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Labor Economics(労働経済学) cover

経済学

経済学

Labor Economics(労働経済学)

Pierre Cahuc; Stéphane Carcillo; André Zylberberg

英語原題: Labor Economics

理論と実証的証拠を並べて示す、労働経済学の包括的な大学院教科書。カユック、カルシロ、ジルベルベールは労働供給と労働需要、賃金決定、人的資本、サーチ・マッチングによる失業、労働市場政策の評価を扱い、各トピックについて数理モデルと計量経済学的知見の整理の両方を示す。

前提知識: 中級ミクロ経済学、微積分、計量経済学の入門を前提とする。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
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01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Cahuc, P., Carcillo, S., & Zylberberg, A. (2014). Labor Economics (2nd ed.; W. McCuaig, trans.). MIT Press.

章の要約

第2版は大学院レベルの教科書兼参考書で、1,000ページを超える分量がある。序論に始まり、労働供給と需要、賃金決定、失業、政策を順にたどり、数学付録で終わる。出版社によれば、モデルはできるだけ単純に保たれ、それぞれが実証結果と結びつけられており、事例は多くの国から取られている。

序論(Introduction)

本書の範囲と、労働経済学が問う課題を示す。続く各部は、個人の意思決定から、市場と制度の働き、さらに失業と公共政策へと進む。

労働供給;労働需要(Labor Supply; Labor Demand)

最初の二つの部は市場の両側を扱う。個人や世帯が働くかどうか、どれだけ働くかをどう決めるか、企業が何人雇うかをどう決めるかである。後続の部が修正を加えていく基本モデルがここで示される。

競争均衡と補償賃金格差;教育と人的資本(Competitive Equilibrium and Compensating Wage Differentials; Education and Human Capital)

これらの部は、まず両側を競争市場の中で結びつけ、賃金の差が仕事の特性の違いを補償しうることを示す。続いて、労働者間の賃金差の要因として、教育と人的資本の蓄積を扱う。

不完全競争の労働市場;職探し(Imperfect Competitive Labor Markets; Job Search)

ここから本書は完全競争の仮定を緩める。「不完全競争の労働市場」という見出しのもとで議論を進め、後の部がマッチングと失業の分析に用いる枠組みである職探しを取り上げる。

契約・リスク分担・インセンティブ;団体交渉と労働組合;差別(Contracts, Risk-Sharing and Incentive; Collective Bargaining and Labor Unions; Discrimination)

市場が単純な競争でない場合に、雇用関係がどう組織され、賃金がどう決まるかを扱う三つの主題である。リスクを分担しインセンティブを与える雇用契約、組合と団体交渉による賃金決定、労働市場における差別である。出版社は、差別をこの版で新たに章が立てられた主題の一つに挙げている。

雇用創出・雇用喪失と失業;均衡失業(Job Creation, Job Destruction and Unemployment; Equilibrium Unemployment)

本書の失業の扱いの中核である。雇用がどのように生まれ消えるか、失業が均衡でどう決まるかを論じる。この組は職探しの内容の上に直接築かれている。

技術進歩・失業・不平等;グローバル化・雇用・不平等(Technological Progress, Unemployment and Inequality; Globalization, Employment and Inequality)

雇用と所得分配に作用する大きな力、すなわち技術変化とグローバル化を扱う二つの部である。出版社は、グローバル化をこの版で新たに章が立てられた主題の一つに挙げている。

公共政策;所得再分配;保険政策;積極的労働市場政策(Public Policies; Income Redistribution; Insurance Policies; Active Labor Market Policies)

最後のまとまりは政策に向かう。「公共政策」の見出しのもとで、所得再分配、保険政策、積極的労働市場政策を扱う。出版社は、この版が公共政策と政策担当者の手段により多くの紙幅を割いていると説明している。

数学付録(Mathematical Appendices)

出版社は、この数学的内容を本文のモデルを理解するための道具箱と述べている。

主要概念

供給・需要・賃金(労働供給から教育と人的資本まで)

  • 労働供給と労働需要:労働時間、参加、雇用に関する労働者と企業の意思決定。
  • 補償賃金格差:仕事の快適さや危険の違いを相殺する賃金差。
  • 人的資本:教育や訓練で身につき、労働者の生産性と所得を高める技能。

不完全な市場と制度(不完全競争の労働市場から差別まで)

  • 職探し:情報に費用がかかるとき、労働者と企業が互いを探す過程。
  • インセンティブ契約とリスク分担:努力を引き出し、使用者と労働者の間でリスクを配分するよう設計された雇用契約。
  • 団体交渉:個人ではなく、使用者と労働組合の間の交渉で賃金を決めること。
  • 差別:集団間で労働市場での扱いや結果が異なること。

失業・不平等・政策(雇用創出から積極的労働市場政策まで)

  • 雇用創出と雇用喪失:雇用と失業の変動の背後にある雇用のフロー。
  • 均衡失業:市場のマッチング過程の帰結として持続する失業。
  • 技術進歩とグローバル化:労働者の種類ごとの相対的需要を変え、不平等に影響する力。
  • 所得再分配・保険・積極的労働市場政策:最後の部が検討する政策手段。

批判的分析

長所

  • モデルと証拠の結びつき。 各主題は、まず単純な小さなモデルで示され、次いで実証的知見と関連づけられる。理論がどのようにデータに適用されるかを見たい読者に向く。出版社によれば、実証手法はこの分野の画期的な研究を通じて説明される。
  • 扱う範囲の広さ。 労働供給と人的資本から、交渉、差別、失業を経て、再分配と積極的労働市場政策まで及ぶため、一冊で大学院の労働経済学の授業の主な参考書になりうる。
  • 政策の比重が大きい第2版。 末尾の政策部分は全体の中でかなりの割合を占め、出版社も公共政策の扱いの拡充をこの版の特徴として挙げている。
  • 付属資料。 出版社によれば、引用された研究のデータとコード、労働市場の働きを示す表や図、スライドがウェブサイト labor-economics.org にあり、結果を再現したい読者の助けになる。
  • 国際的な事例。 米国だけでなく、多くの国の証拠が用いられている。

短所

  • 分量。 1,000ページを超えるため、一つの授業で通読することはできず、授業でも独学でも取捨選択が必要になる。
  • 大学院レベルの前提。 大学院生と研究者向けで、形式的なモデルを用い、数学付録を道具箱としている。これらの道具に不慣れな読者には、学部の教科書より骨が折れる。
  • 証拠の新しさ。 2014年の版であり、それ以降の研究や政策の動きは含まれない。

コースにおける位置づけ

このコースの書籍リストでは、最も高度な労働経済学の本である。Ehrenberg、Smith、Hallock の Modern Labor Economics は、需要と供給から労働市場を分析して政策課題に応用する学部向けの教科書で、最初に読む本として自然である。形式的なモデルと計量分析文献の幅広い整理が必要になったとき、Cahuc、Carcillo、Zylberberg に進む。

リストの他の本は、公共経済学の側から隣接分野に近づく。Gruber の Public Finance and Public Policy は政府の経済学を扱う学部向けの教科書、Stephen Smith の Taxation: A Very Short Introduction は政府がなぜ、どのように課税するかを簡潔に紹介する本、Piketty の The Economics of Inequality は不平等の測定と説明の短い入門書である。これらは Cahuc らの政策部分より先に読んでもよい。Levine と Rubinstein の企業家に関する論文は単独の実証研究で、この教科書が概観する種類の証拠を学術論文の形で示している。

本書の使い方

経済学の修士・博士課程の学生、すでに労働経済学や公共経済学を学んだ学部上級生、そしてモデルと実証研究の整理を一冊で得たい研究者や政策分析者に向く。準備として、中級ミクロ経済学、微積分、計量経済学入門が最低限必要である。

1学期の大学院専門科目での実践的な進め方:

  • 中核: 労働供給、労働需要、人的資本、職探し、そして雇用創出・雇用喪失と均衡失業の二つの部。数学付録は必要に応じて並行して参照する。
  • 関心に応じた二巡目: 補償賃金格差、契約とインセンティブ、団体交渉、差別。賃金決定と所得の不平等を調べるときに読む。
  • 政策コース: 技術進歩、グローバル化、政策の部分を、失業の各部の後に読む。政策評価に進む読者が優先すべき部分である。

独学では、ウェブサイトのデータとコードを使って、各部で引用されている実証研究を一つ再現し、各部を、その根拠となった学術論文の原典と併せて読むとよい。