01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Marshall, S. (Ed.). (2020). A Handbook for Teaching and Learning in Higher Education: Enhancing Academic Practice (5th ed.). Routledge.
章の要約
第5版は3部26章からなる編著で、Patrick Deaneによる序文、利用の手引き、用語集、索引が付く。出版社は404ページと記している。章の執筆者は40名近くにのぼり、事例研究の一覧も別に収められている。出版社は本書を、新任の講師、大学教育の認定課程を受講する人、教育実践を改善したい経験豊富な講師に向けた、高等教育における教授と学習の基本の手引きと説明している。
第1部 第1〜3章:Global perspectives on teaching and learning in HE(高等教育の教授と学習の世界的視点);National approaches to teaching and learning in HE(高等教育の教授と学習への各国の取り組み);Success as a university lecturer(大学講師としての成功)
編者による3つの章が文脈を設定する。最初の2章は、高等教育の教授と学習を世界的な視点と国ごとの視点から見る。3章目は、講師として成功するとはどういうことかに進む。
第2部 第4〜6章:Lectures, seminars and academic advising(講義、セミナー、学業指導);Assessment: new developments in design, marking and feedback(評価:設計、採点、フィードバックの新展開);Assessment: understanding the basics(評価:基本を理解する)
第2部は、基本的な指導の形態(講義、セミナー、学業指導)から始まり、評価に2章を充てる。1章は設計・採点・フィードバックの新しい展開、もう1章は基本である。評価に不慣れな読者は、後者を先に読んでもよい。
第2部 第7〜9章:Student-staff partnerships in teaching and learning(教授と学習における学生と教職員のパートナーシップ);Blended learning(ブレンド型学習);The inclusive curriculum(インクルーシブなカリキュラム)
これらの章は、学生をパートナーとして迎えること、ブレンド型学習、インクルーシブなカリキュラムを扱う。最後は、出版社が今回の版の新章として挙げる3つの主題の一つである。出版社はまた、この版がデジタル学習環境と技術変化の影響を論じていると述べている。
第2部 第10〜14章:Embedding skills development into the curriculum(カリキュラムへの技能開発の組み込み);Supervising undergraduate dissertations(学部生の卒業論文指導);Maximising student learning gain(学生の学習成果の伸びを最大にする);Student well-being(学生のウェルビーイング);The Scholarship of Teaching and Learning (SoTL)(教授・学習の学術研究)
第2部の残りの章は、技能の組み込み、学部生の卒業論文指導、学習ゲイン、学生のウェルビーイング、教授・学習の学術研究を扱う。ウェルビーイングとSoTLは、出版社が新章として挙げる残りの2つである。出版社は、この版が、学生を各自の専門分野に引き込み、就職力のための技能を組み込む方法も探ると述べている。
第3部 第15〜20章:The experimental sciences(実験科学);Learning and teaching in chemistry(化学の学習と教授);Mathematics and statistics(数学と統計学);The new engineering(新しい工学);The performing arts: dance, drama and music(舞台芸術:舞踊、演劇、音楽);Best practice and innovations in economics education(経済学教育の最良の実践と革新)
第3部は、専門分野ごとの教授に移る。これらの章は、実験科学、化学、数学・統計学、工学、舞台芸術、経済学を扱う。
第3部 第21〜26章:Psychology(心理学);Teaching business, management and accountancy(経営・管理・会計の教授);Law(法学);Quantitative methods in the social sciences(社会科学の量的方法);History(歴史学);Health and social care professions(保健・社会福祉の専門職)
残りの専門分野の章は、心理学、経営・会計、法学、社会科学の量的方法、歴史学、保健・社会福祉の専門職を扱う。
主要概念
第1部:高等教育の教授と学習の現在
- 世界的・各国の文脈:章題が示すように、制度ごとに政策や実践が異なること。
- 大学講師としての成功:講師の役割そのものが本書の主題の一つであること。
第2部:教育、評価、学生支援
- 評価の設計、採点、フィードバック:新しい展開と基本の二つの水準で扱われる。
- 学生と教職員のパートナーシップ:学生を教授・学習のパートナーとすること。
- インクルーシブなカリキュラム:すべての学生が参加できるようにカリキュラムを設計すること。この版の新章。
- 学習ゲイン、技能、就職力:学習ゲインと技能の組み込みの章の主題で、出版社は就職力と結びつけている。
- 教授・学習の学術研究(SoTL):自分の教育を探究の対象とすること。
第3部:専門分野での教授と学習
- 専門分野ごとの教授:各章が一つの分野を取り上げる。実験科学や舞台芸術から、法学、保健・社会福祉の専門職までである。
批判的分析
長所
- モジュール式の構成。 3つの部が文脈、一般的な実践、専門分野の教授を分けており、各章は短い(約9〜18ページ)ため、全体を通読せずに一章だけ使える。
- 幅広い執筆者と専門分野への目配り。 出版社は、多数の専門家の執筆者と世界各地の事例研究を挙げている。第3部には12の専門分野の章があり、自分の分野の章を見つけやすい。出版社が引く香港大学のGrahame Bilbowの評は、新任者にとって確かな基礎であり、経験を積んだ教員にも示唆があるとしている。
- 更新された主題。 第5版は、インクルーシブなカリキュラム、学生のウェルビーイング、教授・学習の学術研究の章を加え、デジタル学習環境と技術変化を論じている。
- 評価に2章。 評価を新展開と基本に分けることで、背景の異なる読者がそれぞれの水準から入れる。
短所
- 概観の深さ。 約9〜18ページの章では、評価、ブレンド型学習、インクルージョンといった主題の紹介にとどまる。研究水準の扱いを求める読者は専門的な文献が必要である。
- 専門分野の選択的な扱い。 12の専門分野の章は特定の分野に限られる。挙げられていない分野(たとえば目次に言語学や文学の章はない)の講師は、一般的な章を読み替える必要がある。
- 多数の執筆者による不揃い。 章の執筆者は40名近くにのぼるため、文体や研究への依拠の度合いは章ごとに異なる。これはハンドブックに通有の特徴であり、目次からもうかがえる。
- 学生ではなく教員向け。 想定読者は講師と認定課程の受講者であり、高等教育での学び方の入門としては使えない。
コースにおける位置づけ
高等教育の読書リストの中で、本書は大学教員になるための広く実践的なハンドブックである。Lovettらの『How Learning Works』は学習研究を8つの原理と方略に整理し、Langの『Small Teaching』は学習研究に基づく小さな授業改善を示す。どちらも、第2部の補助としてより狭く、より研究寄りである。Biggs、Tang、Kennedyの『Teaching for Quality Learning at University』は、構成的整合性を軸に科目設計の全体的な方法を築いており、一貫した枠組みを求める読者に向く。Bainの『What the Best College Teachers Do』は、すぐれた教員の研究である。
Bastedo、Altbach、Gumportの『American Higher Education in the Twenty-First Century』は種類が異なり、教育実践ではなく、統治、財政、政治を含む研究分野としての高等教育を扱う。Marshallのハンドブックは、新任の講師が教授、評価、学生支援、専門分野にわたって何を知る必要があるかを知りたいときに最初に読む本であり、特定の分野の章を読むために戻ってくる本でもある。
本書の使い方
本書は、新任の講師、高等教育の教授・学習の認定課程を受ける人、教育を改善したい経験豊富な教員のために書かれている。正式な前提条件はないが、大学や専門学校で教えている、または教える準備をしている読者を想定している。
読み方の例:利用の手引きを読み、次に第1部の3章で文脈をつかむ。第2部では、今の仕事に最も関係する章(たとえば講義とセミナー、評価(新展開より先に基本)、インクルーシブなカリキュラム)から始め、卒業論文指導や学生のウェルビーイングなど、必要が生じた章は参照用に使う。第3部では、まず自分の分野の章を読み、次に比較のために近い分野の章を読む。他大学の例を探すには事例研究の一覧を使い、自分の教育について論文を書く予定があればSoTLの章を読むとよい。
