01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Piketty, T. (2015). The Economics of Inequality (A. Goldhammer, Trans.). Belknap Press of Harvard University Press.
章の要約
短い入門書で、読者への注記、序論、4章が本文約120ページに収められ、参考文献、詳細目次、索引が続く(全体で約140ページ)。出版社はその成り立ちを説明している。ピケティはこの本を、経済的不平等の時間的変化を解釈するのに必要な概念と事実への入門としてフランス語で書き、本書はフランスで学生と一般読者のための定番の手引きとなって定期的に改訂されてきた。アーサー・ゴールドハマーによる2015年の翻訳が初の英語版である。ピケティの Capital in the Twenty-First Century よりずっと短い本である。
序論
4ページの導入(1〜4ページ)である。出版社の紹介によれば、本書は不平等がどう変化し、経済学者がそれをどう測定するかから始まる。序論は、続く4章のためにその課題を設定する。
第1章:不平等の測定とその推移
最初の章(5〜25ページ)は、経済学者が不平等をどう測るか、そして不平等が時間とともに、また国ごとにどう変化してきたかを説明する。Google Books が本書について挙げる用語には、十分位、高所得者と低所得者の比率(P90/P10)、クズネッツ曲線(不平等は発展とともにまず拡大し、その後縮小するという古典的な仮説)が含まれ、これらはこの章の題材に属する。
第2章:資本と労働の間の不平等
最も長い章(26〜65ページ)で、資本と労働の間の所得分配を扱う。利潤と賃金の取り分を何が決めるのか、資本の所有者と労働者の間の不平等はどのように生じるのか。出版社は、労働と資本の関係と資本市場の性質を本書の主要な考え方として挙げている。資本と労働の代替の弾力性や信用市場も、本書の用語として挙げられている。
第3章:労働所得の不平等
第3章(66〜99ページ)は賃金労働者の間の不平等に向かう。出版社は、教育と技術変化の影響、労働組合の役割をトピックとして挙げている。人的資本、最低賃金、需要独占(賃金を決める力を持つ雇用主)も本書の用語に含まれており、この章は労働経済学と政策の接点に位置する。
第4章:再分配の手段
最終章(100〜122ページ)は、不平等を減らすための道具を比較する。出版社は、さまざまな課税制度の効果と、効率性と公正さの間の見かけ上の緊張関係を挙げている。本書の用語には、財政上の帰着、財政移転、負の所得税、ベーシックインカム、そして「純粋な」再分配と「効率的な」再分配の区別が含まれる。出版社はまた、「歴史的時間」と「政治的時間」の区別を、本書が紹介する考え方の一つとして特に挙げている。
主要概念
序論・第1章:測定
- 不平等の測定:所得と富の分布を、たとえば十分位や高所得者と低所得者の比率で記述すること。
- クズネッツ曲線:不平等は経済が発展するにつれてまず拡大し、その後縮小するという仮説で、長期的な証拠を検討する際の基準となる。
第2章:資本と労働
- 資本と労働の分配:国民所得の利潤と賃金への分割。
- 資本市場:誰が資本を所有しその収益を得るかに対して、信用市場と資本市場が果たす役割。
- 資本と労働の代替:一方の要素が他方をどれだけ容易に置き換えられるかで、価格の変化に対して要素の取り分がどう反応するかに関わる。
第3章:労働所得
- 人的資本、教育、技術変化:技能とその価格の変化による賃金格差の説明。
- 労働市場の制度:労働組合と最低賃金、そして雇用主が賃金決定力を持つ市場でのそれらの効果。
第4章:再分配
- 財政による再分配:可処分所得の分布を変える税と移転、およびその帰着。
- 純粋な再分配と効率的な再分配:大まかに言えば、ある集団から別の集団への移転と、公平性と効率性をともに改善しうる介入との対比。
- 効率性と公正さ:両者の見かけ上の対立。本書はそれを前提とせず検討する。
批判的分析
長所
- コンパクトで概念的。 約120ページで測定、資本と労働の分配、賃金格差、再分配を扱い、出版社は本書を、不平等の変化を解釈するために必要な概念的・事実的背景への手引きと位置づけている。
- 資本と労働をつなぐ。 資本と労働の間の不平等と、労働所得内部の不平等に別々の章を充てることで、学生は両者を分けて分析でき、そのうえで第4章がそれぞれにどの手段が対応するかを問う。
- 政策を主張するだけでなく分析する。 最終章は再分配の手段を互いに比較し、再分配が効率性と衝突するのはどんなときか、しないのはどんなときかという問いも扱う。
- 実績のある教科書。 出版社によれば、本書はフランスで長く使われ、定期的に改訂されてきた。巻末の詳細目次と参考文献により、学習の手引きとして使いやすい。
短所
- 証拠が古い。 本書のデータはフランスと他の西側諸国の2000年ごろを中心としている(Google Books は「France in 2000」やフランスの統計機関INSEEを本書の用語に挙げている)。その後に蓄積された、ピケティ自身の後の著作を含む、最上位層の所得と富に関するより大きな証拠を反映していると期待すべきではない。
- フランス・ヨーロッパ的な枠組み。 事例や制度の多くはフランスのものなので、他国の読者は政策の議論を自国の税と給付の制度に置き換えて考える必要がある。
- 技法の説明は簡潔。 演習のある教科書ではなく短い概念的な本なので、分析の道具を身につけるには教科書が必要である。
コースにおける位置づけ
この公共経済学・労働経済学のコースの中で、ピケティの入門書は、両分野が共有する分配の問題への短い概念的な導入である。スティーブン・スミスの Taxation: A Very Short Introduction は自然な組み合わせである。スミスは税制がどう機能し、どんな費用がかかるかを説明し、ピケティは再分配で何が達成できるか、そもそもなぜ所得が不平等なのかを問う。両方を読めば、教科書に入る前のよい地図が得られる。
ジョナサン・グルーバーの Public Finance and Public Policy は、ピケティの第4章の税と移転の分析を理論と実証で発展させる。エーレンバーグ、スミス、ハロックの Modern Labor Economics は、ピケティの第3章のトピックである人的資本、労働組合、最低賃金を本格的な教科書の分量で扱う。カユック、カルシーヨ、ジルベルベルグの Labor Economics は大学院テキストであり、ずっと後で読むものである。
本書の使い方
経済学の予備知識は必要ないが、入門の授業を受けていると市場と賃金の議論が理解しやすい。
- 通して読む。 4章なので1週間で読める。まず短い読者への注記を読む。
- 中核となる章: 第2章と第3章が分析の中心である。第2章はマクロ経済学や公共財政の授業の労働分配率と資本に関する内容と並行して読み、第3章は労働経済学の教科書の人的資本や労働組合の章の前に読む。
- 政策の学習には第4章: 税と移転についてのレポートの準備に使い、スミスの帰着と経済的費用の章と組み合わせる。
- 数字を更新する。 データは方法の例示として扱い、レポートで使う前に最近の統計資料やピケティの後の著作で現在の数字を確認する。
各章を読み終えたら、巻末の詳細目次が復習用の見取り図として役立つ。
