01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Ehrenberg, R. G., Smith, R. S., & Hallock, K. F. (2025). Modern Labor Economics: Theory and Public Policy (15th ed.). Routledge.
章の要約
第15版(Routledge、著作権表示2025年)は約760ページである。16の章が約650ページを占め、その後に奇数番号の復習問題と練習問題の解答が続く。Routledgeは本書を、学部および大学院の1学期の労働経済学の授業のための教科書と説明しており、労働市場の行動に関する現代の理論を概観し、その理論が公共政策の分析にどう使われるかを、経済学の幅広い素養を持たない学生にも示すものだという。本書は労働市場のミクロ経済学の標準的な構成をとる。需要、次に供給、その結果として生じる賃金構造、そして制度と集計的な成果である。この版では全体を通じてデータと事例が更新され、買い手独占的な労働市場(反トラスト規制と判決を含む)、教育の経済学、男女間賃金格差、労働組合と失業の最近の動向の扱いが拡充され、在宅勤務と人工知能に関する新しい内容が加えられた。
第1〜2章:Introduction(序論);Overview of the Labor Market(労働市場の概観)
冒頭の章は、労働市場への経済学的アプローチを示す。出版社によれば、そこには基本的な方法論上の手法と問題への導入が含まれる。続いて、労働市場全体を概観する。
第3〜4章:The Demand for Labor(労働需要);Labor Demand Elasticities(労働需要の弾力性)
雇用主の側を扱う2章である。企業がどれだけの労働を雇うかをどう決めるか、そしてその需要が賃金やその他の要因にどれほど反応するかを扱う。
第5章:Frictions in the Labor Market(労働市場の摩擦)
現実の労働市場が摩擦のない競争市場のようには機能しない原因となる摩擦を扱う章で、労働需要の2章の直後、労働供給に移る前に置かれている。
第6〜7章:Supply of Labor to the Economy: The Decision to Work(経済への労働供給:働くかどうかの決定);Labor Supply: Household Production, the Family, and the Life Cycle(労働供給:家計生産、家族、ライフサイクル)
労働者の側である。働くかどうか、どれだけ働くかという個人の決定、続いて家計生産、家族の決定、ライフサイクルの各段階という文脈での労働供給を扱う。第6章は本書の中でも長い章の一つである。
第8章:Compensating Wage Differentials and Labor Markets(補償賃金格差と労働市場)
危険や不快な条件といった仕事の特性の違いが賃金にどう反映されるか、そしてそれが労働市場と政策に何を意味するかを扱う。
第9〜10章:Investments in Human Capital: Education and Training(人的資本への投資:教育と訓練);Worker Mobility: Migration, Immigration, and Turnover(労働者の移動:国内移動、移民、離職)
もっとも長い章の一つである第9章は、教育と訓練を投資として扱う。教育の経済学は、出版社がこの版で拡充したとする分野の一つである。第10章は同様の投資の枠組みを移動に適用する。国内の移住、国際的な移民、そして転職・離職である。
第11章:Pay and Productivity: Wage Determination Within the Firm(賃金と生産性:企業内の賃金決定)
内部労働市場、すなわち企業が生産性に影響を与えるために賃金をどのように設計するかを扱う。
第12〜13章:Gender, Race, and Ethnicity in the Labor Market(労働市場におけるジェンダー、人種、エスニシティ);Unions and the Labor Market(労働組合と労働市場)
もっとも長い章のうちの2章である。第12章は、ジェンダー、人種、エスニシティによる労働市場の成果の違いを検討し、この版で扱いが拡充された男女間賃金格差も含む。第13章は労働組合と団体交渉、その影響を扱い、最近の動向に合わせて更新されている。
第14〜16章:Unemployment(失業);Inequality in Earnings(所得の不平等);The Labor Market Effects of International Trade and Production Sharing(国際貿易と生産分業が労働市場に与える影響)
最後の章は集計的な成果に移る。失業、所得の分布、そして国際貿易と国際的な生産の分業が労働者に与える影響である。
主要概念
第1〜5章:労働市場と労働需要
- 労働市場:労働者が労働サービスを供給し、雇用主がそれを需要する市場で、本書の分析単位。
- 労働需要:各賃金水準で雇用主が雇いたいと考える労働の量。
- 労働需要の弾力性:賃金やその他の費用の変化に対する雇用の反応の大きさ。
- 労働市場の摩擦と買い手独占:雇用主に賃金に対するある程度の支配力を与える、完全競争からの乖離。
第6〜8章:労働供給と補償賃金格差
- 働くかどうかの決定:働くかどうか、どれだけ働くかという個人の選択。
- 家計生産とライフサイクル:家族の中で、また生涯を通じて行われる労働供給の決定。
- 補償賃金格差:仕事の特性の違いを相殺する賃金の違い。
第9〜11章:人的資本、移動、賃金
- 人的資本:将来の所得を高める投資とみなされる教育と訓練。
- 労働者の移動:機会の違いへの反応としての国内移動、移民、離職。
- 賃金と生産性:努力と産出に影響を与えるための企業内の賃金設計。
第12〜16章:格差、制度、集計的成果
- ジェンダー、人種、エスニシティによる労働市場の違い:男女間賃金格差と差別を含む。
- 労働組合:労働者の集団的な組織と、その賃金と雇用への影響。
- 失業:仕事を探しているが職のない労働者の状態、その種類と原因。
- 所得の不平等:所得のばらつきと、それを変化させる力。
- 貿易と生産分業:労働市場に影響を与えるものとしての国際貿易と国際的な生産の分業。
批判的分析
長所
- 理論と政策の結びつき。 副題が本書の目的を示している。出版社は、各概念が、労働市場に影響を与え、また労働市場から影響を受けてきた政策決定の事例と組み合わされていることを強調している。理論の社会的な意味を示すことが学生の学習意欲を高める、というのが著者の考えである。
- 専門外の学生にも取り組みやすい。 本書は経済学の幅広い素養を持たない学生のために明確に設計されており、経済学専攻だけでなく、労使関係、公共政策、経営の学生にも使える。
- 分野全体を網羅する。 16章は、労働需要と労働供給から、補償賃金格差、人的資本、移動、企業内の賃金、差別、労働組合、失業、不平等、貿易までを扱う。
- 最新の内容に保たれている。 第15版となった本書は、新しいデータと事例、買い手独占と反トラスト、教育、男女間賃金格差、労働組合、失業に関するより多くの内容、そして在宅勤務とAIに関する新しい内容で更新されている。奇数番号の問題の解答は独習を助ける。
短所
- 分量。 約760ページあり、1学期の授業を想定しているにもかかわらず、1学期ですべてを扱える量を超えている。教員は章を選ぶ必要がある。
- 形式的な大学院向けの教科書ではない。 経済学の幅広い素養を持たない学生にも取り組みやすい分、研究志向の大学院の授業が必要とする数理モデルや計量経済学的手法は展開されない。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースにおける労働経済学の主要な学部向け教科書である。Cahuc、Carcillo、Zylberbergの Labor Economics は、同じトピック(労働供給と労働需要、賃金決定、人的資本、サーチ・マッチングによる失業、政策評価)について形式的なモデルと計量経済学的な証拠を並べて示す包括的な大学院向け教科書であり、第3〜9章と第14章の形式的な版を求める学生にとって自然な次の一歩となる。Pikettyの The Economics of Inequality は、不平等の測定と分析、そして再分配についての短い入門書で、第15章の良い相棒となる。
コースの公共経済学の側では、Gruberの Public Finance and Public Policy が課税、社会保険、公共プログラムを扱い、本書の政策への応用を補う。Stephen Smithの Taxation: A Very Short Introduction は税の側面への短い入門である。LevineとRubinsteinの Smart and Illicit は、誰が起業家になり、起業家はより多く稼ぐのかを調べた研究で、アメリカの調査データを用いた実証的な労働研究の一例として、人的資本と所得の章の後に読むことができる。
本書の使い方
ミクロ経済学の入門レベルの授業を受けていれば準備としては十分である。本書は経済学の幅広い素養を持たない学生のために書かれている。
- 中核: 第1〜4章と第6〜7章。これらは後の章が依拠する需要と供給の枠組みを展開する。摩擦を扱う第5章もこれらと一緒に読むべきである。
- 賃金構造: 第8〜11章(補償賃金格差、人的資本、移動、企業内の賃金)。第9章は長いので2回に分けて読むとよい。
- 授業の重点に応じたトピック: 差別と賃金格差には第12章、労働組合には第13章、失業には第14章、不平等には第15章、貿易には第16章。政策志向の授業なら第12、14、15章、労使関係の授業なら第11章と第13章を選ぶこともできる。
- 練習: 章末の復習問題と練習問題を解き、奇数番号の解答を巻末で確認する。
政策の事例ごとに、中核の章のどのモデルが適用されているか、どの仮定が結論を左右しているかを見きわめるとよい。第2章と第14章を読みながら、ニュースで労働市場の統計(雇用、賃金、失業)を追うと、概念が具体的になる。
