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金融工学におけるモンテカルロ法 cover

経済学

経済学

金融工学におけるモンテカルロ法

Paul Glasserman

英語原題: Monte Carlo Methods in Financial Engineering

金融工学におけるモンテカルロ法の包括的な解説。デリバティブ価格評価、金利モデリング、リスク管理への応用を網羅。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
計算金融数値手法モンテカルロシミュレーション金融モデリング

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Glasserman, P. (2003). Monte Carlo Methods in Financial Engineering. Springer.

章の要約

本書は9つの章と3つの付録から成り、約600ページ、図は99点である。序文は全体を3つの部分に分けている。第1〜3章はシミュレーションの基礎とシミュレーション対象のモデル、第4〜6章はシミュレーションをより良く実行する方法、第7〜9章は金融に固有の話題を扱う。

第1章:Foundations

この章は二部構成である。前半「Principles of Monte Carlo」では、最初の例を通じてシミュレーションを導入し、シミュレーション推定量の効率をどう評価するかを述べる。後半「Principles of Derivatives Pricing」では、価格付けと複製、裁定とリスク中立価格付け、ニュメレールの変更、リスクの市場価格を扱う。両者を合わせて、価格付け問題がモンテカルロ法で扱える積分問題に変わる過程を示している。

第2章:Generating Random Numbers and Random Variables

あらゆるシミュレーションの基本的な道具を扱う章である。乱数生成(線形合同法とその実装、格子構造、組み合わせ生成器)、一般的なサンプリング法(逆変換法と棄却法)、そして正規確率変数・ベクトル(1変量および多変量正規分布の生成)が含まれる。

第3章:Generating Sample Paths

最初の3章で最も長い章(79〜184ページ)で、金融工学で使われるモデルとそれぞれのシミュレーション方法を順に扱う。ブラウン運動、幾何ブラウン運動(経路依存オプションを含む)、ガウス型短期金利モデル、平方根拡散、ジャンプ過程、そして2種類のフォワードレートモデル、すなわち連続レートのHJM枠組みと単純レートのLIBOR市場モデルである。序文によれば、この章と第1章には、単にシミュレーションを走らせるのに必要な以上の金融的背景が含まれている。モデルの細部にこそ多くのシミュレーション上の問題が生じるからである。

第4章:Variance Reduction Techniques

コントロール変量、対称変量、層別抽出、ラテン超方格サンプリング、原資産のマッチング(モーメントマッチングと重み付きモンテカルロ)、重点サンプリングを、それぞれ金融の例とともに扱い、最後に総括の節で各手法を比較している。

第5章:Quasi-Monte Carlo

一般原理(離散度、ファン・デル・コルプート列、コクスマ=フラフカの限界、ネットと列)から始め、具体的な低食い違い量列(HaltonとHammersley、Faure、Sobol')、格子則、ランダム化QMCを扱い、最後に金融の場面での使い方を数値例と戦略的な実装とともに述べる。

第6章:Discretization Methods

連続時間モデルのシミュレーションとは、その離散時間近似をシミュレーションすることである。この章はオイラー法と収束の次数から始め、2次の方法(スカラーとベクトルの場合、経路依存性、外挿)、一般展開・ジャンプ拡散・平均二乗誤差への拡張、極値と障壁通過のためのブラウン補間、変数変換へと進む。

第7章:Estimating Sensitivities

価格の感応度(「グリークス」)の推定法を3つ比較する。有限差分近似(バイアス、分散、最適な平均二乗誤差)、パスワイズ微分推定量(不偏性の条件を含む)、そしてガンマも扱う尤度比法である。

第8章:Pricing American Options

アメリカン・オプションの価格付けでは、シミュレーションの内部で最適停止問題を解く必要がある。問題の定式化の後、パラメトリック近似、ランダムツリー法(高推定量と低推定量)、状態空間の分割、確率的メッシュ法、回帰に基づく方法と重み、そして双対性を扱う。

第9章:Applications in Risk Management

最終章は価格付けからリスク測定へ移る。損失確率とバリュー・アット・リスク、デルタ・ガンマ近似を用いた分散削減、裾の重い設定、信用リスク(デフォルト時刻と評価、依存するデフォルト、ポートフォリオの信用リスク)を扱う。序文は、この章のモデルと方法が価格付けの各章とは異なると断っている。

付録

付録Aは収束の概念、中心極限定理、信頼区間を扱う。付録Bは確率解析の結果(伊藤の公式、確率微分方程式、マルチンゲール、測度変換)を述べる。付録Cは期間構造の用語と金利デリバティブを説明する。

主要概念

第1〜3章:基礎、乱数、サンプルパス

  • シミュレーション推定量の効率:第1章が導入する、あるシミュレーション推定量を別のものと比較するための基準。
  • リスク中立価格付けとニュメレールの変更:デリバティブの価値を、シミュレーションで推定すべき期待値に変える価格付けの原理。
  • 逆変換法と棄却法:非一様分布からサンプリングするための2つの一般的方法。
  • モデルのシミュレーション:ブラウン運動、短期金利モデルと平方根モデル、ジャンプ過程、HJMモデルとLIBOR市場モデル。それぞれに経路生成の方法が対応する。

第4〜6章:より良く行う

  • 分散削減:コントロール変量、対称変量、層別化、ラテン超方格サンプリング、モーメントマッチング、重点サンプリング。
  • 低食い違い量列:Halton、Faure、Sobol'列などの決定論的な点集合。ランダム化QMCは誤差推定を取り戻す手段である。
  • 離散化誤差:離散時間近似をシミュレーションすることで生じるバイアス。スキームの収束の次数(オイラー法と2次の方法)で決まる。

第7〜9章:金融に固有の話題

  • パスワイズ推定量と尤度比推定量:有限差分と対比される2つの微分推定法。
  • 高推定量と低推定量:アメリカン・オプションの価値に対する上下の評価で、第8章末の双対性の議論と結びつく。
  • バリュー・アット・リスクとデルタ・ガンマ近似:リスク指標と、そのシミュレーションを速めるために用いる二次のポートフォリオ近似。
  • ポートフォリオの信用リスク:デフォルト時刻と依存するデフォルト。

批判的分析

長所

  • シミュレーションと金融が互いを説明する。 序文は本書を、金融を通して見たモンテカルロ法の本であると同時に、シミュレーションを通して見た金融工学の本として位置づけている。期間構造モデルや価格付けモデルは、実装することで理解が深まる。
  • 一冊で分野を広くカバーする。 目次は乱数生成から、分散削減、準モンテカルロ、離散化、グリークス、アメリカン・オプション、リスク管理にまで及ぶ。Mathematical Reviews(Benjamin Jourdain)、Zentralblatt MATH(Radu Theodorescu)、Journal of the Operational Research Society(A. Zhigljavsky)の書評は、本書を包括的で、この分野の主要な参考書になりうると評している。
  • 厳密さについて率直である。 序文は、可積分性や解の存在といった技術的条件はしばしば省略され、手法の適用範囲を理解するうえで必要な場合にだけ明示されると述べている。付録Bは、主要な確率解析の道具の正確な主張を、必要な読者のために与えている。
  • 章内の構成が一定している。 多くの章が手法に例を添え、総括で終わるため、手法を比較して選ぶ助けになる。

短所

  • 前提知識は実質的である。 序文は最も重要な前提として、伊藤解析、確率微分方程式、マルチンゲールへの習熟を挙げ、使われる最も高度な考え方として測度変換とギルサノフの定理を挙げている。付録Bはこれらの道具の復習であり、学習の代わりにはならない。
  • 技術的条件の扱いは非形式的である。 収束や不偏性の定理レベルの証明が必要な読者は、引用文献に当たる必要がある。本書は実装を目的としている。
  • 一部は古くなっている。 2003年のテキストであり、扱う話題のその後の研究を含まない。現在の実務を知りたい読者は、より新しい文献で補う必要がある。
  • 最終章は他と異質である。 序文によれば第9章のモデルと方法は先行する価格付けの章とは異なり、リスク管理の完全な扱いというより部分的な入門である。

コースにおける位置づけ

このコースの他の書籍のうち、Hullの Options, Futures, and Other Derivatives とその短縮版 Fundamentals of Futures and Options Markets は、Glassermanがさほど多くを仮定しない市場と価格付けの背景を与える。デリバティブが初めての読者はここから始めるとよい。Björkの Arbitrage Theory in Continuous Time、Musiela–Rutkowskiの Martingale Methods in Financial Modelling、Bingham–Kieselの Risk-Neutral Valuation、Lamberton–Lapeyreの確率解析の本は、第1章と付録Bが要約するにとどまる価格理論を数学的に扱っており、連続時間の金融を学んでいない読者にとってはこのうちのどれかが自然な前提となる。

Glassermanは計算の側面を担う。Platen–Bruti-Libertiの Numerical Solution of Stochastic Differential Equations with Jumps in Finance は、ジャンプを伴うSDEの離散化スキームを扱うより数学的で長いモノグラフであり、収束次数と数値的安定性については第6章よりはるかに深い。Glassermanはより広く、より金融寄りの本である。RebonatoのLIBOR市場モデルの本やコースの債券関連書は、3.7節と付録Cの期間構造の内容の良い補完になる。

本書の使い方

序文のとおり、本書は金融工学の大学院生、シミュレーションを用いる研究者、モデルを実装する実務家に向いている。読者は確率解析とオプション価格付けの基礎を身につけ、アルゴリズムを実装できる程度のプログラミング経験を持って臨むのが望ましい。

最初の通読では、第1章と第2章、第3章のブラウン運動と幾何ブラウン運動の節を読み、続いて第4章の分散削減に進むとよい。これは動くようになったシミュレーションを改善する最も直接的な方法である。3.3節から3.7節の金利モデルは、コースがそこに進んでから読めばよい。第6章の離散化は、厳密に解けるモデル以外をシミュレーションするときに必要になる。第7章と第8章(グリークスと早期行使)はデリバティブ価格付けの実務の中核である。第5章の準モンテカルロは、ランダムサンプリングに代わる決定論的手法を知りたい読者向けの発展的内容である。リスク管理に進む読者には第9章が適している。

読みながら実装するとよい。第3章の各モデルについてシミュレータを書き、次に分散削減を加え、付録Aの信頼区間の内容を使って標準誤差を比較する。記法のため、また非形式的な議論の背後にある正確な主張のために、付録AとBを手元に置いておくこと。