01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Tomlinson, C. A. (2014). The Differentiated Classroom: Responding to the Needs of All Learners (2nd ed.). ASCD.
章の要約
第2版は198ページで、序文、9つの章、「A Final Thought」と題する短い締めくくり、授業計画のためのツールを集めた付録から成り、そのあとに参考文献が付く。出版社によれば、トムリンソン(Tomlinson)は30年近い経験と、学習・教育・変革に関する研究にもとづいて差異化指導の理論的基礎を示し、教師と生徒がこの方法で取り組む実例を数多く盛り込んでいる。中核にある3つの章は、小学校と中学・高校の、ほぼすべての教科にわたる実際の授業、単元、教室を描いている。
第2版序文
新版を紹介する。出版社によれば、第2版は研究の進展と、第1版を学校で実施してきた年月に得られたフィードバックを踏まえている。
第1章:What Is a Differentiated Classroom?(差異化された教室とは何か)
冒頭の章で、この用語を定義し、差異化された教室がどのようなものかを述べて、本書の残りが肉づけしていく全体像を描く。序文とこの章は、出版社のサイトで無料で読める。
第2章:The Underpinnings of Differentiation(差異化の基盤)
差異化の背後にある考え方を述べる。出版社は、本書の理論的基礎は学習・教育・変革に関する研究に由来すると説明しており、章題からは、この章が基盤を論じる箇所だとわかる。
第3章:Learning Environments That Support Differentiated Instruction(差異化指導を支える学習環境)
教室の環境を差異化の条件として取り上げる。何を教えるかを扱う章に先立つ位置にある。
第4章:Good Curriculum as a Basis for Differentiation(差異化の基盤としての優れたカリキュラム)
カリキュラムを扱う。その前提は章題のとおり、差異化には差異化の対象となる優れたカリキュラムが必要だということである。
第5章:Teachers at Work Building Differentiated Classrooms(差異化された教室をつくる教師たち)
章題は、教師が差異化された教室をつくっていく様子の記述を示しており、本書が多くの教科の実際の授業、単元、教室を取り上げるという出版社の説明と合致する。
第6〜7章:Instructional Strategies That Support Differentiation(差異化を支える指導方略);More Instructional Strategies to Support Differentiation(差異化を支えるさらなる指導方略)
指導方略の2つの章で、後者は前者の続きである。
第8章:How Do Teachers Make It All Work?(教師はどうすべてを機能させるか)
個々の方略から、教師がそれらを時間をかけてどうまとめて運用するかという実際的な問いへ移る。出版社が述べる「think versus sink(考えるか、沈むか)」のやり方、つまり読者がまず小さな変更から始めて次第に大きな変更へ進むというやり方は、この実践重視の姿勢に合致する。
第9章:Education Leaders as Catalysts for Differentiated Classrooms(差異化された教室への触媒としての教育リーダー)
学校や教育システムのリーダーの役割を論じる。学校で差異化を促したい教育リーダーにも本書が語りかけるという出版社の説明に対応している。
A Final Thought と付録:Tools to Guide Planning for Differentiated Instruction(差異化指導の計画を導くツール)
短い締めくくりのあとに、差異化指導を計画するためのツールの付録が続く。巻末には参考文献がある。
主要概念
第1〜2章
- 差異化された教室:冒頭の章の主題であり、副題の言い方では、すべての学習者のニーズに応える教室。
- 差異化の基盤:第2章が述べる、研究にもとづく根拠。
第3〜5章
- 学習環境:差異化指導の支えとして、独立の章で扱われる。
- 優れたカリキュラム:第4章が差異化の基盤として提示する。
- 仕事中の教師:教師が差異化された教室をつくる様子についての本書の記述。
第6〜9章
- 指導方略:差異化を支える方略に2つの章が充てられている。
- すべてを機能させる:第8章が提起する運用上の問い。
- 差異化のためのリーダーシップ:第9章での教育リーダーの役割。
- 「think versus sink」:小さな変更から始めるという本書のやり方に対する出版社の呼び方。
批判的分析
長所
- 最初のページから教師に向けられている。 出版社は経験豊かな教師も新任の教師も教育リーダーも読者として想定しており、目次は、定義(第1章)から根拠(第2章)、環境とカリキュラム(第3・4章)、方略(第6・7章)、運用とリーダーシップ(第8・9章)へと進む流れを示している。
- 具体的な教室と理論の両方がある。 出版社は、実在の事例と、小学校・中等学校の授業、単元、教室を追う3つの中核章を挙げており、差異化についての主張が実践の例と結びついている。
- 変化への段階的な道筋。 「think versus sink」のやり方は、教師にまず小さな変更から始め、次第に大きなものへ進むよう求めるため、実践を一度に作り直せない教師にも使いやすい。
- 試し読みしやすい。 序文と第1章は出版社のサイトで無料で読め、ASCD の学習ガイドが本書に付属しているので、教員の読書会にも向く。
短所
- 実践の手引きであり、エビデンスのレビューではない。 目次では差異化の基盤に1章が充てられているだけで、出版社が強調するのは本書の事例である。中等教育における差異化指導についての2019年の系統的レビュー(Smale-Jacobse ほか、Frontiers in Psychology)は、そこでは差異化の効果を示す証拠が乏しいと報告しており、読者は本書の事例を効果の証明ではなく例示として扱うべきである。
- 範囲のわりに短い。 198ページで、環境、カリキュラム、方略、運用、リーダーシップを扱っている。特定の教科、評価、特定の学習者集団について詳しく知りたい読者は、ほかの資料が必要になる。評価に充てられた章題はない。
- グループ分けに関する研究書ではない。 本書は、先行する学力による生徒のグループ分けの効果のような論争に決着をつけようとはしていない。その問いは、このコースの他の場所にある研究文献の領域である。
コースにおける位置づけ
授業実践の書籍リストの中で、The Differentiated Classroom は、一つの学級の多様な学習者にどう応えるかを扱う本である。Bill Rogers の Classroom Behaviour は落ち着いた一貫した秩序をつくるための実用的な手引き、Doug Lemov の Teach Like a Champion 3.0 は名前の付いた授業技術のハンドブックであり、どちらも教師が授業をどう運営するかに焦点を当てる。トムリンソンは、授業を異なる学習者に合わせてどう形づくるかに焦点を当てる。Jon Saphier らの The Skillful Teacher は、計画、教室の文化、発問、評価、生徒のニーズへの対応を扱う幅広い資料で、トムリンソンの関心と最も重なる。
エビデンスを求めるなら、Handbook of Classroom Management は編著の研究ハンドブックであり、Becky Francis らの Reassessing Ability Grouping は、先行する学力で生徒をグループ分けするかどうかという、差異化の中心的な選択の一つを扱う研究書である。まずトムリンソンで枠組みと事例を知り、そのあとでこれらの研究を読むとよい。
本書の使い方
本書は、小学校・中等学校の現職および教員志望者、学校のリーダー、そして職能開発の学習グループを運営する人に向く。実際に経験したか観察したかした教室の経験があれば、それ以外の前提条件は要らない。
実用的な計画は次のとおり。
- 中核: 考え方とその根拠のために第1章と第2章、続いて試せる方略のために第6章と第7章。
- 方略の背景: 環境とカリキュラムを扱う第3章と第4章、教師の仕事ぶりの記述として第5章。
- 実施のために: すべてを機能させる方法を扱う第8章と計画ツールの付録。学校のリーダーは第9章を加える。
- 実践では: 「think versus sink」の助言に従い、小さな変更を一つ選んで一つの単元で試し、結果を振り返ってから次に進む。ASCD の学習ガイドを同僚と使い、エビデンスが必要なときは、本書を学力別グループ分けの研究書や学級経営のハンドブックなどの研究資料と組み合わせる。
