索引 / 001 JA
Engineering Ethics: Concepts and Cases(技術者倫理:概念と事例) cover

工学

工学

Engineering Ethics: Concepts and Cases(技術者倫理:概念と事例)

Charles E. Harris Jr.; Michael S. Pritchard; Michael J. Rabins; Ray W. James; Elaine E. Englehardt

英語原題: Engineering Ethics: Concepts and Cases

チャールズ・ハリス、マイケル・プリチャードらによる事例中心の技術者倫理の教科書で、哲学者と実務経験のある技術者が共同で執筆している。工学の仕事に潜む倫理的問題に気づき、線引き法や創造的な中道解といった実践的な方法で解決することを、専門職の倫理綱領と多数の実例・仮想事例に基づいて教える。

前提知識: 工学の授業を受けた経験以外には特になく、哲学の予備知識は前提としない。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
engineering ethicsprofessional responsibilitycase studiesrisk and liabilitycodes of ethics教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Harris, C. E., Jr., Pritchard, M. S., Rabins, M. J., James, R. W., & Englehardt, E. E. (2019). Engineering Ethics: Concepts and Cases (6th ed.). Cengage Learning.

章の要約

第6版は全9章で、その後に事例集(事例の一覧と事例の分類表付き)、倫理綱領の付録、参考文献、索引が続く。Cengage は本書を事例中心の教科書と説明し、数十の現代的な事例と、それを分析する構造化された方法、技術者倫理綱領の実践的な適用、道徳的推論と組織内コミュニケーションへの注目、信頼性と信頼できることの重視、そして持続可能性と経済発展、リスク管理、グローバル化した基準の扱いを特色に挙げる。また、各章にコラム形式の囲み記事があること、技術の進展がもたらす将来の課題を扱う全面的に新しい章が加わったことも伝えている。

第1章:技術者:人類の福祉のための専門職

題名は、技術者を人類の福祉のために働く専門職として位置づけている。Cengage の説明は、技術者の行為が公衆と環境の健康、安全、福祉に影響することを強調している。

第2章:実践的な倫理のツールキット

ツールキットの章で、Cengage がこの版の特色に挙げる「実績のある分析方法」と「技術者倫理綱領の実践的な適用」に対応する。

第3章:技術者の責任

技術者に当てはまる責任で、出版社が詳しく扱う主題の1つとして挙げるもの(「倫理的責任」)。

第4章:組織の中の技術者

組織内での技術者の立場。出版社は効果的な組織内コミュニケーションも本書の重点の1つに挙げている。

第5章:信頼と信頼性

職業における信頼性と信頼できることという、出版社の強調に対応する章。

第6章:リスクを評価し管理する技術者の責任

リスクを評価し管理する技術者の責任で、出版社が詳しく扱うとしている主題。

第7章:工学と環境

工学の仕事の環境面。出版社の説明は持続可能性と経済発展に言及している。

第8章:グローバルな文脈における工学

一国を超えた工学の実践。出版社の説明は、工学のグローバル化した基準に言及している。

第9章:工学の新たな地平

最終章。題名は、出版社がこの版の目玉として挙げる、進化する技術に関する将来の課題を扱う全面的に新しい章と合致する。

事例、分類表、付録

第9章のあとに、事例の部、事例の一覧、事例の分類表があり、続いて倫理綱領の付録と参考文献がある。

主要概念

第1~3章:基礎

  • 専門職としての自覚:公共の利益に奉仕する専門職としての技術者。
  • 実践的な倫理のツールキット:事例を分析するための構造化された方法と、専門職の倫理綱領。
  • 責任:技術者が何について責任を負うのか。

第4~6章:職場の条件

  • 組織の状況:雇用主や同僚が技術者の選択をどう形づくるか。
  • 信頼と信頼性:技術者の判断を頼りにできることの基盤。
  • リスクの評価と管理:リスクを秤にかけ、伝えることを倫理的な課題として捉える。

第7~9章:より広い文脈

  • 環境への責任:工学と環境。
  • グローバルな実践:国境を越えた文脈での工学。
  • 新興技術:第9章が扱う将来の課題。

批判的分析

長所

  • 事例を軸にした設計。 事例は一覧と分類表を備えた独立の部にまとめられ、各章とは別に参照できる。Cengage は、本書が多様で現代的な事例を数十収録しているとしている。
  • 綱領だけでなく方法がある。 第2章は実践的なツールキットに充てられており、出版社は、付録に収録されている倫理綱領とあわせて、構造化された分析の方法を強調している。
  • 職業上の標準的な主題を網羅。 責任、組織、信頼、リスク、環境、グローバルな実践にそれぞれ1章があるので、授業で毎週取り上げる主題がそろっている。
  • 実践寄りの執筆陣。 著者名簿には、Cengage が専門職技術者(P.E.)と紹介する Ray W. James が含まれており、実践的な適用を重視する本書の方向性と合っている。

短所

  • 理論より方法と事例。 Cengage の説明は方法、綱領、事例を強調し、倫理理論を特色として挙げていない。より哲学的な扱いを求める授業では、後述の同じ書目の本を補うとよい。
  • 版に依存する。 全面的に新しい章とコラム形式の囲み記事は第6版での追加と説明されているため、他の版を前提としたシラバスとは章番号や事例が合わない場合がある。

コースにおける位置づけ

Harris らの本は、分析の方法と多数の事例を組み合わせた事例中心の教科書である。Fleddermann の Engineering Ethics は、構造化された方法と短い実例を備えた簡潔な入門書で、最初に読む本や短いモジュールに向く。McGinn の The Ethical Engineer は、技術者の4つの基本的な倫理的責任を示し、18の詳細な事例に適用する事例中心の入門書である。

Martin と Schinzinger の Ethics in Engineering は、最も近い分量の教科書で、より哲学的な性格が強い(たとえば社会実験としての工学)。van de Poel と Royakkers の Ethics, Technology, and Engineering はさらに明確に哲学的で、倫理理論を通して分析を教え、設計、持続可能性、新技術へ広げる。Routledge Handbook of the Philosophy of Engineering は55章からなる学術的な参考書で、研究文献を知りたい読者に向く。

本書の使い方

Cengage は本書を将来の技術者に向けており、その方法は特定の工学分野に限られないため、どの専攻の学生にとっても、倫理的な問題を分析する構造化された練習に適している。出版社は哲学の予備知識を挙げていない。工学の仕事がどう組織されているかを多少知っていると、事例の理解に役立つ。

1学期の授業向けの実践的な進め方:

  • 第1章と第2章から始め、授業を通じてツールキットを手元に置く。先へ進む前に短い事例で練習する。
  • 中核: 第3~6章(責任、組織、信頼、リスク)。各章を事例の部の事例と組み合わせ、事例の一覧と分類表を使って選ぶ。
  • 文脈: 第7~9章で環境、グローバルな実践、新興技術を、専攻に応じて扱う。
  • 並行して: 事例が職業上の義務にかかわるときは付録の倫理綱領を参照し、各主題で短い事例分析を書く。