01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Null, W. (2023). Curriculum: From Theory to Practice (3rd ed.). Rowman & Littlefield.
章の要約
第3版は約390ページである。三つの版それぞれの序文とまえがきに続いて、カリキュラムとは何か、なぜ重要かを問う序章が置かれる。第I部「カリキュラムの伝統」は、本書の枠組みを組み立てる章で始まり、続いて五つの伝統にそれぞれ一章ずつを充てる。第II部「カリキュラムの実践」は長めの事例と締めくくりの議論に移り、付録には七つの短いカリキュラム上のジレンマが収められている。各章の終わりには討論のための問いがある。出版社は本書を、カリキュラム理論と教室での実践との関係を扱う入門書であり、体系的、実存的、ラディカル、プラグマティック、熟議的という五つの伝統を軸に構成されていると紹介している。この版では人物が追加され、民主社会の変化とインクルージョンも扱われている。
序章:What Is Curriculum and Why Does It Matter?(カリキュラムとは何か、なぜ重要なのか)
序章はカリキュラムを教育一般から区別し、カリキュラムの基本的な問いを示し、「解放するカリキュラム」とは何かを問う。本書の主張を述べ、構成の概観を示す。
第1章:Liberal Education (and Curriculum) for All(すべての人のためのリベラル・エデュケーション(とカリキュラム))
枠組みを作る章である。リベラルなカリキュラムを、その起源からキリスト教の時代とリベラル・アーツの理想を経て、民主主義の興隆とジョン・デューイの民主的教育までたどり、次にジョセフ・シュワブがカリキュラム研究に突きつけた挑戦を紹介する。シュワブから五つの「コモンプレイス」(教師、学習者、教科内容、文脈、カリキュラム編成)を取り入れ、さらに五つの伝統を位置づける二軸の地図を加える。
第2〜6章:Systematic, Existentialist, Radical, Pragmatic and Deliberative Curriculum(体系的、実存主義的、ラディカル、プラグマティック、熟議的カリキュラム)
五つの伝統の章は共通の型を持つ。いずれも現代の人物や政策から始まり、歴史的背景を示し、五つのコモンプレイスを通してその伝統を読み解き、最後に長所と短所を述べる。
- 第2章 体系的カリキュラム:落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind)、システムとしてのスタンダード、コモン・コア州スタンダードを扱い、その源流をフランクリン・ボビットとW・W・チャーターズに求め、自由市場とカリキュラムに関する節を含む。
- 第3章 実存主義的カリキュラム:個人の選択を重んじるアルフィー・コーン、マキシン・グリーン、エリオット・アイズナーの芸術的な実存主義、ウィリアム・パイナーの再概念化を取り上げ、背景としてG・スタンレー・ホールの発達的カリキュラムとウィリアム・ハード・キルパトリックのプロジェクト法を扱う。
- 第4章 ラディカルなカリキュラム:マイケル・アップル、パウロ・フレイレの『被抑圧者の教育学』、ラディカルなキリスト教的カリキュラム、グロリア・ラドソン=ビリングズの The Dreamkeepers を扱い、その根をジョージ・カウンツとハロルド・ラグに見る。
- 第5章 プラグマティックなカリキュラム:テッド・サイザーの学校改革(ホレス・スミスの「妥協したカリキュラム」を含む)とハリー・K・ウォンを取り上げ、三つの時期にわたるデューイの思想と、カリキュラム熟議の源流の一つとされるラルフ・タイラーを扱う。
- 第6章 熟議的カリキュラム:ウィリアム・A・リード、イアン・ウェストベリー(ビルドゥングとディダクティクを含む)、教師を中心に据えたシェリル・J・クレイグの熟議を扱い、背景としてシュワブと、修辞学および理論と実践の関係について論じた哲学者リチャード・マッキーオンを取り上げる。
第7章:What Should We Do with State Curriculum Standards?(州のカリキュラム・スタンダードをどう扱うべきか)
実践編の最初の章では、州のスタンダードに向き合う三人のアメリカの教育者、すなわち高校の米国史教師、社会科の主任、小学5年生の担任を追う。それぞれの問題の後に、どう解決しうるかの議論が続く。
第8章:How Can We Reestablish a Core Curriculum at Our University?(大学でコア・カリキュラムをどう再建するか)
高等教育の二つの事例である。一つは、教員の支持の弱さ、教育と研究のバランスの欠如、限られた資源に直面する副学長の事例、もう一つは、多様性への懸念、「レリバンスのある」カリキュラムを求める主張、宗教を増やすことへの批判に直面する学長の事例である。
第9章:What Should We Do to Create a Better Teacher Ed Curriculum?(より良い教員養成カリキュラムを作るには何をすべきか)
二つの機関における教員養成の事例を、学部長、学長、副学長、助教の視点から描き、それぞれに解決案を示す。
第10章:Curriculum with Virtue: A Future for Deliberative Curriculum(徳を伴うカリキュラム――熟議的カリキュラムの未来)
締めくくりの議論は熟議の古代の源流に立ち返り、徳と信仰をカリキュラムに関係づけ、すべての人のためのリベラルなカリキュラムというコメニウスの構想で終わる。
付録A:Curriculum Dilemmas(カリキュラムのジレンマ)
討論のための七つの短いジレンマである。インテリジェント・デザインと進化論のどちらを教えるか、フォニックスを必ず教えなければならないか、スター選手のランニングバックを特別扱いするか、アメリカ手話を外国語として認めるべきか、などが含まれる。
主要概念
序章と第1章
- カリキュラムと教育の区別:本書はカリキュラムを、何を、誰に、なぜ教えるかという、より限定された問いとして扱う。
- 解放するカリキュラム/すべての人のためのリベラル・エデュケーション:幅広いリベラルなカリキュラムを、民主社会のすべての学習者に広げるという理想。
- シュワブの五つのコモンプレイス:教師、学習者、教科内容、文脈、カリキュラム編成。すべての伝統の分析に用いられる。
- カリキュラム・マップ:諸伝統を互いの関係の中に位置づける二つの軸。
第2〜6章
- 体系的伝統:スタンダードに基づく改革に見られるような、標準化されたシステムとしてのカリキュラム。
- 実存主義的伝統:個人の選択、経験、意味を中心とするカリキュラム。
- ラディカルな伝統:社会批判と社会変革の手段としてのカリキュラム。
- プラグマティックな伝統:デューイからタイラーまで、現実の学校で機能するように作られるカリキュラム。
- 熟議的伝統:関係者による慎重でローカルな熟議を通じて決められるカリキュラム。
第7〜10章と付録
- カリキュラム・スタンダード:州の要件と、それに教師や教科部会がどう応じるか。
- コア・カリキュラム:大学レベルで共有される必修のプログラム。
- カリキュラム編成における徳:熟議と人格とを結びつける、本書の締めくくりの論点。
批判的分析
長所
- 明快な枠組み。 名前のついた五つの伝統を、いずれも同じ五つのコモンプレイスで分析し、それぞれ長所と短所で締めくくるので、学生は立場を一貫したやり方で比較できる。出版社のページに寄せられた推薦文の何人か(たとえばクレイグ・クライデルやクリスティ・マコネル・モロイエ)は、混み合った分野をこのように整理した点を評価している。
- 歴史と現在の結びつき。 各伝統は最近の人物や政策から紹介され、その後20世紀初頭の源流へとたどられるので、読者はボビット、キルパトリック、カウンツ、タイラーを現在の論争の祖先として知ることになる。
- 事例とジレンマ。 第II部と付録は、スタンダード、コア・カリキュラム、教員養成、日々の学校での決定に枠組みを適用しており、全体を通して討論の問いが付いている。
- 扱う段階の幅。 事例は小学5年生から大学のコア・カリキュラムや教員養成にまで及ぶので、本書はカレッジや大学で働く読者にも役立つ。
短所
- 中立的な概説ではなく、主張を持つ本である。 本書は熟議的伝統を支持している。最終章の題は「熟議的カリキュラムの未来」であり、ピーター・フレボウィッチやウィリアム・シューバートといった推薦者も、ヌルがそれを最も有効なものとして擁護していると述べている。学生は各章の長所と短所の節を、この点を踏まえて読むべきである。
- アメリカの文脈。 落ちこぼれ防止法、コモン・コア、州のスタンダード、そして第II部の事例はすべてアメリカのものである。他の国の読者は、事例を自国の制度に置き換えて考える必要がある。
- リベラル・エデュケーションと信仰への特有の重点。 キリスト教の時代、ラディカルなキリスト教的カリキュラム、「信仰とカリキュラム」、コメニウスにそれぞれ節や章が充てられている。この重点を歓迎する読者もいるだろうが、より世俗的な概説を併せて読みたい読者もいるだろう。
- 取り上げる人物が限られる。 各伝統は数人の人物によって代表されるので、本書はどの学派についても全体像を示すものではなく、地図である。
コースにおける位置づけ
本書は、カリキュラムと教授のコースで最初に読む本としてふさわしい。A・V・ケリーの The Curriculum: Theory and Practice はリストにあるもう一冊の入門書で、内容、目標、プロセスのモデルとカリキュラムの政治を軸に組み立てられたイギリスの教科書である。できれば両方を読むとよい。アメリカの論争と伝統の枠組みについてはヌルを、イギリスの視点についてはケリーを読む。オーンスタインとハンキンスの Curriculum: Foundations, Principles, and Issues は、基礎、設計、実施、評価をより広く概観する本で、ヌルの後により充実した教科書を求める読者に向いている。
ヌルが要約する人物をさらに深く学べる本が二冊ある。フリンダースとソーントンの The Curriculum Studies Reader はボビット、デューイ、タイラー、アイズナー、フレイレ、グリーン、パイナーらの原典を収めており、第2〜6章と組み合わせるのに適している。パイナーの What Is Curriculum Theory? は、ヌルが実存主義的伝統の中に位置づける再概念化派の見方を展開している。実践面では、ウィギンズとマクタイの The Understanding by Design Guide to Creating High-Quality Units が単元設計のための実践的なガイドであり、ヌルの理論よりも第7章の教室の問題に近い。
本書の使い方
本書は、教育学を学ぶ学部生や修士課程の学生、現職教師、そしてカリキュラムに関わる決定を下す学校や大学の管理職に向いている。カリキュラムについての予備的な学習は必要ない。
- 中核: 序章と第1章。先に進む前に五つのコモンプレイスと地図を理解すること。後の章はすべてこれに依拠している。
- 伝統: 第2〜6章を順に読む。各伝統について、その人物、各コモンプレイスについての見方、長所と短所をまとめた一枚の表を作るとよい。表を比べることが第II部への最良の準備になる。
- 実践: 自分の立場に合った第II部の章を選ぶ。学校の教師なら第7章、高等教育や教員養成なら第8〜9章である。著者の議論を読む前に、まず自分で各事例の解決を考えてみること。
- 締めくくり: 第10章は著者自身の主張として読み、賛成するかどうかを自分で判断すること。
付録のジレンマはゼミでの討論に使い、それぞれの伝統ならどう応じるかを問うとよい。各伝統の章と並行して、コースのリーダーから一次資料を一つ読むこと。アメリカ以外の読者は、第7章の州スタンダードの代わりに自国のカリキュラム文書を使うとよい。
