01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Schutz, P. A., & Muis, K. R. (Eds.). (2024). Handbook of Educational Psychology (4th ed.). Routledge.
章の要約
第4版は31章、約800ページの研究ハンドブックで、アメリカ心理学会の第15部会が後援し、教育心理学と学習・動機づけ科学の多様な研究者が執筆している。構成は6つの節で、序論、哲学的・理論的・方法論的アプローチ、基礎的な領域、教授と学習、新興テクノロジー、そして結びの章である。出版社によれば、第3版に比べて、探究の世界観、批判的人種理論、認知神経科学、新興テクノロジーについての章が加わり、各章の著者は社会正義、状況に根ざした探究、進歩的な方法への関心を共有している。
第1章:『教育心理学ハンドブック』第4版への序論
編者による序論は第1節を単独で構成し、本書の枠組みと、以前の版からの変更点を示す。
第2–4章:哲学をお持ちですか?教育心理学における哲学の価値を掘り起こす;教育心理学における探究の世界観、研究アプローチ、混合研究法;教育心理学における人種を検討する:批判的人種理論の必要性
哲学的・理論的・方法論的アプローチを扱う第2節は、この分野にとっての哲学の価値に始まり、探究の世界観と混合研究法、そして批判的人種理論の必要性へと進む。
第5–8章:学習と教授に関する異文化間研究;教育心理学研究における状況論的アプローチをとる;教育心理学における複雑系のアプローチ、視点、モデル、方法の貢献;教育心理学と教育政策:交差点と新たな方向
第2節の残りは、異文化間研究、状況論的アプローチ、複雑系、そして教育心理学と政策の関係を扱う。
第9–13章:動機づけ;感情と感情調整;教育における情熱の役割;アイデンティティと学習:生徒と教師のアイデンティティ発達;信念の変化
「基礎的な領域の探究」と題する第3節は、動機づけ、感情、情熱、アイデンティティ、信念の変化で始まる。出版社はこれらの構成概念が実質的に更新されたと述べている。
第14–17章:自己調整;例外性;生徒の認知的・学業的発達における仲間の役割;認知神経科学と教育
基礎的な領域の残りの章は、自己調整、例外性(exceptionalities)、仲間の役割、認知神経科学の貢献を扱う。
第18–20章:教師教育における教育心理学研究の関連性;資産基盤型の教授法;集合的で交差的なケアによる教育:学習空間で有色人種女性のフェミニズムに目を向け、体現し、実践する
「教授と学習の探究」と題する第4節は、教師教育で始まり、資産基盤型の視点と交差性の視点に立つ教授法の2つの章が続く。
第21–24章:数学の教授と学習;社会科教育;理科の学習と教授;リテラシー
第4節の教科別の章は、数学、社会科、理科、リテラシーを扱う。
第25–30章:新しいリテラシー:データ・リテラシーへと対話を広げる;知的チュータリング・システム:コンピュータはいかにして人間の個別指導者に匹敵する学習成果を上げるか;テクノロジーが豊富な学習環境:個人学習とグループ学習を理解するための理論と方法論;サイバーいじめ;教育の場におけるゲーム;仮想現実と教育心理学
第5節は新興テクノロジーの探究を集めている。新しいリテラシーとデータ・リテラシー、知的チュータリング・システム、テクノロジーが豊富な学習環境、サイバーいじめ、ゲーム、仮想現実である。
第31章:教育心理学の偏見に満ちた過去と進歩的な未来
結びの章(第6節)は、この分野の歴史を振り返り、これからの方向を展望する。
主要概念
第1–8章:探究へのアプローチ
- 探究の世界観と混合研究法:研究の背後にある哲学的立場と方法の組み合わせ。第3章。
- 批判的人種理論:教育心理学が人種を検討するために必要だと第4章が主張する枠組み。
- 状況論的アプローチと複雑系アプローチ:学習を文脈の中で、また相互作用するシステムの一部として研究する視点(第6・7章)。
第9–17章:基礎的な領域
- 動機づけ、感情、情熱:この分野の中心的な構成概念。第9〜11章。
- アイデンティティと信念の変化:生徒や教師がどのようにアイデンティティを形成し、信念を改めるか。第12・13章。
- 自己調整:学習者が自分の学習を管理すること(第14章)。
第18–31章:教授、テクノロジー、分野の未来
- 資産基盤型の教授法:学習者がもっているものの上に築く教育(第19章)。
- 知的チュータリング・システム:章題によれば、人間の個別指導者に匹敵する学習成果を上げるコンピュータの指導者(第26章)。
- データ・リテラシー:新しいリテラシーの議論の拡張(第25章)。
批判的分析
長所
- 一冊での幅広さ。 31章が、哲学と方法、動機づけとアイデンティティ、教科学習とテクノロジーにわたっており、この分野の地図として使える。
- 意図的な更新。 出版社は第3版以降の追加として、探究の世界観、批判的人種理論、認知神経科学、新興テクノロジーを挙げている。目次にはサイバーいじめ、ゲーム、仮想現実の章もある。
- 分野そのものへの省察。 最初と最後の節は、哲学、方法、政策、そして偏見も含めた学問の歴史を検討しており、本書は研究成果の要約にとどまらない。
- 評価の高い推薦。 出版社は、初版の共同編者 David Berliner の言葉を引用している。彼は更新された総説と社会問題への正面からの取り組みを称賛している。また Gale Sinatra の言葉も引用され、彼女は授業内容と研究に役立つ資料であり、この分野のより包摂的で進歩的な見方を示していると述べている。
短所
- 入門ではなく参考書。 出版社は研究者、教師教育者、政策立案者、大学院の授業を対象としており、初学者は緩やかな導入がないまま専門用語に出会う。
- 分量。 約800ページ、異なる著者による31章であるため、各章の質と深さは互いに独立しており、全体を通読する読者は少ないだろう。
- 教科の取り上げ方が選択的。 教科の章は数学、社会科、理科、リテラシーに限られ、芸術など他の領域の学習は別立てでは扱われない。
コースにおける位置づけ
教育心理学のコースの中で、本書は研究ハンドブックであり、少なくとも一冊の一般的な書物を読んだあとに読むものである。Ormrod、Anderman、Anderman の Educational Psychology: Developing Learners は、発達、認知、動機づけ、文脈を扱う教師向けの入門である。Schunk の Learning Theories は、学習についての主要な説明を比較する。動機づけ、自己調整、状況論的アプローチを扱う本ハンドブックの章に進む前の最初の一歩として、この二冊のほうがよい。
How People Learn と How People Learn II は学習の科学についての合意報告書であり、Willingham の Why Don't Students Like School? と Dweck の Mindset は、認知科学と能力観についての短い一般書である。ピアジェの The Child's Conception of the World は発達心理学の一次文献である。あるテーマを現在の研究文献までたどりたいときに進むのが、本ハンドブックである。
本書の使い方
本書は、教育心理学と学習・動機づけ科学の研究者、教師教育者、現職教師、政策立案者を対象としており、出版社は、教育心理学と研究方法の大学院の授業にも適すると紹介している。実際の前提は、教育心理学の入門的な授業を受けていることである。
読み進め方の例:第1章と第31章でこの分野の枠組みをつかみ、そのうえで節の題名を手がかりに選ぶ。研究方法の授業には第2〜8章が最も関連する。あるテーマ領域の理論なら第9〜17章、教室や教科の問題なら第18〜24章、テクノロジーなら第25〜30章である。各章は総説論文として読み、引用されている元の研究とあわせて読むとよい。
