01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Fleddermann, C. B. (2012). Engineering Ethics (4th ed.). Pearson Prentice Hall.
章の要約
第4版は約180ページの短い本で、8つの章、2つの付録、索引からなる。ピアソンは本書を、倫理の話題を取り入れる学部の工学プログラムのために書かれた、技術者倫理を学ぶための教科書であると同時に資料でもあるものと説明しており、将来の技術者が職業生活で出会う倫理的ジレンマに向き合い、それを解決できるよう準備させることを目的としている。すべての章は参考文献と問題で終わり、第2〜7章には重要用語の一覧が、第1章にはまとめがある。
第1章:序論
冒頭の章は、技術者がなぜ倫理を学ぶべきかを説明する。各節では、工学を「未知のものを管理すること」として示し、個人の倫理と職業上の倫理を区別し、倫理思想の起源と倫理と法の関係を素描し、倫理の問題は設計の問題に似ているという主張を述べる。最後に一連の事例研究があり、章のほぼ半分を占める。
第2章:プロフェッショナリズムと倫理綱領
工学は専門職(プロフェッション)なのかを問い、工学系学会が会員の義務を定めた文書である倫理綱領を検討する。いくつかの綱領を収めた付録Aと密接に結びついている。
第3章:倫理的問題の理解
理論の章。倫理思想の簡単な歴史のあと、問題の分析に使われる主要な倫理理論を示し、非西洋の倫理思想についての節を加えている。
第4章:倫理的問題解決の技法
方法の章。倫理的問題に含まれる論点の分析の仕方を示し、続いて線引き(ラインドローイング)とフローチャートの技法を導入し、対立問題を論じる。最後に、これらの方法を贈収賄と贈答品の受け取りに適用する。
第5章:リスク、安全、事故
最も長い2章のうちの一つ。安全とリスク、続いて事故を扱い、事故の節は20ページ近くに及ぶ。
第6章:技術者の権利と責任
職業上の責任と職業上の権利、そして内部告発についての長い節を扱う。
第7章:工学実務における倫理的問題
実務の三つの領域、すなわち環境倫理、コンピュータ倫理、研究における倫理を扱う。
第8章:正しいことをする
約5ページの短い結びの章で、参考文献と問題がつく。
付録A〜B
付録Aは、IEEE、全米プロフェッショナルエンジニア協会(NSPE)、米国機械学会(ASME)、米国土木学会(ASCE)、米国化学工学会(AIChE)、土木学会(日本)の倫理綱領を収録している。付録Bは、技術者倫理の一般書、論文や事例を掲載する学術誌、ウェブサイトの文献案内である。
主要概念
第1〜2章:基礎
- 未知のものを管理することとしての工学:工学の仕事は不確実性のもとで進むという章の特徴づけで、倫理を学ぶ理由の一つとされる。
- 個人の倫理と職業上の倫理:個人自身の道徳的基準と、職業的な実務にともなう義務との違い。
- 設計問題としての倫理問題:倫理的ジレンマを解決することと設計問題を解くことの間に、冒頭の章が引く類比。
- 倫理綱領:工学系学会が採択した、職業上の義務を記した文書。
第3〜4章:理論と方法
- 倫理理論:何が正しいかを判断するための体系的な枠組み。簡単な歴史と非西洋の伝統とともに導入される。
- 線引き:事例を、明らかに許容できる例と明らかに許容できない例の間の連続体の上に位置づけること。
- フローチャート:考えられる決定の帰結を一歩ずつ図示すること。
- 対立問題:義務どうしがぶつかり、そのどちらを選ぶかを正当化しなければならない事例。
第5〜7章:実務上の問題
- 安全とリスク:工学的な製品やシステムにおけるリスクの許容可能性。
- 内部告発:内部の経路が機能しないときに不正を公にすること、そしてそれが正当化されるのはいつか。
- 環境倫理、コンピュータ倫理、研究倫理:それぞれ独自の倫理的問いを生む工学実務の三つの領域。
批判的分析
長所
- どこにでも収まる短さ。 約180ページで各章は15〜30ページほどなので、数週間で扱うことも、設計科目やキャップストーン科目に分散させることもできる。これは、倫理に科目全体を充てるのではなく倫理の話題を取り入れるプログラムのための教科書というピアソンの説明と一致する。
- 理論だけでなく方法も。 第4章は具体的な技法(論点の分析、線引き、フローチャート、対立問題の扱い方)を与え、それを実際の話題に適用してみせる。第1章は倫理問題を設計問題になぞらえており、倫理的推論を工学の学生がすでに行っていることと結びつけている。
- 一次資料の収録。 付録Aには日本のものを含む6つの工学系学会の倫理綱領が収められているので、学生は綱領について間接的に読むのではなく、直接比較できる。
- 実務に即した内容。 リスクと事故、権利と内部告発、環境・コンピュータ・研究の倫理が後半の大部分を占める。すべての章が議論や課題のための問題で終わる。
短所
- 理論は軽め。 倫理理論は約15ページの1章で扱われるだけである。哲学的な裏づけのある扱いを必要とする学生は、ほかの本を見る必要がある。
- 米国中心の綱領。 付録Aの6つの綱領のうち5つは米国の学会のものである。ほかの国の学生は自国の綱領を加える必要がある。
- 古くなった部分。 この版は2011〜2012年のものである。コンピュータ倫理の節や、現在の技術に依存する事例は、より新しい資料で補うべきである。
コースにおける位置づけ
フレッダーマンは、技術者倫理の書目のなかで最もコンパクトな教科書である。ロバート・マッギンの The Ethical Engineer も入門書だが、18の詳しい事例研究と技術者の4つの基本的責任を軸に組み立てられている。両者は相性がよく、方法と綱領にはフレッダーマン、事例の深さにはマッギンを使うとよい。ハリス、プリチャードらの Engineering Ethics: Concepts and Cases も線引きや創造的な中道の解決を教えるが、より長く、大量の事例集を備えている。マーティンとシンジンガーの Ethics in Engineering は、社会的実験としての工学という考え方を、より哲学的な深さで展開する。どちらもフレッダーマンの次の一歩によい。
ファン・デ・ポールとロイヤッカーズの Ethics, Technology, and Engineering は、綱領よりも倫理理論と論証に依拠する、哲学的に裏づけられた説明を与える。ミヒェルフェルダーとドールンの Routledge Handbook of the Philosophy of Engineering は、研究レベルの問いのための学術的な参考書である。どちらもフレッダーマンの理論の1章をはるかに超えている。
本書の使い方
本書はあらゆる分野の学部の工学系学生のために書かれており、哲学の予備知識は必要ない。
- 中核: 第1〜4章を順に読む。第3章は理論を、第4章は本書の残りの部分が前提とする技法を与える。先へ進む前に、贈収賄と贈答品の適用例で線引きとフローチャートを練習すること。
- 個別の問題: 第5〜7章はどの順に読んでもよく、分野に合わせて選んでもよい。第5章は安全が重視される設計の科目に、第6章は職業実務を扱うあらゆる科目に、第7章のコンピュータ倫理の節は情報系・電気系の学生に向いている。
- 締めくくり: 第8章は短く、最後の読み物として機能する。
第2章と並行して付録Aにある自分の学会の綱領を読み、事例が義務の問題を提起するたびにそこへ戻ること。各事例について、授業で議論する前に第4章の技法を使って短い分析を書くとよい。章末問題はグループ討論に、付録Bの文献案内はレポートのためのさらなる事例探しに使える。
