書は化学工学科の3、4年生と、食品工学や生物工学などほかのプロセス系分野の学生を対象としている。物質収支とエネルギー収支、基礎的な熱力学、常微分方程式を含む微積分が必要で、第8、10、11、14、20章が最も数学的である。
授業内容に合わせて、序文の履修プランから選ぶとよい。
- 移動現象論の授業(2学期): 第2〜21章。第1章は任意の復習とする。第2〜7章と第12〜16章が実用的な中核で、第8〜11章は微分方程式と境界層の見方を加えるもので、最初の授業では軽く扱ってもよい。第18〜21章が物質移動の中核である。
- 分離工学・単位操作の授業(1学期): 平衡と相間物質移動を扱う第22章の冒頭の節から始め、次に第26章(蒸留)、第22章の残り(吸収)、第27章(抽出)へ進む。プログラムに応じて膜、吸着、蒸発、乾燥を加える。食品・生物プロセス系のプログラムでは第32〜33章が必要になる。
- 物質移動のみ: 第18〜21章のあと、第2部から選んで読む。
各章の学習目標とまとめを確認に使い、演習問題に取り組む前に番号付きの例題を手で解くこと。補助ウェブサイトのソフトウェア問題を使えば、同じモデルを Excel、MATLAB、プロセスシミュレータで解く練習ができる。物性値については付録を手元に置いておくとよい。
