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Ethics, Technology, and Engineering: An Introduction(倫理・技術・工学入門) cover

工学

工学

Ethics, Technology, and Engineering: An Introduction(倫理・技術・工学入門)

Ibo van de Poel; Lambèr Royakkers

英語原題: Ethics, Technology, and Engineering: An Introduction

オランダの技術哲学者二人による、哲学的基盤をもつ技術者倫理の入門書。倫理綱領だけに頼るのではなく、倫理理論と論証を用いて道徳的問題を分析する方法を教え、設計プロセス、リスク、組織における責任、持続可能性、新技術の倫理へと議論を広げる。

前提知識: 技術者倫理または専門職実務の最初の授業や教科書。哲学の正式な予備知識は前提としない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
engineering ethicsethics of technologymoral philosophyresponsible innovationprofessional responsibility教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

van de Poel, I., & Royakkers, L. (2023). Ethics, Technology, and Engineering: An Introduction (2nd ed.). Wiley-Blackwell.

章の要約

本書は9章、序論、6つの付録からなり、全体で約384ページである。各章の末尾には章のまとめ、学習用の問い、討論用の問いが置かれ、第1章の冒頭には学習目標の一覧と事例(フォルクスワーゲンの「ディーゼルゲート」)が示される。出版社は、中心的な道具を「倫理サイクル(ethical cycle)」、すなわち道徳的問題に体系的に取り組む方法と説明し、アメリカやヨーロッパなどの事例研究がそれを支えているとしている。

第1–2章:技術者の責任;行動規範

第1章は、受動的責任(非難されうること)と能動的責任を区別し、非難可能性の四つの条件を示す。そのうえで、技術者の職業上の理想(技術への熱意、有効性と効率、人間の福祉)、技術者と管理職の関係(分離主義、テクノクラシー、内部告発)、技術発展の社会的文脈を論じる。第2章は、職業規範と企業規範、およびその限界を扱う。限界とは、自己利益、解釈の必要、道徳判断を成文化できるか、規範を実践できるか、そして実効性の確保である。

第3章:規範倫理学

理論の章である。倫理と道徳、記述的言明と規範的判断、価値・規範・徳を区別したうえで相対主義を紹介し、主要な理論を取り上げる。功利主義、カント倫理学、徳倫理学、ケアの倫理、ケイパビリティ・アプローチ、続いて非西洋の伝統であるウブントゥと儒教である。功利主義とカント理論はそれぞれフォード・ピント事件に適用され、多くの理論には批判と工学への応用に関する小節がある。

第4章:倫理サイクル

方法の章である。構造化されていない問題から出発し、サイクルを五つの段階に分けて示す。道徳的問題の記述、問題分析、行為の選択肢、倫理的評価、省察である。続いて具体例が示され、章の最後に集団的な道徳的熟議と社会的取り決めが扱われる。

第5–6章:価値のための設計;技術的リスクの倫理的側面

第5章は技術に価値を埋め込む方法を扱う。ステークホルダー分析、価値の概念化と具体化、価値の対立を解く方法(費用便益分析、多基準分析、閾値、再具体化、イノベーション)、試作とモニタリングである。第6章は、リスクに関する用語と安全に対する技術者の責任を定義し、リスク評価、リスクが受容できる条件(インフォームド・コンセント、便益とリスクの比較、代替案、公正な分配)、リスク・コミュニケーション、不確実性への対処を論じる。後者には予防原則と、社会的実験としての工学が含まれる。

第7–9章:工学における責任の分配;持続可能性、倫理、技術;責任あるイノベーション

第7章は、シティコープ・ビル(CitiCorp building)を例に「多くの手の問題」を取り上げ、続いて責任と法(責任と規制、過失責任と厳格責任、法人の責任)、組織における責任、技術設計が責任の分配に与える影響を扱う。第8章は環境倫理、持続可能な開発(ブルントラント定義とその道徳的正当化)、持続可能性のための設計を取り上げ、ライフサイクル分析を含む。第9章は責任あるイノベーションを定義し、プロセスの基準(予測、包摂性、省察性、応答性)を示し、破壊的イノベーションと技術者の責任で結ばれる。

付録

6つの付録がある。いくつかの国における技術者の資格と組織、米国NSPEの技術者倫理綱領、行動規範に関するEngineers Europeの意見書、企業行動規範の例、企業の内部通報方針、そして事例集である。

主要概念

第1–2章:責任と規範

  • 受動的責任と能動的責任:過去の行為に対する非難可能性と、害を防ぐための将来に向けた義務。
  • 職業上の理想:技術への熱意、有効性と効率、人間の福祉。
  • 行動規範:職業規範と企業規範、およびその可能性と限界。

第3–4章:理論と方法

  • 倫理理論:功利主義、カント理論、徳倫理学、ケアの倫理、ケイパビリティ・アプローチ、ウブントゥ、儒教。
  • 倫理サイクル:道徳的問題の記述、問題分析、行為の選択肢、倫理的評価、省察。

第5–9章:設計、リスク、社会

  • 価値のための設計:価値を特定し、概念化し、具体化して、価値間の対立を解くこと。
  • 受容可能なリスク:インフォームド・コンセント、便益とリスクのバランス、代替案、公正な分配。
  • 多くの手の問題:多くの人が結果に寄与するとき、責任を割り当てるのが難しいこと。
  • 責任あるイノベーション:予測、包摂性、省察性、応答性というプロセスの基準。

批判的分析

長所

  • 概観にとどまらず方法を与える。 倫理サイクルは学生に繰り返し使える手順を与え、第4章がそれを一つの例で実演し、各段階に一つの小節を割いている。
  • 理論の幅が広い。 功利主義、カント、徳という定番に加えて、第3章はケアの倫理、ケイパビリティ・アプローチ、ウブントゥ、儒教を含み、二つの理論を一つの事例に当てはめて比較できるようにしている。
  • 個々の技術者を超える。 第5、7、8、9章は設計、組織、持続可能性、イノベーションを扱うので、倫理的問いを個人の選択だけでなく、仕組みによって形づくられるものとして扱っている。
  • 教育上の工夫。 各章末にまとめ、学習用の問い、討論用の問いがあり、付録には討論のための職業規範、欧州の意見書、企業規範、内部通報方針が収められている。

短所

  • 各理論の扱いが圧縮されている。 7つの理論・伝統が1章に収まり、各小節はおよそ3〜9ページなので、そのうちの一つを深く学びたい学生は別の文献が必要になる。
  • 特定の技術に関する章がない。 出版社は新しい技術を強調しているが、章立てに特定の技術分野を扱う章はなく、新技術は主に価値のための設計、リスク、責任あるイノベーションを通して扱われる。
  • 規範が米国と欧州のもの。 付録に収められた職業規範はNSPEの綱領と欧州の意見書であり、第3章には非西洋の倫理的伝統が含まれ、付録Iが複数の国の資格を扱ってはいる。

コースにおける位置づけ

この技術者倫理コースの書目のなかで、本書は哲学的な構成が最も整っており、明確な方法と幅広い理論をもつ。Fleddermannの Engineering Ethics は、平易に理論を説明し、安全などの話題に構造化された方法を適用する簡潔な入門書で、最初の一冊としてはより軽い。Harrisらの Engineering Ethics: Concepts and Cases とMcGinnの The Ethical Engineer は事例中心で、詳細な事例から最もよく学ぶ学生に向く。Martinの Ethics in Engineering は工学を社会的実験として扱う。The Routledge Handbook of the Philosophy of Engineering は、どの教科書よりも先へ進みたい読者のための学術的な参考書である。

本書の使い方

工学部の学生や実務者のほか、ビジネスや起業の分野の読者も対象としており、哲学の予備知識は前提とされない。読む順序としては、第1章のあとに第3章と第4章を続けて読むとよい。理論が倫理サイクルの土台になるからである。規範を扱う第2章は、その前でも後でもよい。第5〜9章は主題別なので、授業に合わせて選べる。設計者には第5章、安全とリスクには第6章、組織と法には第7章、環境問題には第8章、イノベーションの仕事には第9章である。

各章末の学習用・討論用の問いを使い、付録VIの事例の一つに倫理サイクルを適用してみる。職業実践を含む授業では、第2章をNSPE綱領(付録II)および付録IVの企業規範と併せて読む。